第70話:誘拐犯は殲滅だ!
決着つきませんでした!
外で晶龍君の怒鳴り声がして、なんか戦闘が始まった気配があった。そこにゴソゴソと荷台に乗り込もうとする影があった。ちくしょう、ショウコインメツするつもりだな!
ぼくは覚悟を決めた。外には晶龍君もモンドさんも居るんだ。そう簡単にやられるはずは無い。それまでは歯を食いしばってでも粘ってやる。まあでもそれ以前に足動かないんだけど。
乗り込もうとして来た影は小柄でした。あれ? こんなやついたっけ?
『ラビ、待つのじゃ、あれは恐らく』
そうこうしていると体格のいい影が剣らしきものを振り下ろそうとしていた。次の瞬間、小さな黒い影が体当たりしていった。
『やはりの』
『篝火さん、知ってるの?』
『あれはクロじゃな。わっちの同僚よ』
どうやら篝火さんの待ち人も一緒にいる様子。なんだか嬉しそうである。
「今のうちに!」
そう言いながら入ってきたのは子どもと言っても差し支えなさそうな女の子だった。
「篝火!」
女の子はそう言うと駆け寄って篝火をぎゅっと抱き締めた。
『苦しい、苦しいわい、マリエ。すまなんだ。勝手に出かけてしもうて』
「もう、心配したんだから」
マリエはボロボロ涙を零してるし、篝火さんの目にも涙が見える。感動の再会なのは間違いないけど後にして欲しい。
『ちょっとちょっと篝火さん。この子達も脱出させないといけないんですよ』
『そうじゃったなあ。まったく手のかかる事よ』
「えっ? 篝火、その子はなんて?」
ぼくの喋ってる内容は分からないみたいだ。篝火さんの言う事はわかるのにね。まあぼくの言葉も今はグレンに通じないんだけどね。
『こやつはラビ。わっちらのところにおなごと一緒にさらわれて来よったぞ』
「ええー!? まあ赤いホーンラビットは珍しいもんね。見たことないわ。よろしくね」
呑気に自己紹介などしてる場合ではないと思うんだけど。
「たすけがきたの?」
「おうち、かえれるの?」
「おかーさーん」
「たすけてくれるの?」
「やだやだこわいこわい」
子どもたちが一斉に騒ぎ出した。さっきまでは諦めてたんだろう。でも、こうして荷台の中まで入り込んできた。ならば助かるかもしれない、ということが理解出来たのだろう。
「ガキども、静かにしやがれ!」
怒鳴り声で荷台に入ってきたのは二人組の男。いかにもチンピラって感じの奴らだ。
「ガウ!」
クロと呼ばれた犬が雷光の様なスピードでその内の一体に体当たりをした。一緒に荷台の外へ吹っ飛ぶ。
「チャーリー! ちくしょう!」
もう一人のモブトループらしき男が今度はこちらに殴りかかってきた。子どもたちは脅えてる。篝火さんは魔法が使えない。マリエさんは……ダメだ。目を瞑っている。
『とぉりゃあ!』
ぼくは頑張って頭の角で剣を弾いた。まさかこんなこと出来るなんて思わなかったけどなんか見えたんだよね。
「なんだと? このクソウサギが!」
モブトループが狼狽えながらも今度は手でつかみかかってくる。足枷がなければ避けられたのに。
ガシッと足を掴まれて逆さに吊るされた。剣は飛ばしたから直ぐに殺されるってことはないだろう。ぼくは時間を稼げばいい。
手に持ったままの状態でぼくを殴ろうとするモブトループ。だが、跳ねることは出来ずとも身をよじることくらいは出来るのさ!
「くらえ!」
『とぅ!』
パンチの来た方向とは別方向に身体をねじって見事にかわす。へへん、簡単にやられるかよ!
「この、くそ、当たれ!」
『へへん、どこ狙ってんだ、下手くそ!』
面白いほどに当たらない。まるでパンチがぼくを避けてるかのようだ。
「本気でやりゃあお前なんぞ!」
そう言ってぼくを地面に叩きつけようとする。あ、それはさすがにヤバいかも。
「はい、そこまでだよぉ。叩きつけるのが早いか君が真っ二つになるのが早いか試されるのですかなぁ?」
「ひっ!?」
いつの間にか荷台の中にモンドさんが入って来ていた。外はだいたい制圧したらしい。
「このまま街を出るのがいいよぉ」
「そうだな。よし、出してくれ」
「ショウ君、御者の経験は?」
「ある訳ねえだろ!」
街の外に出るのに馬車を動かしたいみたいだけど制御出来ないみたい。
「あの、私がやってみますから」
マリエさんが進み出た。そのまま外に出て馬に話しかけたらしく、静かに馬車は進んで行った。
『ラビ、なんでこんなとこにいるんだよ!』
『留守番してたら押し込まれてさらわれてさ。ほら、リンファちゃんもいるでしょ』
『確かにな。そんな強硬策まで取りやがったのか』
『パイリンさんは?』
『妹が心配だから戻るとは言ってたな。一旦旅籠に戻らねえとな』
どうやらパイリンさんの事を忘れてたらしい。でもまあ今戻ったら巻き込んじゃうかもだからある程度目処がついてからの方が良くない?




