第65話:旅籠の中で
ちょっとシーンに悩んだのでこれでいいかは書き上げた今でも悩みます。
さて、晶龍君が了承した(?)みたいなので早速捜査開始だ。探偵パートと法廷パートに分かれては無いので、証拠見つけたら即カチコミだと思う。
まずは聞きこみである。と言ってもホーンラビットのぼくは下手に聞き込みするとやたら目立つし、そもそも言葉が通じない。こりゃあ困った。
という訳でモンドさんと晶龍君で聞き込み。ぼくはお留守番だ。部屋の中から動かないようにって言われてはいるけど出かけようにも出かける理由もないしね。
ふと窓を見ると、窓の外から一匹の猫がこっちを見てる。なんだろう、なんかそんなに見つめられると照れるなあ。猫、と言えばノワールは元気だろうか。猫でもないのに猫のフリするのは上手かったんだよね。猫のフリが抜けなくて喋り方がにゃんにゃん語になってるのはなかなか笑える。
「見かけねー顔だにゃ」
「あ、どうも。ホーンラビットのラビです」
「この街の西地区を束ねてるクローヴァだ」
なんとかっこいい名前だ。付けた人はセンスがあるんだろう。ホーンラビットだからラビってのも悪くは無いと思うけどね。名前なんてグレンが付けてくれたんならなんでもいいんだよ。いやまあパンスト太郎とか付けられても困るけど。
「野良じゃにゃーみたいだから多めに見るけど勝手に彷徨くんじゃにゃーぞ」
「出歩く時は晶龍君と一緒だよ」
「そうか。この街はお前みたいなのは攫われる事が多いからな」
「え? それはどういう」
「人間どもの都合なんて知ったこっちゃにゃー。でもここ最近は外から来るペットが行方不明になっててにゃー」
外から来るペット? それは旅人が連れてるペットって事? というかぼくら以外にもペット連れてる人居るんだ。いや、ぼくはグレンのペットじゃないし、晶龍君は友達だからね!
「ペットと子供を売っぱらってるみたいでにゃ。胸糞悪いのにゃ」
あんまり役に立ちそうにない話だ。とこほで、さっきのチンピラ達は誰なのか知ってる?
「あー、あいつらは幇 (バン)だにゃ。紅幇とか言ってたにゃ。クスリ売ったり、誘拐やカツアゲしたりとやりたい放題なんだにゃ」
「じゃあそいつらがペットを?」
「うーん、そいつらとは別に動いてるみたいだにゃ。詳しくはよくわかんにゃい」
まあ気をつけろって事だね。わかったよ。でもぼくは街中に出たりしないから大丈夫だと思うんだよね。
「わかったよ。ありがとう。ぼくはこうしてのんびりしてるから平気だよ」
「まあなんか困ったことがあったら言ってくれ。ここの姉妹にゃ世話ににゃりっぱなしにゃんだよ」
ああ、なんで話しかけてきたとかと思ったらあの姉妹が心配だったのか。なるほどね。義理堅いことだわ。
部屋でのんびりしてたらリンファさんがご飯を持ってきてくれた。笑顔でぼくにミルクを飲ませようとしてくる。あの、ぼくはミルクとかは卒業したし、その、もうちょい食べ応えある方が……
ダメだ。この子に話通じないし、ずっとニコニコしてる。こうなったら飲むしかないな。うん。久しぶりに飲むけど美味しいね。これは牛乳ではなさそう。ヤギかな?
「あ、飲んだ飲んだ! こっちも食べるかな?」
そう言って差し出してきたのはクッキーの様なお菓子。この子のおやつだろうに。そんな貴重なものは食べられません。というかお返ししたいところだけど、晶龍君居ないんだよなあ。
でもまあせっかく地面に置いてくれたので食べないともったいないならぼくが食べるよ。人間は地面に落ちた食べ物は滅多に拾って食べたりしないらしいからね。
「ふふふ、いい子、いい子」
頭を撫でられた。本来ならグレン以外には撫でさせたりしないけど、この子の優しい気持ちに免じて撫でられるがままになっておこう。手つきも乱暴じゃないしね。
「おい、さっきのやつら居ねえぞ」
「そりゃあちょうどいい。家探しするぞ」
何やら階下が騒がしい。お客さんかなって思ったけど、どうやら違うようだ。
「だ、誰ですか?」
リンファさんが恐る恐る二階から声を掛けた。
「なるほど。二階にいやがるのか。こりゃあ都合がいい」
「姉の方は買い物に出かけてたからな。妹の方だろうぜ」
「なあ、あいつももう売っちまえばいいんじゃねえか?」
「そうだな。その方が手っ取り早いもんな」
何やら物騒な話をしていらっしゃる! リンファさんは……ガクガク震えてる。聞こえないわけないよね。自分を攫うって言ってるんだもの。そりゃあ怖いよ。
「へへへ、みぃつけた」
モブトループその四くらいが姿を現した。頭がハゲでなんか刺青みたいなのをしていてそれがかっこいいとでも思っているのかもしれない。でもハゲはハゲだし、刺青は髪の毛の代わりにはならないよ?
「さぁさぁ。おじさんと一緒に行きましょうね?」
「いやぁー!」
さすがにおじさんのその手つきは誰もついて行かないと思うよ。というか自分でおじさんって言っちゃうんだ。まだ若そうなのに。




