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第60話:砂漠の巫女姫(アシュリー視点)

巫女姫の能力は夢見と覗る(ステータスオープン)事です。

 草原を旅しながら羊や馬を育てている我々ワザリアの民にとって、砂漠というのは単なる不毛の地ではなく、魔物の蠢く危険地帯である。


 それゆえ、砂漠の向こうに街があるというのは知ってはいても我々には到達することは出来ない。死の砂漠がその行く手を阻むのだ。


 デススコーピオンくらいならなんとでもなるが、サンドワーム、スフィンクス、双頭の蛇アンフィスバエナ、そして幻を見せるという謎の龍。迷い込んだら出られないと言われる死の砂漠に我々は日々侵食されている。


 いつもの様に砂漠を警戒していると、とんでもない巨体がこちらに向かってくるのが見えた。距離はまだ二キロ以上先だがあの速度ではまもなく到達してくるだろうというのが物見の報告である。


 私はそんなに危険視していなかった。危険な兆候など何も見られなかったからだ。私は巫女姫。夢で未来を見る。過去を見る。運命を見る。遠くのものを見る。


 つい二、三日前にも砂漠の向こうの街の占星術師と会話をした。夢での逢瀬は短時間だったがしばしばこうして各地の術師と話をしている。


 話は街で起こった騒ぎ、盗賊団の壊滅について。ホーンラビットを抱えた少年が解決したという。私はその時は話半分に聞いていた。


 巨体の対処に行ったものたちが帰ってこない。何かあったのかもしれないと様子を見に行った。そこには周りから弓を番えられながらも大して動揺していない少年と、抱き抱えられた赤いホーンラビットが居た。


「まあ待ちなさい。見たところまだ小さな子供では無いですか」

「巫女姫! ですが、こやつらはあの砂漠を化け物に乗って来たのですぞ!」


 私の言葉にトゥグリルが反論する。まあこの子ったら私の言うことに逆らうつもり?


「世の中にはテイマーなどと言う魔物を使役するもの達がおります。この者もそうなのでは。それに」


 間違いない。この赤いホーンラビットは夢で見た通りの子だ。


「本当に可愛いわ、この子」


 思わず笑みが隠しきれない。きっとこの子たちにはテイマー以上の何かがあるのね。そう思った私はショウ君と呼ばれる少年を「」てみた。


 果たして、これは、驚愕の内容だ。この子が人間ではなく龍の一族、それも古龍の中でも最強と謳われたティアマト様の息子だなんて。こっちのホーンラビットは……ホーンラビットではない? 種族名に赤いもやがかかっていて読めない。


「あなた、お名前は?」

「ショウ、です」


 ホーンラビットの子に言ったつもりだったのに返事をされたのは晶龍様だった。そりゃあそうよね。こんなところでは全てを話すには足りないわよね。


「本当のお名前は後で教えてね」


 私はホーンラビット君にも聞こえるようにそう囁いた。二人ともびっくりしていたみたいだ。掴みはおっけーというやつだ。


「トゥグリル、この者たちを招き入れます」

「は? しかし巫女姫、こいつらは」

「私が安全を保証します。いつまでも弓を番えているのをやめなさい。私がそばにいるんですよ? 当たったらどうするのですか?」

「くっ」


 私が強く言えばトゥグリルは逆らえない。例えトゥグリルがこの部族の若手のリーダーであっても。


「私の名前は後で教えます。今は巫女姫と呼んでください」

「わかった、巫女姫。ありがとう」

「そちらの方が素敵ですわよ」


 多少は緊張が解けてきたかしら。私としては対話による融和を試みたいところ。出来れば友好もね。だって古龍なんてどうしようもないわ。砂漠の化け物以上でしょ。私はユルトの中に入るといつもの定位置に座った。本当はこんな場所から見下ろしたくないけど。


「私はアシュリー。巫女姫としてこの部族を率いているものだ。砂漠の見張り番などと呼ばれています。あなた方はどうやってあの化け物を手懐けたのか教えていただけませんか?」


 晶龍様の顔に緊張が走った。いけない、警戒させてしまったのだろうか。これはまずい。歓待して気を鎮めていただこう。


「まずは食事でもしながら旅の話を聞かせてくださいな」


 普通のホーンラビットはお肉なんか食べないけど、この方は食べるわよね。ならば心配はいらないから食べていただこう。存在は分からないけど古龍の子息が友誼を結んでいるのですもの。


「遠慮せずに、お肉、お好きでしょう?」

「あんた、何者だ?」


 しまった! 歓待するのに気をやりすぎて秘密にしているのかもとは考えなかった。これはまずい事になった。笑って誤魔化しましょう。


「さっきから言っておりますよ。私は巫女姫です」

「それだけじゃ納得出来ねえけど。まあメシの礼に話ぐらいはしてやるぜ。ラビは外で草でも食べてな」


 そう言って晶龍様はホーンラビットを外に出した。私も他のものを外に出す。そして高い場所からおりて静かに頭を下げた。


「隠しているかもしれない事にも気付かず申し訳ありませんでした、晶龍様」

「オレの名前が分かるんだな」

「はい、失礼ながら私は「覗る」事が出来ますので」

「そうか。なあ、あんた、アシュリーっつったか? ラビの、ホーンラビットの方も見たのか?」

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