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第56話:盗賊団のあとしまつ

アスタコイデスさんは退場です。また出るかもね。

 パピルサグがやられて、ジンがこっちについたのを見て、盗賊団の奴らは抵抗する気を無くしたらしい。いや、頑張ってたのウスバだけだった気がするけど。


 下っ端の団員はコソッと逃げようとしていた。そこにヨクバルさんが手配してくれたらしい冒険者の人たちが。手負いの下っ端では相手にならないみたい。戦いは数だもんね。


 まあぼくが本気を出せば盗賊団の一つや二つ……うん、発見出来るよ、多分。いや、ぼくグレンと一緒の時も斥候役だったし? ノワールの邪魔してただけではないと思いたい。


「あらかた片付いたみたいねえ」


 ヨクバルさんが下に降りてきて、そして固まった。あ、ジンとイフリートのおじちゃんか。いや、おじちゃんにはフレイって名前があると思うんだけど、ぼくはもうおじちゃんの呼び方が慣れちゃったからなあ。


「構わんよ、ラビ。好きに呼ぶといい。今更名前で呼ばれても他人行儀な気がするからなあ」

「うわっ、おじちゃん、なんでわかったの?」

「ラビがあそこの人と私たちの顔を見比べていたからな。そして、私の顔で思案顔になった。おそらくそういうことなのだろうとな」


 すごい、おじちゃん、名探偵だ!


「ラシード、彼らは一体?」

「はっ、風の精霊王、ジンと炎の精霊王、イフリートかと思われます」

「砂漠で会っちゃいけない精霊の王なの!?」


 ええっ、おじちゃんも王なの? ブリジットだけかと思ったのに。この分だとマリーとかエリンとか葛葉くずのはも王族とか言ったりしない?


 あ、なんか頭のどこかでブランが「私は王族にはふさわしくないと言うのか!」って言ってる気がする。でもブランはぼくと同じ動物枠だと思ってたからね。


「ラビと晶龍を保護してくれた商人殿かな? 私はイフリートのフレイ。訳あって二人の保護者から見守る様に言われていたのだよ」


 ええっ、ぼくの保護者……グレンかな?グレンだよね? そっか。イフリートのおじちゃんが見守ってくれてたんだね!


「そっか親父が」


 晶龍君もなんだか嬉しそうだ。そんなおじちゃんたちにアスタコイデスさんが意を決したように声を上げた。


「イフリート殿!」

「フレイだ」

「ではフレイ殿! 私の契約精霊になっていただけないでしょうかだろうか?」

「私は名持ち、既に契約テイムされた身。それを理解して言っておるのか?」

「もちろんです。しかし、私はこの機会を逃したくない! 我が赤の名にかけて、あなたを私のパートナーとしたいのです!」


 それを聞いてイフリートのおじちゃんは困った顔をした。グレンが居るのに悩む選択肢あるの? ぼくは、ぼくは、悩む事さえ許されなかったのに!


「ふむ、熱烈な事だ。フリーならば絆されて試練を与えていたところだが。困ったな。我が主も困ろう」

「ならばその主殿のところに連れて行って貰えないだろうか?」


 アスタコイデスさんは退く気は無いようだ。連れて行けと主張している。いや、アスタコイデスさんのお仕事ってぼくらを連れて帰ることでは?


「なあ、目的変わってねえか?」

「ショウ君の正体を知った以上は無理に連れ帰るなど出来ん。となれば姐さんに申し開きをしないといかんのだが……姐さんの恩義を証拠もなしに裏切るのはな」


 アスタコイデスさんは恩義というのがあるらしい。えっ、お腹空いた時に食べ物を? お金貰えるお仕事も? あー、そりゃあ生命の恩人だね。


「わかった。主の元に運ばせてもらおう」

「面白そうだワシもついて行くぞ」

「ジンよ、お主はついてくる必要ないのだぞ?」

「堅いことを言うな。お主の主を見てみたいでは無いか。使役も解けたことだしな!」


 どうやらジンさんも一緒に行くみたい。アスタコイデスさんをジンさんが運ぶんだって。風の精霊らしく、運ぶのは得意みたい。


 それからアスタコイデスさんと別れの挨拶をした。アスタコイデスさんは別れ際にショウ君に髪飾りを手渡した。何かあればそれをギルドに提出すれば助けが得られるんだそうな。


「へぇ、そいつはありがたいな。もらっとくよ」


 そして二人はガッツリ握手をした。アスタコイデスさんは一緒にギルドに帰らずにグレンの所に行くみたい。ぼくも、グレンに、会いたいなあ。


「おじちゃん! グレンに、グレンに……ううん、頑張ってねって言っといて」

「ラビ……わかった。必ず伝えよう」


 これで、これでいいんだ。ぼくは足手まといにしかならないもの。今更、グレンの傍には戻れないんだ。


「ラビ、行くぞ」

「うん。ねえ、晶龍君、ぼくはもっとわがままを言えばよかったのかな?」

「わがまま言ったところでグレンの野郎には通じねえんじゃねえか?」


 そうだよね。問答無用で解除されたもん。グレン、どうして。先に何か話してくれたら、ぼくだって……いや、それでも何も変わらなかったかもしれない。


 ラシードさんとヨクバルさんが指揮をしながら盗賊団を連行していく。ぼくらはそのまま旅立っても良かったんだけど、ラシードさんとヨクバルさんに挨拶だけはする事にした。

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