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第54話:呆気ない結末

毎日言ってる気がするけど、使いにくい。

「退けい! 我が主人の命なのだ。貴様もタダではすまんぞ?」

「ほう、やれるならやってみるがいい。いつから貴様が私よりも強くなったのだ?」

「いつまでもあの頃のままと思うなよ、イフリートよ!」

「私は主よりフレイの名を賜った。名を与えられた精霊がどれだけ強化されるかは分かっているのだろう?」


 イフリートのおじちゃん、なんかフレイって名前らしい。そういえばグレイが名前付けてた様な気がする。すごく遠い記憶だけど。


「ぐ、ぐぐぐ、私は名を貰えんのに貴様だけ」

「主の器の違いというやつよ。見れば随分と貧相な主ではないか」

「言うな! 好きで使役されている訳では無いわ!」


 どうやらイフリートのおじちゃんと違って、ジンは無理矢理使われているみたいだね。あのリングの魔力なのかな?


 という事はあのリングが無くなっちゃえば戦う理由が無くなるって事だ。よぉし、ここはぼくが頑張るところだね!


 ぼくは一目散にウスバとアスタコイデスさんのところに駆け出した。距離はそんなに離れてないからね。邪魔をしようと追いかけて来かけていたジンをイフリートのおじちゃんが止めてくれる。親指を立てて歯をキランっとしながら笑ってくれた。……ん? 歯? あっ、歯じゃなくてもしかして口元光らせただけ? 細かいなあ。


 アスタコイデスさんとウスバの戦いは一進一退だった。自分で倒すって言うほどに強かったみたいだ。アスタコイデスさんは攻めあぐねているみたい。……いや、なんかイフリートのおじちゃんに気を取られてる?


「アスタコイデスさん!」


 って叫んでも「きゅきゅきゅきゅー」みたいにしか聞こえないんだろうなあ。ほら、なんかぼくに気付いて顔がデレっとしてきた。いいから前向いて!


「オレをどこまで舐めれば」

「おおっとすまない。イフリートの美麗さに目を奪われてしまったようだ。ならば本気で御相手しよう!」


 アスタコイデスさんの剣撃ごどんどん鋭さを増していく。先程までとはうってかわってウスバは防戦一方だ。


「こうなったら奥の手だ。来い、パピルサグ!」


 また来た。あのデカいサソリだ。さすがにアスタコイデスさん一人で二体を相手取るのは難しいだろう。それなら、ぼくが何とかするしかない!


 まずはウスバに突撃だ! 狙いを定めて……行くぞ! ホーンラビットの敏捷性を舐めるなよ!


「うわっ、な、なんだコイツは!」

「ラビ君!」


 ぼくのツノはウスバの手からリングを叩き落とした。コロコロと転がるリング。ぼくは迷わず追いかけようとした。


「こいつ!」


 ウスバはそんなぼくをつまみ上げた。つままないでください! 痛くはないんだけどさ。ウサギを扱う時には胸の下に手を入れ、お尻をすくい上げるように持ち上げて!


「串刺しにしてやる!」

「させるか!」


 ウスバはぼくを刺す事に視野狭窄していたみたいだ。アスタコイデスさんが止めようとするが、ウスバの方が速い。これはやられちゃうかな? えっ? 怖くないのかって? 刃物ごときを怖がってちゃグレンの相棒は勤まらないさ!


「一発くらいなら弾いてみせるさ、ほくのこのツノサバキでね!」


 こう来たらこう弾いて、なんてシミュレーションしてたんだけど、一向に剣は来ない。そのままの姿勢で固まってる。なんだろう? 動けないのかな? ぼく、そんなに重かった?


「もらった!」

「しまっ……ぐわぁ!」


 アスタコイデスさんがウスバの腕を切り落としてぼくを救出してくれた。思いっきり抱きしめられる。うん、ちょっと苦しいかな? ってそんな事してる場合?


「どうやら使役は解けたようだな」

「不便なやつよ」

「お主には言われたくないわ」


 いつの間にやらジンとイフリートのおじちゃんは戦闘をやめていた。仲直り出来たんだね。良かったなあ。


「どれ、ではあのパピルサグを始末したら終わりかのう」

「まあ待て、それは私にやらせてくれんか?」

「私もラビにかっこいいところ見せたいのだが」


 なんだよ、その理由は。そんな事しなくてもイフリートのおじちゃんはかっこいいって思ってるからね! そこ、デレデレしない!


「ではやらせてもらうぞ? ふぅん!」


 ジンの身体が膨れ上がり、肥大化した拳はパピルサグの身体を覆わんばかりになった。狼狽えるパピルサグ。だが、地下世界では逃げ場がない。


「喰らえ!」


 風がうねった。拳はパピルサグを捉え、そのまま空気の圧するがままにひしゃげさせた。そのままパピルサグは砂になっていく。


「ふん、まあまあだな」

「負け惜しみを」

「負け惜しみではない。あれくらいなら私でも可能だ。そう思うよな、ラビ?」


 出来るか出来ないかで言えば多分出来るんだろうとは思う。でもイフリートのおじちゃんの場合はその前に焼き尽くしちゃうと思うんだよね。


 そう言ったら「さすがラビは私の事をよく分かっているな!」なんて頭撫でられた。

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