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第45話:飛来する黒い影

あ、ラビ君がやられた。やーらーれーたー(棒読み)

「何か来る」


 アスタコイデスさんがぼくを撫で回しながら言う。いや、止めようよ! ビジュアル的に台無しだよ!


 まあその気配はぼくにも感じられたんだけど。小動物なぼくにはそんな危機管理能力が優れているという特徴があってですね。


「近いな。相当なやつだぜ」


 晶龍君も気付いていたようだ。それでさっきからなんか楽しそうな顔してたのか。ぼくはバトルジャンキーじゃないからね?


 天空に黒い影が現れた。それはすごいスピードでこちらに向かってくる。黒い影は段々と大きくなり、人のサイズを一回り超えてぼくらのそばに着地した。


 おぞましい。一言で言えばそんな言葉が似合うだろう。人間のような二足二腕でありながら、背中には黒い翼が生えている。羽毛のようなものが生えているから形的には鷲とか鷹とかの猛禽類のものだ。そういえばミネルヴァさん元気かなあ?


 頭は顔がある部分に黒い球体が載っている。おそらくはこれは元は顔と頭だったのだろう。黒光りするそれはなんの感情も示さない。目も口も鼻もないのだ。身体は細く鍛えられてるとは言えない。だけど、その硬度は見た目通りもろいのかは計り知れない。


「キョオオオオオオオ!」


 どこから出されているのか分からない不快な音が辺りを包み込む。ああ、うるさいな。ぼくは音には敏感なんだぞ?


「な、なんだ、今のは?」

「身体が、動かねえ……」


 あれ? アスタコイデスさんと晶龍君が膝を着いている。このままだと襲われちゃうなあ。いや、向こうが叫んだ時点で襲われてるんだろうけど。


 ぼくは渾身の力で晶龍君に体当たりした。


「いってえ!」

「晶龍君、危ないって」

「いや、お前のツノが危なかったけど。まあいいや、おかげで動けるようになったぜ」


 晶龍君が身体にオーラを纏わせる。龍気というらしい。外部からの影響を受けにくくする技なんだと。これがあれば海の底だろうが空気がない場所だろうが戦えるんだって。しかしヴリトラも大袈裟だよね。空気がない場所なんてある訳ないじゃないか。


「ラビ君、私にも、頼む、よ」


 おおっと、アスタコイデスさんも居た。ぼくがぶつかってどうにかなるかは分かりませんが、いっくぞー。


 べチン、とアスタコイデスさんの顔にぼくのお腹が激突した。これで元に戻って……ふわっ!?


 ぼくの背中にアスタコイデスさんの手が回されて、そのまま顔に押し付けるようにされた。そしてくんかくんかとお腹の臭いを嗅がれている。いや、臭いって、花とかじゃないんだからいい臭いはしないよ? それともなんかいい臭いに感じるのかな? もしかしておしりに火がついてる?


「アスタコイデスさん!?」

「ああ、済まない。気持ちよくてつい。しかしもう大丈夫だ。私も奥の手を出そう」


 そう言うとアスタコイデスさんは懐からなにか薬瓶を取り出した。ドーピングというやつかな? スポーツマンシップなんて言っても仕方ないから思いっきりやっちゃえばいいと思うよ!


「おおおおおお!」


 アスタコイデスさんは雄叫びをあげると黒い影に向かって行った。二対一、こうなったらこっちが有利だ。そんな事を思っていた。


 黒い影は自らの腕を三つずつに分裂させ、しなるムチの様に二人に叩きつける。高い位置から叩きつけられる攻撃に二人は防戦一方だった。


「ギョギョギョギョギョ」


 またどこからか声がして、叩きつけるスピードが早くなった。このままだとジリ貧だ。耐えるしかないのだろうか? いや、ぼくが頑張って飛び込めば何とかなるかもしれない。でも、あの攻撃の中に飛び込んでいくなんてぼくには……


「キョワア!」


 腕の部分がひとつ増えて、ぼく目掛けて一直線に進んできた。いや、ダメだ。避けられない! いやだってまさか攻撃が飛んでくるなんて思わなかったんだよ!


 やられる! 晶龍君もアスタコイデスさんもぼくの方に戻ろうとしてくれているが、攻撃が激しくて抜け出せない。


 ぼくの身体を攻撃が貫く。背中から黒い触腕が飛び出して、ぼくの旅もこれで終わり。あーあ、なんて短い人生、いや、兎生? ん? なんだろう、痛くないぞ? やっばりあれかな。痛みが麻痺しちゃうやつ。ここはお腹を抑えて「なんじゃこりゃあ!」とか叫んだ方がいい?


「ギョワワ?」


 黒い影がなにか信じられないような声を出す。一撃で死ななかったのがそんなに不思議かね? まあそう遠くない未来に死んじゃうだろうからぼくのことは放っておいてくれよ。


「ゲギョギョ!」



 晶龍君とアスタコイデスさんに叩きつけていた攻撃を止めて全ての腕をまとめる。わあ、すごく、大きいです。だからドリルは外せと言ったのだ。そう、ドリルのように回転しながらぼくに突っ込んでくる。酷いなあ、どれだけトドメさしたいのさ。いっそひと思いにやっちゃってくれよ。痛いのは苦手なんだ。

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