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第44話:あれは誰だ(執事さん視点)

デビルマンは関係ありません(笑)

「キマイラが二体ともやられてしまっただと!?」


 やたらと華美に飾られた部屋の中で私の主、グリード子爵様が叫ばれる。やれやれ、今お投げになった壺は先代が大事にしていた一級品なのですが。貧乏人の人生が何人も買える程度には高いのですがね。


 私の名前はギャリソン。我が家は代々グリード子爵家に仕えてきた。私も父の引退もあって職を引き継いだところだ。


 私の主、グリード子爵様についても説明しておく必要があるだろう。先代のグリード子爵様はやたらと骨董品やら宝石やらを買い漁る方だった。先々代の遺された資産の殆どを蒐集に費やしたのだ。無能、という訳では無い。美術品の目利きについてはとても優秀な方だった。


 領地の運営はというと、殆ど興味なさげにしていて、様々な美術品の集まるこのホーレイの街に居を構えたのだ。自分の御領地は代官に任せきりである。


 そんな旦那様、先代が亡くなられた。死因は買ったばかりの媚薬を試してみたくて、適量どころか過摂取した為に弱くなっていた心臓がやられた、というところだろうか。急遽として息子のアモン様が就任された。


 アモン様は父親の浪費した金を取り戻そうと領地に重税をかけるように命じた。当時執事であった父はそれに反対。領地の様子を見に行く途中に盗賊に襲われ命を落としたのだ。


 今となってはそれはアモン様のやられたことではないかと思っている。何せ、アモン様はこのホーレイの街を取り巻く砂漠に出没する盗賊団を支配しているのだ。


「ギャリソンよ、お前は俺を裏切るなよ?」

「はっ、お心のままに」


 などと会話を交わしたものだ。私とて死にたくないからな。それ以来、私はアモン様の忠実な執事として仕えてきた。アモン様がキマイラを旅の商人から購入した時も何も言わなかった。魔物の売買は違法である。だが、一部貴族にはペットとして秘密裏に飼う場合があるのだ。


 キマイラの世話は私が取り仕切った。アモン様はキマイラで何をしようとしているのか。それは、この街を治めている領主に成り代わることらしい。その為の戦力を集めているのだと。


 話を聞いた時に私はバカバカしいとしか思わなかった。相手は老人だ。それなのにどれだけ戦力が必要なのかと。だが、アモン様の見立てでは街の冒険者の殆どが相手側につくらしい。人望の差だろうか。


 私はその状況を打開するために自ら見所のある冒険者を求めてギルドに通った。金で動く冒険者といのも少なくは無いから。そこで出会ったのがアスタコイデス。赤の戦士と呼ばれる凄腕だ。


 彼女を連れ帰った時はアモン様も喜んでいたのだが、やはり信用ならないと事故に見せ掛けて殺せと命令が下った。その為ならキマイラを使っても構わないと。キマイラの一体は謎の冒険者の仕業なのか倒されてしまった。もしも赤の戦士がその冒険者ならまた倒される可能性がある。アモン様にそう助言したが聞き入れては貰えなかった。


 アモン様はキマイラを赤の戦士にけしかけて殺そうとしたそうだ。しかし、このように失敗してしまった。もしかしたらそろそろ潮時なのではなかろうか? 正直、アモン様にはついていけない。


「ギャリソン! あの魔物売りの商人を呼び出せ!」

「ですが」

「うるさい、早くしろ!」


 仕方ないので商人から渡されていた鈴を振る。そうするとその商人はどこからともなく転移して現れてきた。白のフードを被り、よく見えない顔だが口の端を上げている口だけは見える。


「ひっひっひっ。残念でしたなあ。まさかあのキマイラを倒せるやつが居るとは」

「うるさい、それで新しい魔物は、キマイラよりも強い魔物は手に入るのか?」

「ええ、ええ、我々は魔物のエキスパート。揃えてあげましょう」

「ならば寄越せ!」

「慌てなさんな。そうですな、そこの人に協力してもらいたいのですが?」


 商人は私を指さした。協力だと?


「いいだろう。その代わり安くしてもらうぞ」

「ええ、ええ、構いませんとも。では、こちらにお願いします」


 どう見ても胡散臭いがアモン様の命令には逆らえない。逆らえば私の命が危ないだろう。父のように殺されてしまうかもしれない。


 商人は手を差し出す様に言った。握手でもするつもりだろうか? 私は握手をする様に手を差し出した。商人が私の手を包み込むように握る。そして私の手には小さな宝玉が載せられていた。


「これは?」


 私の疑問に誰かが答えるよりも早く、その小さな宝玉が光を発した。光が私の全身を包み込んでいく。薄れ行く意識の中で商人が「実験成功です!」などと飛び跳ねているのが聞こえた。私は、一体、何に、なってしまうのだろうか? もう、眠い。繭に包まれて眠りたい。



「こ、これは?」

「ご覧の通りですよ。グレーターデーモンです。素体があなたの執事ですのであなたの命令に従いますよ」


 そうだ、私はグレーターデーモン。主の敵を殲滅するもの。ご主人様、なんなりとご命令を。

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