第43話:晶龍君の正体
ラビ君の正体はまた別の機会に。
二人の愛と友情(?)のツープラトン攻撃でキマイラはゆっくりと横だおれになって沈んだ。晶龍君は「どうだ!」とばかりに決めポーズ。アスタコイデスさんは少し膝が落ちたが地面に着くまではいかなかった。
「倒せた、のか?」
「ああ、バッチリだぜ。よし、じゃあ続きやろうぜ」
「いや、待ってくれ。さすがに停戦させてもらいたい」
「はあ? オレをどっかに連れて行くんじゃなかったのかよ?」
「姐さんからは商人の息子だから連れて来いって言われてたがどう見ても商人の息子どころか人間ですらないだろう?」
アスタコイデスさんは楽しそうに笑った。とてもチャーミングな人だな。よく見ると美人度で言えばエリン、マリークラスだ。ブリジットとか葛葉は種族補正入ってるから妖艶という言葉が相応しい感じだけど。ブリジットとかおっぱい小さいのに妖艶っていう反則な感じで、もし大きかったらグレンも危なかったんじゃないかな?
まあもっとも、グレンが巨乳派なのか貧乳派なのかは誰も知らないんだよね。あ、もふもふ派ではあると思うよ。ぼくのこといつも撫でてたもん。撫で心地良かったなあ。なんか思い出してきたら寂しくなってきちゃった。
「オレはショウ君じゃなくて晶龍ってんだ。古龍ヴリトラとティアマトの間に生まれた一人息子だ」
あれ? 晶龍君、お兄さん居なかったっけ? なんか昔お兄さんに抱っこされて喜んでた気が。
「倶利伽羅兄は従兄だよ。恥ずかしいから思い出させんな」
それを聞いたアスタコイデスさんがびっくりして、そして大きな声で笑った。呵呵大笑というやつだ。晶龍君の家の事だね! えっ? カカア大将じゃない?
「これは参った。まさか龍の一族とはな。私もお目にかかった龍は居ないことはないが、話したのは初めてだな」
「へぇ、龍に会ったことがあるんだ」
「ああ、火竜の流星という龍なのだが」
「古龍じゃねえのか。まあ火竜ならしゃあねえよな。割とあちこち居るし。百年単位で増えるもんなあ」
晶龍君はまだ生まれてから百年どころか十年位しか経ってないよね?
「しかし、そうすると連れて帰る訳にはいかないよねえ」
「まあな。これは龍の一族の成人の儀式だからな」
えっ、成人の儀式だったの? ぼくと一緒に居て大丈夫なの?
「いや、会った時に成龍になる為の準備って言ってたんだが?」
あ、あはは、そ、そういえばそうだったね。晶龍君に出会った驚きが大きくて大して聞いてなかったってことはないよ!
「出来たら私と一緒に来て姐さんに説明して欲しいのだが」
「うーん、その姐さんというのが誰かわからないからなあ」
「なんで!? あの、名前言ったら覚えてるかな? ギラファっていうおば……お姉さんなんだけど」
「……誰?」
晶龍君! あの村の家の人じゃないかな? ほら、娘さんが晶龍君にキセイジジツ迫ったやつ!
「…………ああ!そうか! あーまあ、確かにな。殆ど出会ってなかったな、人間って」
アスタコイデスさんは独り合点してる様に見える晶龍君に尋ねた。
「ショウ君、いや、晶龍君? 君は一体誰と話してるんだい? 精霊か幽霊か何かか?」
「はあ? あ、いや、ラビとな」
「ラビ君もしゃべれるのかい!?」
アスタコイデスさんが物凄い勢いで食いついてきた。なにそれこわい。晶龍君もちょっと引き気味だ。
「い、いや、オレは何となくで意思疎通が出来るくらいで」
酷いよ! ぼくの話を何となくでしか聞いてなかったんだね!
『馬鹿っ! 全部わかるって言ったら絶対面倒な事になるだろうがよ!』
『ごもっとも』
やっと念話で話す気になったんだね。時すでに遅しって感じだけど。
「なあ、晶龍君、ものは相談なんだが」
「な、なんだよ?」
「その、ラビ君をだな、思う存分にモフモフしてみたいんだが」
とんでもないこと言い出したよ!?
「いいぜ。な、いいよな? だよな!」
あ、いや、晶龍君? あの、ぼくなんにも言ってない……
『会った時のオレの話聞いてなかった罰だよ。存分にモフモフされてろ』
『そんなあ』
アスタコイデスさんがニヤニヤした笑みを浮かべてジリジリと近付いてくる。あの、ヨダレ、ヨダレ出てます!
「大丈夫だよー、怖くないからねー、ほぅら、こっちおいでー」
これが迫り来る恐怖、這いよる混沌というものだろうか? ああ、窓に、窓に! ん? 窓? 廃屋は崩れたから窓は無いですよ?
「つぅかまぁえた!」
「きゅううううう(うひいいいいい)!?」
「ラビー、頑張れよー」
晶龍君が他人事すぎる! アスタコイデスさんに捕獲、いや、捕縛されて、そのままがっちりとホールドされて存分にモフモフ堪能されました。お腹の辺りがまだくすぐったい。もうお嫁に行けない。オスだけど。…




