第39話:ギルドに行こう
冒険者の方のギルドです。ミアマちゃんは眼鏡っ子!
次にぼくが目を覚ました時に、ぼくを心配そうに見つめている晶龍君とヨクバルさん、そしてラシードさんとナダメルさん、ライラさんとドロテアさんに、その二人とよく似た顔の美人なお姉さんが居た。
「ラビ、良かった。生きてたか」
「ごめんなさいね、ラビちゃん。つい、力が入っちゃって」
晶龍君がほっとした声を出して、ナダメルさんが申し訳なさそうに呟いた。いや、言われても分からないでしょ。とりあえずきゅーって鳴いとくか。
「さて、では話の続きだな。マーサ、頼む」
「ハイハイ。でもうちの子たちでも良かったのに」
「ここ一番はやはりお前の占いでないとな」
「仕方ないわね。じゃあ占うわよ」
そう言うとマーサさんというのだろう、ライラさんとドロテアさんによく似たお姉さんは鏡を広げて、そこに水を垂らした。そこには何かが映る。あれは、キマイラかな?
「どうやらキマイラはここから来たみたいね」
「子爵邸か。やはりな」
「もう、迷惑しちゃうわ」
映ってるのは過去の出来事らしい。そこに映るキマイラが二体……二体? 晶龍君が倒したのは一体だけど、もう一体居るのかな?
「あなた、ショウ君、だったっけ? あの、あなたが倒したのよね?」
「え? いえ、違います」
「……嘘は言ってないみたいね。本当に通りすがりの誰かが倒したのかしら?」
マーサさんは嘘発見を用いた。晶龍君は嘘発見には気付いてないけど、実際に倒してないので大丈夫だった。ぼくにやられてたら一発アウトだったよ!
「仕方ないわね。冒険者ギルドに行った方がいいかしら。いつ、それくらいの実力者が来ても分からないもの」
「そうね、私たちも生命の恩人を探さないといけないものね」
「お、おう、そ、そうだな?」
晶龍君の歯切れが悪い。まあそんな冒険者だなんて居ないもんね。それでも連れ立って冒険者ギルドに行く。ライラさんやドロテアさんまで面白そうだと着いてきた。おかげで道道ぼくは抱っこされっぱなしだった。二人で交代で抱いてたよ。
冒険者ギルドに到着した。商業ギルド程じゃないけどそこそこ大きい。商業ギルドは背が高かったけど、こっちはそうでも無い。
「いらっしゃいませ!」
少し控えめな感じの町娘風なギルドの受付嬢が声を掛けてきた。恐らくラシードさんがいるからだな。
「やあ、ミアマちゃん。昨日居た赤い女性はどちらに?」
「その方でしたら昨日キマイラが出た時にここを飛び出してそのままですよ。あ、そういえば少年を探してるとか。確か名前はショウ君だったかな?」
「あう? お……ぼく? な、なんですか?」
「あなたが商人の息子さんね。なるほどなるほど。赤の戦士がわざわざ探しに来るだけの事はあるわね」
「ほう、彼女が赤の戦士だったか。道理でな」
赤の戦士? そんな名前の有名な冒険者かな? そんな人が晶龍君を探しに来る? ここに来るまでにショウ君と名乗ったのはあの村の一軒家だけ。まさかあの娘さんと結婚させるためなのかな?
そしてラシードさんはその赤の戦士に会ったことがあるらしい。と言っても昨日すれ違って言葉を交わした程度なんだそうだけど。
「無理にでも誘っておくべきだったな。まあショウ君が居るなら遅かれ早かれここには辿り着くだろう」
「まあ私はよく分からない噂の人物よりもラシードの事を信頼しているわ」
「気持ちは嬉しいが、キマイラが出てくればヨクバルさんを助ける事も出来んからな」
「油断しただけなんでしょう?」
「油断は間違いないが、正直言えば戦って勝てるか断言出来ん」
ラシードさんは自分の矜持よりもヨクバルさんの安全を取るみたいだ。グレンも自分の強さはそこまで自慢してなかったなあ。普通に勇者なんかより強かったけど、それでもぼくらに危険が及ぶ時は弱さを認めてたもんね。まあヴリトラとか出なくてもエリンとかマリーがやっちゃってたり、ブランやノワールが追っ払ってたりしたけどね。
いや、ぼくだって最初の頃は頑張ってグレンを守ってたんだ。倒れる度傷つく度強くなって少しずつだけど成長してたんだ。エリンやマリーには止められたけど。ブランやノワールは戦闘訓練に付き合ってくれたなあ。
そんな事を考えてたらラシードさんがため息を吐いた。どうやらお眼鏡に適うような相手は居なかったらしい。そりゃそうだ。多分強い人ってのは依頼をこなしてたりするからね。ここに居るのは昼間から飲んだくれてるうだつの上がらない冒険者ばかりだろう。ところでなんで冒険者ギルドに酒場があるのかね? え? ルイーダの酒場? 何それ?
「邪魔するぜ」
そんな時にバタン、と音を立てて入り口の扉が開かれた。入って来たのは四人組の冒険者パーティの様子。見たところ前衛、前衛、前衛、後衛の超前のめりパーティだ。ラシードさんが警戒態勢に入った。なんでだ?




