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第38話:追っ手アスタコイデス(アスタコイデス視点)

赤、青、白、黒、緑の五色居ます。戦隊モノじゃないよ。

 砂漠を抜けてホーレイの街に入った。仕事で何度か来た事はあるけど、そこまで何か特色ある街でもなかったと思う。それでも砂漠に出る出発点ということでそれなりに店は揃っている。


 さて、先ず街に来たら冒険者ギルドに顔を出すのが常套だ。どんな仕事があるのかだけでも見れば街の様子がよくわかる。冒険者ギルドの仕事というのは薬草採取や魔獣討伐ばかりでは無いのだ。私も駆け出しの頃は様々な雑用をさせて貰った。


 特にギラファ姐さんには糊口をしのぐ仕事だけでなく、お金が底をつきそうな時に家でシチューを食べさせてくれた。牛の乳搾りはキツかったけど、ちゃんとお金まで貰えたので頭が上がらないのだ。


「どれどれ?」


 貼られている依頼は新たなオアシスの探索だとか砂の遺跡の探索だとか隊商の護衛だとかサソリの駆除だとか。まあ目新しいのはそんなところだろう。あとはどこの街でもありそうな手紙の搬送とか屋敷の警備とかそんな感じだ。


「あんた、なかなか強そうだな」


 そんな掲示板の前で声を掛けられた。歳の頃は三十を少し過ぎたくらいだろうか? 若くは無いが衰えてもいない、戦士として脂が乗ってる頃だ。戦士、と断じたのは腰に提げている剣と、鋭い眼光、そして鍛えられた体幹からだ。


「弱い、とは言わないさ」

「そりゃあすごい。なんならうちの隊商に加わって欲しいところだ」

「すまんな。生憎と目的があってね」

「そうか、残念だな」


 その男とはそこで別れた。ギルドを見回しても彼以上の使い手は居なさそうだ。まあいい、聞いてみよう。軽く腹ごしらえをして、お酒を二三杯あおってからギルドのカウンターに近寄る。カウンターのお嬢さんは少し控えめな感じの町娘というやつだ。ギルドの受付か? とも思ったがなり手不足の問題だろう。冒険者は荒くれ者だからまともな仕事先としては敬遠されるしな。


「ようこそいらっしゃいました。何かご希望の依頼でもありましたか?」

「いや、そうじゃなくてね。少し人を探してるんだけと」

「人探し、ですか?」

「ああ、ショウ君という商人の息子さんだそうだ」

「申し訳ありません。存じ上げませんで」


 ギルドの受付嬢の言葉にガクリと肩を落とす。もしかしたらここまで来てないのだろうか? いや、それでもこの街を避けるとは思えない。ここに来ればどんな夢も叶うという……訳ではなく、情報仕入れたり周辺の様子を調べるにはちょうどいい。そんな時だった。


「キマイラが出ました!」


 キマイラ。魔法生物、魔獣の一種で首が三つあり、山羊の首から麻痺攻撃が、蛇の首からは毒攻撃が、獅子の首からは恐怖、畏怖攻撃が飛んでくる、普通の冒険者なら遭遇したくない相手だ。


 まあ私はキマイラの一頭や二頭くらいちょちょいのちょいですよ。この魔剣モーンブレードが火を吹きますよ! いや、モーンブレードって勝手につけてるだけで単なる鋼の剣なんですけど。だってその方がかっこいいでしょ?


 走って行くと路地にキマイラが降りていくのが見えた。ええと、あそこはどう行ったらいいんだろう? 大体の場所は分かるが道順が分からない。しばらく走りながらまたキマイラが飛び上がろうとしてなかったのでまさか、やられたのか、とその場所に急ぐ。


 その路地裏に辿り着いた時には血の臭いはあらかた薄れていた。おびただしい血の跡はあるが遺体はどこにもない。キマイラが飛び立つのは見ていないので、おそらくは何者かに倒されたのだろう。頭の中にさっきの青年の顔が浮かぶ。


「倒せるかどうかは分からないけど、もし倒せるとしたら彼くらいか。いや、それとももっと強いのが居るのかもしれない」


 私はとてもワクワクしてきた。このキマイラを倒すようなやつと戦うことが出来たらどんなにか心躍るだろうか。いや、そんな事で心を躍らせるなとは姐さんにも言われたな。


「やられてしまったか。やったのはあなたですか?」

「なんだ、あんた?」


 いつの間にか私の背後をとっていたのは執事、と言っていい格好をした男だった。若いがなかなかの身のこなしだ。三十まではいかないだろう。


「もう一度聞きます。キマイラを倒したのはあなたですか?」

「倒せるだろうが私じゃあない」

「頼もしい。私は貴族の執事をしてるのですが、ちょっと雇われて貰えませんか?」

「へえ、悪事かい?」

「ご冗談を。キマイラの襲撃に私の主が不安がりまして、屋敷の警備を強化する事になったんですよ」


 なるほど。筋は通っている。しかし、先程の言い方からするとおそらくはキマイラをけしかけたのはこいつらのはずだ。


「報酬次第だ。いいだろう」

「そうですか。ぜひ、主人の屋敷にお越しください。申し遅れました。私はグリード子爵家に仕えております、ギャリソンと申します」

「そうかい。私はアスタコイデス。赤の戦士って言われたら分かるかい?」


 その二つ名を聞いてたいそう驚いていた。赤の戦士の二つ名は男だと聞いていたとか言われるが、白と緑はともかく赤は私なのだ。さて、貴族なら食事は美味いんだろう。楽しみだ。

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