表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/200

第34話:領主邸にお邪魔しました

衛兵さん的にはもっと大きい家に住んで欲しいと思ってます。

「これ、美味いな!」


 晶龍君が目の前に出されたお肉の塊にかぶりついて美味しそうに食べる。ここは下町の料理屋だ。ギルドのそばにある、夜は酒場になる大衆食堂みたいなところだ。昼間から飲んでる奴もいる。


「だろう? 美味いだろう」


 私らの中で飲んでるのはラシードさんだ。いや、飲むんかーい。ヨクバルさんとミレディーヌさんは優雅に料理を食べている。ぼくのためにドレッシング抜きのサラダも頼んでくれたからきっとヨクバルさんはいい人だ。かかってても食べられるけどね!


「それで、盗賊団の手先は確保したの?」

「まだよ。トレイターだけは捕まえて尋問してるけど、ギルドの用事でおつかいに出してあるって言ってあるからバレたりはしないと思うわ」

「厄介な事になったわねえ」

「ヨクバルには申し訳なかったわ。まさか商業ギルドからの紹介でスパイが潜り込んでいたなんて」

「今まで商業ギルドから送り込まれてきたのはそういうのなかったからきっと運が悪かったのね」「実はね、今回の派遣は半年前には決まっていたのよ」


 ミレディーヌさんの言葉にヨクバルさんがびっくりしていた。半年前というのはセコルがヨクバルさんのところに潜り込んだ頃だ。


「ヨクバル、あなたこそセコルをよく隊商に同行させたわね」

「あ、ああ、そうね。でも、仕事態度も真面目だったし、何より連れて行くはずだった番頭の一人が体調を崩したのよ……もしかして!」

「おそらくは一服盛られたんでしょうね」

「なんてこと!?」


 どうやらかなり綿密に計画されていたみたいだ。晶龍君は構わずにご飯食べてるけど。まだ食べるの? えっ、ぼく? ぼくは草食動物だから要らないんだってば!


「とりあえずギルドに戻ったら一斉に検挙。それから子爵の屋敷に強制捜査出来るように領主様に打診しておかなきゃ」

「領主様なら私は顔パスよ」

「そうね、じゃあ領主様はお願いするわ。盗賊団には頭を悩ませていらっしゃったからきっと領主様は快く協力してくれるはずよ」

「そうね、あの領主様なら」


 領主様、とやらも貴族だと思うんだけど、こちらは信用されているみたい。クラーケンみたいにうにょうにょしてないのかな?


 そこから食堂を出て、商業ギルドと領主邸へと別れた。ぼくらは領主邸だ。晶龍君がぼくが一緒でも大丈夫かと尋ねてくれた。領主様はテイマーにも理解があるとの事だったので大丈夫らしい。そういえばグレンと旅してる時、貴族がテイマーは魔物を街に連れ込むと文句を言ってた事があったな。結局、その貴族は密輸してたんだけど。相手への文句は自己紹介みたいな話だよね。


 街中で一番大きな屋敷。そこに行くのかと思ってたら割とこぢまんりとした家だった。ちょっと大きな一般商家程度だ。門はあるし、門番は衛兵だけど。


「皆様、ご苦労さまですわ」

「おお、ヨクバルさん。しばらく帰らないと聞いていたのに」

「それが色々ありましてね。領主様は居られますか?」

「ちょっと待っててくれ。取り継ごう」


 そう言うと衛兵の一人は屋敷の中に入っていった。少しすると衛兵と共に白い髭のおじいさんが出て来た。


「おお、ヨクバルさん。よく来てくれたねえ」

「領主様、わざわざ出てこられなくても」

「いやいや、たまには歩かんとな。足腰が弱ってしまう。ラシードさんも久しぶりだね」

「はっ、ご無沙汰しております!」

「ハサン君は元気かね?」

「お陰様ですくすく育っております」


 ラシードさんも嬉しそうだ。優しそうな方だね。


「そちらの坊やと……抱えてるのはホーンラビットかね? やけに赤い様だが」

「ショウです。こいつは相棒のラビ」

「そうかいそうかい。ショウ君、ラビ君、私はこの街の領主をしているゼンドだ。よろしくね。まあ立ち話もなんだから中に入ってもらおうか。ユミエイラ、お茶を頼むよ」

「はい、旦那様」


 そばにいたメイドさんが深深とお辞儀をして奥に先に引っ込んで行った。


「さて、ヨクバルさん、時間が無いのだろう? 用件だけ聞こうか」

「察して居られましたか。では、グリード子爵を捕まえます」


 その言葉を言った時に領主様は目を落としてボソリと何かを呟いた。そして言った。


「何の容疑だね?」

「商業ギルドに盗賊団の手先を送り込んだからです」

「証拠は?」

「状況証拠だけですが、何とか」

「それじゃあ逃げられるだろうねえ。まあ彼もしっぽは早々出さないさ」


 沈黙。領主様はグリード子爵とやらにまでは届かないと思ってるみたい。ぼくも無理だと思う。貴族ってそういう庶民だったら逮捕されるような事でもするっと逃げちゃうもん。あー、だから血が青いのかな? すり抜け方とかタコとかイカとかみたいだもんね。


「そこは大丈夫です。秘策があります」


 ヨクバルさんは得意気に言った。そんな話ぼくたちは聞いてないんだけど?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ