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第30話:子どもたちとの交流

ライラさん、って書くとそれだけで幸せな気分になりませんか?

 ハサン君は晶龍君が来て大喜びだ。ナダメルさんにライラさん、ドロテアさん、女の子でいっぱいの中に男はハサン君一人だったからだ。


「なあなあ、お前、ここまで旅してきたのか? 色々教えてくれよ!」


 どうやらハサン君は旅に興味があるらしい。このくらいの歳の子供は冒険する事を夢見る。ハサン君もラシードさんにくっついてきたのはその辺の理由なのかもしれない。


「ハサン生意気」

「ねー」


 ライラさんとドロテアさんはハサン君より少し年上な感じ。双子だから見分けがつけにくいけど、目がとろんとしてるのがライラさんで、目がキリッとしてるのがドロテアさんだ。でもどちらもとろんとしてる時もあるのでそういう時は見分けがつかない。


「うるせえな、黙ってろ! おれだって勇者みたいに冒険して活躍するんだ!」


 勇者。そう言えばグレンと冒険してる時も勇者の噂は聞いた事がある。なんでも魔王を倒せる唯一の希望らしい。一度遭遇した事があるけど、尊大なやつだった。確かあの時はマリーとエリンとブランを寄越せって言ってたな。ノワールは欠伸してた猫みたいだったから勧誘というか要求はされてなかった。


 それでグレンが大切な仲間だからって断ったら、俺の言う事が聞けないのか?俺は勇者なんだぞ?って剣を抜いて脅して来たんだよね。正直関わりたくないって思ったよ。ぼくは眼中にも無かったと思う。何せホーンラビットですし。


 その時は勇者の仲間の騎士様みたいな人が諌めてくれて事なきを得たんだけど、あんなのを放し飼いにしちゃだめでしょ。あんなののどこがいいのだろうか?


 よくよく聞いてみるとハサン君の勇者というのは今代ではなく、はるか昔に居た勇者らしい。その時の魔王を倒したんだとか。いや、魔王倒されたんならどうして今も魔王が居るんだろう? その辺はハサン君は話してくれなかった。まあ関係ないしね。ぼくから聞くことも出来ないし。


「この剣を見ろよ! オヤジが買ってくれたんだ。これでおれは強くなる!」


 そう言って取り出したのは木剣である。さすがに真剣は危ないと思ったのかもしれない。まあ素振りしたり剣の型を練習したりするのにはちょうどいいだろう。鉄剣の重さに慣れて取り回しを覚えるのはその後だ。


 グレンも剣を練習する時は木剣を使ってた。時々ぼくはかじってたけど。でも、間違って木剣割っちゃってからはかじってないよ!


「テントの中で振り回しちゃダメだよ」

「めーだよ」


 ライラさんとドロテアさんにたしなめられて素直に木剣をしまった。どうやら頭が上がらないらしい。つくづく思うけど、女は強いね。あ、ぼくはオスだからね、こう見えても。


 ライラさんとドロテアさんは母親が占星術師らしい。今回は母親がぎっくり腰なので代わりに隊商デビューしたんだそうな。ぎっくり腰、魔女の一撃とかどこかの言葉では言うらしい。前にシルバー爺がなったけど、「ヴリトラの一撃より堪えたわい」なんて言ってた。リヴァイアサンでもぎっくり腰ってなるのかな。腰ってどこなの?


「試しに占ってあげる。ライラ、やるよ」

「はぁーい」


 ドロテアさんとライラさんは床に何やらカードを並べ始めた。なんだろう、神経衰弱メランコリー? 見てるとライラさんがゆっくりと一枚ずつめくり始めた。


「星、塔、死神……これは」

「ライラ?」

「かなり、危ない。多分、夜襲。おかしい。野営に入った時は何も無かったのに」


 夜襲!? 何が襲ってくるの? 砂漠の真ん中だよ? もしかしてサソリ? あのデカいサソリ人間みたいなのが来たら……いや、それを食い殺したやつかもしれない。あの時ぼくらは助かったけど、もし、遭遇していたら……晶龍君は強いけど勝てるんだろうか? ぼくは頑張って応援するよ!


「砂漠の敵なら恐らく……ちょっと待ってね」


 そう言うとドロテアさんは何が丸いものを取り出した。ピカピカ光ってるやつだ。中に何か映ってる?


「ええと、映しだせ!」


 そう言うとぼんやりと影のようなものが映し出された。何やら黒い影で馬のようなものに乗って手には何か剣の様なものを持っている。


「このシルエットは……盗賊!?」


 ドロテアさんの顔が青ざめる。どうやらピカピカに映ったのは襲って来る「敵」の姿だったみたい。なんでも母親ならしっかりとピカピカに顔が映るらしい。


「直ぐにヨクバルさんに報せないと! あとオヤジにも!」


 弾けるようにハサン君が飛び出して行った。時間はもうかなり遅い。戻ってきたハサン君は不安そうにして木剣を抱えていた。両端からライラさんとドロテアさんが頭を撫でている。


「ラシードさんは強いから大丈夫よ」

「いいこいいこ」

「うっ、うるせえな! そ、そんなことは分かってんだよ! いいか、お前らはおれが守ってやるんだからな!」


 震えながらも勇ましく宣言した。

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