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第27話:砂漠を渡る風

名は体を表す(笑)

 という訳でオアシスです。着くまで何かあったかって? まあ時々サソリが襲ってきたけど、晶龍君スタッフが美味しくいただきました。ぼく? だからぼくは草食動物なんだってば! それにそんなにお腹も空いてないし。


 オアシスには広い湖みたいなのがあった。そして周りには草花が生えている。ひゃっほう、ご飯だ。でも食べ過ぎないようにセーブしよう。


 オアシスには先客もいた。隊商、キャラバンというやつだ。ここから南には岩石でなく砂の砂漠が広がってるので、そっちから通って来た人たちだろう。


「おいおい、こんなところに子どもが……隊商の子じゃなさそうだが」


 話しかけてきたのは髭面のおじさんだ。身体はがっちりしてる。隊商の護衛の人だろう。腰には剣を提げている。刃の部分が曲がってるけど折れたりしないの?


「はい、ぼくはショウって言います。一人……いえ、このラビと一緒に旅をしてるんです!」

「そうか。俺はラシードだ。この隊商の警備責任者をしている。送ってやりたいところだが、これからどこに行くんだ?」

「南の方にある街に」

「ホーレイの街か?」

「多分そうです」


 ショウ君の答えにその人は眉をひそめた。どうやら方向が違うようだ。まあそれならそれでぼくらは構わないんだけど、このラシードさんは違うようだ。


「おい、マリスは居るか?」

「なんですかい、お頭?」

「バカ、もうお頭と呼ぶな。隊長と呼べ」

「へいへい。それで何か?」

「この隊商の護衛の指揮を代わってくれ」


 こともあろうに隊商の護衛を代われと言い出した。部下なんだろうマリスとかいう人は慌てて手を振った。


「な、何言ってんですか、お頭……いえ、隊長! 俺らの仕事はこの隊商の護衛でしょうに。それを放っておいて何やるつもりですか?」

「この子たちを送ってホーレイの街に戻る」


 いえ、あの、ぼく達は送ってくれって頼んでないんですけど? 晶龍君もぽかーんとしてる。何事?


「隊長、それならこの隊商のオーナーに直接言って許可もらってくださいよ。隊長の名前で護衛依頼が来たんですから!」

「ぐ、ぐうう」


 どうやらやり込められたようだ。そうだよ、護衛の仕事があるならそっちを全うして欲しいものだ。グレンだって受けた依頼は必ず全うしてたよ。


「ならせめて、今晩はこの隊商で面倒見たい。ダメか?」

「まあそれくらいならオーナーも許可くれると思いますよ。じゃあ行ってきます」

「頼んだぞ」


 あれ? いつの間にやらぼくらが隊商で面倒見られる感じになってる? いやいや、早めに出発して明日にはその街に着いておきたかったんだけど。ちょっと晶龍君、何呆けてんの?


「はっ!? あ、あの、ぼく達はオアシスから出発するつもりなんですけど」

「この砂漠を歩いていくつもりか? 流砂に巻き込まれるぞ?」

「いえ、その、大丈夫、と、思います」

「ダメだダメだ。一人で砂漠を行かせる訳にはいかん」


 いかん、と言われても決めるのはぼく達では? それにぼくも居るからひとりじゃないんだけど、伝えることの出来ないこのもどかしさ。


 ぎゃあぎゃあやってると先程の三下っぽいマリスさんとかいう人が、でっぷり太った指に指輪をじゃらじゃらつけた人を連れて来た。


「拾ったっていう子どもは?」

「この子です」

「痩せっぽちだけど、何かには使えそうねえ」

「あ、いえ、ぼくは」

「いいわ、アタシの隊商に置いてあげる。頑張れば給金も上げてあげるからしっかり勤めなさい」


 いや、勝手に話を進めるなよ。ぼくが抗議してやる!


「何よ、キイキイうるさいわね。あら、このホーンラビット赤いのねえ。欲しいわ」


 背中にゾクッと冷たいものが走った。いやだ、気持ち悪い。


「ダメです。ラビは渡しません」

「そうか、残念ねえ。私はこの隊商のオーナーでヨクバルというの。ゆっくりしていくといいわ。見たところ、砂漠を渡る装備も持ってないみたいだし」


 砂漠を渡る装備。そういうのもあるのか。まあ確かに人間は装備を整えて旅をするもんね。晶龍君の格好は軽装すぎるって事なんだろう。もしかしてさっきラシードさんが一緒に行くと言い出したのもその辺が原因なのかもしれない。


「ラビ、どうする?」

「どうするって、このままだとぼくらは街に行けないから隊商の人に適当な装備を見繕って貰って揃えようよ」

「そうだな。確かにそうだ」

「あ、でも金貨はあまり使っちゃダメだよ? 一枚だけ、一枚だけ出して様子を見て」


 またあの村の村長のところみたいな真似をされても敵わない。晶龍君の貨幣価値の無さはぼくがカバーしなきゃね!


「ラシードさん、その、砂漠を渡るのに必要な装備はありますか?」

「うーん、聞いてはみるがあまり期待しないように。子どもが砂漠を渡るなんて滅多にないからサイズが無いかもしれん」


 おおう、新たな問題が勃発していた。

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