第24話:ファベールの夜這い(ファベール視点)
ああ、足りない。文字数が足りない。次こそは!
私はファベール。この村の村長の娘で、村一番の美少女! 村の男の子たちからはモテモテなんだから。まあ村には他に女の子居ないんだけど。
ここは小さな村。戸数が十軒もない酪農を生業としてるのが特徴。うちは税を取りまとめたり、商人と交渉したりする役目。だから、私も将来に向けて商人の息子とかをお婿に貰って跡を継がないといけない。
えっ、村の男の子と結婚しないのかって? だって誰も字が読めないんだもの。計算も出来ないし。まあその分牛の世話はしっかりやってるみたいだけど。
そんな退屈な村での暮らしに終止符が打たれる事になった。うちの村に何故かお客が迷い込んできたの。それもちょっとイケメンな感じの子。なんでも商人の息子みたい。ポンっとキマイラ……じゃなくて気前よく金貨を出したらしい。しかも二枚も。イケメンで金持ってるとか良いよね!
それに、胸に抱いてるエムマーク……じゃなくて赤いホーンラビット。見たことないし可愛い。抱っこして寝たら気持ちよさそうだよね。あの子は私のペットにしてあげたい。
それでお父さんが私のために作戦を立ててくれた。夕食に薬を仕込んで眠らせるんだって。そしてキセイジジツとかいうのを作るんだとか。あの子なら私何されてもいいかなって思うんだけど、お父さんが許さないってさ。まあ最近ちょっと胸の辺りが擦れて痛いから触られると困るかもだけど。
「さあさあ、お坊ちゃん。ご飯の用意が出来ましたよ」
お父さんがあの子を呼んでくれた。やっぱり大事なのはファーストインプレッション。お淑やかな可愛い女の子ってのを強調しなくちゃ。
「ワシの妻のギラファと娘のファベールです。申し遅れました。ワシはこの村の村長をしておりますゼブラと申します」
「あ、ぼくはショウです。この子はぼくのパートナーでラビって言います」
ショウ君っていうのね。まあ知ってたけど初めて知った感じで自己紹介。ホーンラビットはラビちゃんっていうのか。
「ねぇねぇ、その子可愛いね。私に抱かせてくれない?」
「ええと、ぼく以外には懐いてないので」
私が抱きたいって言ってるのに断られるなんて。でもショウ君の困った顔もステキだから許してあげる。
「意地悪なのね。まあいいわ」
「ファベール、やめなさい。ショウ君、失礼したね。申し訳無い」
「あ、いえ気にしてないです」
お父さんに叱られちゃったわ。でもショウ君は心が広いのか許してくれた。やっぱり私に気があるんだと思う。真っ赤だもの。
それから食事をしながら歓談していた。ショウ君の食事に混ぜた薬は遅効性とかいうやつなので、ゆっくりご飯を食べて薬が回るのを待つんだって言ってた。うふふ、もうすぐ私の旦那様になるのね。ショウ君はこの後に南の方に向かうんだって。まあ予定は未定だよね。私のお婿さんになるんだもん。
「ねぇねぇ、その子、私が買ってあげようか?」
私はキラキラした目でラビちゃんを見た。早く触りたかったんだもん。ラビちゃんを売ってくれるかどうか試してみたんだ。
「いえ、ぼくのパートナーですので一緒に連れて行きます」
ショウ君大事にしてるんだ。だったらいざという時は人質ならぬうさぎ質に出来るかなあ。キセイジジツの作り方が分からないからそれも考えておかないとね。
その日の晩、どうやらショウ君は寝静まった頃だろう。私はゆっくりと扉を開ける。そしてこっそり入ってラビちゃんを見つけると自然と笑みが出て来た。
「いたいた。ラビちゃん、一緒に寝ましょうね」
私は優しく話しかけるとラビちゃんを抱っこした。そしてそのままショウ君の寝てる布団に入り込む。
「大丈夫ですよー。あなたは私のモノになるし、ショウ君は私のお婿さんになるんだから」
ラビちゃんが震えてるみたいなので声を掛けて安心させてあげる。
「私がこうやって寝てたら朝にお父さんがキセイジジツとかでラビちゃんを私のモノにしてくれるんだって」
ラビちゃんはもぞもぞと暴れるとベッドの中から抜け出した。
「あん、やだもう。逃げちゃったわ」
私もベッドから降りるとラビちゃんを捕まえようともう一度近付いた。
「私ね、あなたみたいな可愛いペットが欲しかったの。ショウ君もかっこいいし、お嫁さんになってあげてもいいかなって。村のガキたちはどいつもこいつもバカばっかりだし」
誰に聞かせることも無く言う。だから逃げないでね、ラビちゃん?
「心配しないで。痛いことはしないから。ただ一緒に寝るだけよ」
ラビちゃんが逃げようとしてる気がして優しく声を掛けてあげた。早くもふもふを抱っこして寝たい。
「なんだよ、ラビ、うるせぇなあ。おちおち寝てられ……」
ショウ君が眠そうに目を擦りながら起きちゃった。あれ? お薬盛ったよね? なんで起きていられるんだろう。
「あら、起きちゃったの? お薬足りなかったかしら?」




