第198話:特に書いてないけど、みんなついてきてるからね!
今までの道程を辿る旅の始まりです。終わりはもう決まってます。
魔法陣がビカビカと光を発し、眩しいなと思ったら、グレンの首についていた首輪とそこから伸びて全身にまとわりついていた鎖のようなものの幻影が消え去った。
「ううっ、酷い目にあった」
『グレン!』
「はい終了。男の身体なんて兄さんの以外触りたくないけど、アスタの為に頑張ったんだからね、ボク!」
「ああ、ありがとう、デンティ」
「えへへ」
アスタコイデスさんがデンティフェルさんを撫でるとあからさまに相好を崩した。
「調子はどうだ、グレン殿」
「あなたは、ミラビスタさん。すいません、なんとかなると思ったら意識まで封じられて」
「ラビ殿に助けられたな。よく礼を言うがいい」
「助かったよラビ。ありがとう」
『水臭いなあ。ぼくとグレンの仲だろ、相棒』
そうしてぼくらは笑いあった。さて、その後のことも話しておかなければならない。と言っても大したことは起きてない。
せいぜいがみんなが動ける様になり、グレンの指示を待つこともなく、議場で暴れただけだ。実際にどんなことが起こったのかはそこにいなかったぼくらには分からないけど、上様がナンマンダブナンマンダブってなんか訳分からないことをうわ言のように言ってたからきっと怖かったんだと思う。
というか上様も危なかったらしい。ただ、葛葉が、暴言吐いた篝火さんに自ら座を降りて頭を下げたのを覚えていたみたい。それで保留になったんだって。危なかった。
戻ってきた時の第一声がフェザーの
「よお、主様、で、どこから亡ぼすよ?」
だったのに、その議場に居た王様達がみんな震え上がっていたよ。
よくよく話を聞くとゲス野郎は領土欲に燃えるナントカ帝国、魔の領域を認めないナントカ法国、財宝や奴隷を欲しがってるナントカ王国の三つ。それぞれ、チビ、ハゲ、デブ。もっと言えばチビはブリジット、ハゲはエリン、デブは葛葉が欲しいとか言ってたヤツね。
「さて、じゃあ帝国は妾が貰おうかしら」
「うちは王国やねえ。まあうちらの地元からそこまで遠ないからええんやけど。細かいんは天空狐に任せよか」
「私、法国? いや、要らないんだけど」
「法国は私が担当します。ええ、我らが父の名のもとにしっかりと導いて差し上げますとも!」
なんかマリーから怒気が噴き出していた。なんでかなあ? いやまあそんなに気にしなくてもいいと思うよ? 一人だけ選ばれなかった訳でもないし、ほらフェザーだって。だいたい洗濯板みたいなマリーが……痛っ、痛い痛い痛い痛い!
「ラビ? ちょっと私とオハナシしませんか?」
「え、遠慮していいですか?」
「拒否権は、あると思います?」
みんな、ごめんよ。ぼくの旅はここで終わりのようだ。長い間ありがとう!
赤くて三倍速いホーンラビット ~完~
って、勝手に終わらせないで! ともかく、それぞれが王様連れて帰国したらしい。上様はモンドさんと一緒にヴリトラが送っていった。ついでに旅籠の掃除してくるんだって。もしかして、ヴリトラって家で掃除とかやらされてる? 今度ティアマトさんに聞いてみようかな。
で、他のみんなはそのままグレンについてくるみたい。指名手配とかされない様にはなってるみたいだけど、万が一って事もあるからね。とりあえず故郷まで一旦戻ろうって話になったんだ。
これからはぼくらが一緒に旅をする。グレンと離れて色んな人にあって、色んな経験して、そして別れて。苦しくて晶龍君が居なかったら詰んでた場面もあったんだけど、グレンと一緒ならまた違う景色が見られるよね。
さて、まずは行きたいところがあるんだ。ミネルヴァっていう森の主がね。そんな事を話しながらぼくらは王都から旅立った。
それから北の森でミネルヴァに会った。会うなりぼくを見て笑ってくれたけど、なんかエリンに平伏してた。えっ、もしかしてエリンの手先だったの? あ、違う? 手先というより仲間みたいなもの? まあいいよ。ぼくが無事だったのはエリンのお陰だったのかよ。
そこから街の方に行く。街には牛さんと牛さんと一緒に居た女の子がいた。お母さんらしき人物からミラちゃんと呼ばれていた。牛さんに近付き話し掛けると向こうもこっちを覚えてくれていた。でも雄牛さんのところに連れて行ったんじゃ?
「私はこの子のそばを離れたくなかったんだよ。それで戻してもらったのさ。旦那の方もほら、一緒だよ」
よく見たら柱の陰に隠れるように雄牛さんの姿がある。ワシさんはぼくらと一緒だったから鷹君が頑張ったらしい。雄牛さんはぼくに合わせる顔がないと恐縮してたが大丈夫だと笑ってあげたよ。
そらから街を出て牧場のある村の方に行こうと思ったけど、なんか寒気がしたのでスルーすることにした。身の危険を感じたんだよ! ぼくだけじゃなくてきっとグレンも危ないはず! よし、次は砂漠の街ホーレイだね。




