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第196話:ものども、出合え!

アスタコイデスさんはラビ君を信じます。冒険者だもん。

『世界の王を名乗る者たちよ』


 ぼくは精一杯ドスをきかせた声で喋りだした。ううっ、ぼくの声は少し高いテノールってやつだからアニメ化したら女性声優さんがやるんだろうな。いや、なんだ今のは。ともかく! なんというか迫力に欠けるんだよ。やっぱり身体が小さいからかな。


『魔のものたちの領域までも侵攻しようとは浅ましいことだ』


 シーンとしてる会場。

 返答はかえってこない。こいつら、いざとなったら黙りか?


 ってなんか将軍サマが口をパクパクしてる……あっ、そうか。喋りたくてもぼくの恐慌のオーラで口すら動かないのか。


 仕方ない、少し緩めよう。ぼくは赤いオーラの出力をかなり下げた。はぁはぁと呼吸をやっと取り戻したかのように……って喋れないだけじゃなくて呼吸も出来てなかったの? あ、話聞いてた? それどころじゃなかったかも。


「おい、なんなんだ、これは。聞いてないぞ! 捕まえろ!」


 怒気を孕んだ叫びが部屋に響いた。兵士は誰も動かない。そりゃあそうだ。ぼくが緩めたのは王たちの拘束だからね。


『お前うるさいな。ちょっと黙れよ』


 ぼくは散々騒いでるその王、デブ野郎を少し強く締め上げた。呼吸を意図的に困難にする。やり過ぎると死んじまうからなるべく手加減はしといた。殺しちまうと問題になりそうだからな。


 まあ世界中と戦争になってもグレンとオレのコンビならなんとかなるだろ。どうせみんなこっちにつくんだし。


「かはっ、ゲホゲホ、はぁはぁはぁはぁ」

『身の程ってのがわかったかい?』

「バケモノめ! ええい、何をしておる! 魔物だ! 魔物が現れたぞ! やはり勇者グレンは魔王の手先に成り下がったのだ!」

「傭兵を、騎士を、冒険者を呼べ!」


 各王がそれぞれに叫んで人を呼んでくる。先ずは真っ先に駆けつけた近衛騎士団。どこの国かは分からないが、ハゲ野郎が喜んでいたのできっとそこのやつだろう。


 真っ白なプレートメイル着ちゃって、重くないのかね。フルプレートで動くのは至難の業だと思うんだよなあ。だけど、オレの恐怖は鎧じゃ防げねえ。


 ガシャンガシャンと音がしてほぼ全員が膝を着いた。一人だけ、騎士団長なんだろうか、根性ありそうなのが残ってる。


「我ら、テンプル騎士団ナイツは人類の最後の砦! この様な魔物に……」


 いや、最後の砦ならグレンに討伐任せないでお前らが出て行けば良かったじゃんよ。とりあえず蹴り入れとくか。はい、御苦労さん。


 次に上がってきたのは傭兵集団。こいつらは魔物相手は慣れてないみたいで、ぼくの顔を見るなり、ホーンラビットかよ!とか大笑いしていた。


 いや、お前らさ、各国の王が手がつけられなくてお前らを呼んだ非常時にそんなアホな事が言えるなんて頭悪すぎんか?


 案の定、数人の傭兵を除いてばったり動かなくなった。数人の傭兵はどうしたかって? 状況判断が出来る奴らだったみたいでオレと目が合うなり逃げていったよ。ああいうのが生き残るんだよな。


 最後に来たのはこりゃまた厄介な奴らだ。アスタコイデス、赤を初めとして、白も緑も揃い踏みだ。黒のデンティフェルは居ないけどあいつは荒事苦手だもんな。


「魔物はどこだ? ん? ラビ君?」

「あ、本当だ、ラビ君だねぇ」

「何をやっておるのだ?」


 三人は入ってくるなりキョトンとしていた。敵対心がないから恐慌は飛ばしてない。というかアスタコイデスは別の意味で恐慌飛ばしてた方がいいかもしれないんだが。


「おい、何をしている、冒険者共! そいつを倒せ!」


 必死に声を枯らして叫ぶチビ野郎。あれも王様なのかよ。


「この者たちが、魔王の手先だと?」

「当たり前ではないか! 我らは動けなくなっておるのだぞ!」

「いえ、手前共は別に。なあ、ラビきゅん」

『あんただけは拘束しといた方が良かったぜ、アスタコイデスのねえさん』

はすっぱな喋りのラビきゅんもまたいいものだな!」

『人の話を聞けって教わらなかったか?』


 アスタコイデスのねえさんと喋ってると疲れるぜ。まあデンティフェル嬢よりかはマシだけどよ。


「あのさ、赤、あんた、そいつの肩持つつもり?」

「当然だ! ラビきゅんと戦うなどとんでもない!」

「はあ、白は?」

「ふむ、ラビ殿と戦うのも気が進まんし、グレン殿には助けられた。どちらに着くかなぞ、根無し草の我らには」

「確かにね。ラビ、あんたのご主人様を拘束してるのはその首輪だよ」


 緑のハスタートって痴女が教えてくれる。そういや制約の鎖がどうとか言ってたな。なるほど。でもオレは物理破壊は苦手なんだよなあ。


「連れてくればデンティフェルが、黒のヤツが解除してくれるさ」

『マジかよ!? スゲェんだな、あの嬢ちゃん』

「嬢ちゃんとは言ってくれるね。まあ私がなんと呼ばれるのかは気になるとこだが。攫ってしまうか」

『ああ、じゃあここの奴らはもう用済みだな!』


 オレは赤き恐慌のオーラを気絶するまで高めた。あ、将軍サマは別に演技しなくてもういいぜ。

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