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第191話:魔天使ルシファー(ルー・サイフィス視点)

まあルシファーさんの最後がラビ君が首スパーンじゃどうかなと思ったので天界引っ張り出しました。

 私は我が魔剣、サイファーフォースを振り上げた。この剣は私が天界にあり、神に反旗を翻した時に私と共に堕ちてくれた聖剣だ。今は魔剣と呼んでいるが、ミカエルの剣にも負けてはいないと自負している。


 そして、剣技においては、ミカエルなどの一流どころと比べれば不利になるかもしれんが、それでも十分な強さを誇っている。第一、ミカエルとの差もほんの僅かなものなのだ。


 その私が、目の前にいるホーンラビットを切り殺せない。いや、確かに奴は言った。アルミラージと。その瞳に捉えられた瞬間に、全てを刈り取られると言われた獣。


 私は、アルミラージという獣は精神支配、精神操作系の魔物かと思っていた。実際のアルミラージは根源的な恐怖。抱いた事のある恐怖という感情を私の前に叩きつけるのだ。


 思い出したのは天界にあった時。天界一武道会なるよく分からん催しで、私はミカエルと決勝でぶつかった。その前に私がウリエルとぶつかって消耗していなければ十分な勝ち目はあっただろう。だが、疲労が抜ける暇もなく私は一撃で地面に突っ伏したのだ。


 あの時の屈辱! ウリエルにしても攻撃の威力とタフさだけが取り柄で避けたり受け流したりするのに苦労しただけの事。まともに戦えば。


 そう思い私は神へと反旗を翻した。神がミカエルびいきだったから、というのも間違いでは無い。だが、私の方がミカエルよりも上だと知らしめねば、天使長の座を競り負けてしまうからだ。何より、あのメタトロンが次期天使長にミカエルを推したというではないか。現天使長が推したからとてそのまま即天使長という訳では無い。だが、限りなく近付く。


 私の叛乱にベリアルを初め、天界の主流から漏れていた実力者の天使たちが集まり、天の三分の一が割れた。有象無象の三分の二と精鋭揃いの三分の一。数の上では不利かもしれんが、勝機はある。


「ルシファー、他の人を巻き込まないで、ぼくとあなたで一騎打ちをしましょう」

「おおよ、望む所だ。後で吠え面かくなよ」


 そして私とミカエルは剣戟をぶつけ合った。精根尽き果てるまでなどというが、百日経てど、二百日経てど、決着が着く気配がない。何度も何度もトドメを刺しにいくのだが、のらりくらりとかわされる。


 いい加減飽きてきたんだが。ミカエルの攻撃は品がない、技がない、パターが多くない。力任せに振り下ろすだけだ。


「ミカエル、この一撃で終わりだっ!」


 私がミカエルを真っ二つにしようとして、その横にあった雲を引き裂いた。果たして、その雲が雷雲だったなどと言い訳にもならない。私の手はほんの一瞬痺れ、手が止まった。


 それからミカエルに隙をつかれて地上へと落とされ、この地上に降り立ったのだ。今、頭の中に色んな場面が浮かんだのは走馬灯というやつだろうか。


「叩き切る!」


 そうして私は剣が全く動かない事に気付いた。指すらも動かせない。これか根源的な恐怖! 神をも恐れぬこの私が何を恐れたというのだ? そうか、ミカエルだ。やつさえ居なければ。


「おい、ミカエル、聞こえているのだろう。この私と勝負しろ!」


 天空に向けて喋り出す。ホーンラビットの奴はびっくりしていた。声を出すことさえ出来ないだと? 確かに恐怖の段階が低いとはいえ、声さえ発せられなくなるつもりだったと。

「ミカエル! どうした? この私に恐れを生したか!」

『ルシファー、久方ぶりの再会になるね』


 天から聞こえてくる声は間違いなくミカエルのものだ。


「おお、逃げなかったか。ちょうどいい。我が剣の糧としてくれよう!」

『それは真っ平御免だね。こう見えてぼくも忙しくてさ。代わりの相手は送っておくよ』

「ミカエル! 貴様!」


 ミカエルが姿を消して、天から降りてきたのはサンダルフォン。天界の武闘派だ。


「貴様までがミカエルに屈したか、サンダルフォン!」

「私は天の座に興味は無い。ここに来たのは我が職務だからだ」

「職務、だと?」

「その通り、元熾天使、ルシファーよ。貴様を神への反逆の罪で、第五天マティへの幽閉を命ずる」


 そうか。罪を犯した天使の行く末はこいつの支配領域である第五天へ。そう簡単に捕まってたまるか! とは思ったが、身体は未だに動かない。そうだ、あのホーンラビット、いや、アルミラージだ!


「きぃさぁまぁ!」

「地獄よりも厳しい場所なんだってな。あんたにゃそこが似合ってるかもだぜ? 良かったじゃねえか」


 サンダルフォンが手を挙げるとどこからともなく無数の炎を纏った天使が現れ、次々と私に襲いかかる。最後にサンダルフォンがその巨体から凄まじい一撃を加えるのと私が意識を失ったのはほぼ同時であった。


「協力感謝する、アルミラージ」

『ひゃー、おっかねえ。あんたの敵でなくて良かったと思ってるぜ』


 そんな軽口が私の地上での最後の記憶だった。斯くして私は第五天マティで天使としての権能を剥奪され、グリゴリ共の仲間として生かされている。

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