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第188話:魔王城で一回以上おやすみ(リリティア視点)

リリティア様翻弄される

 ゲオゴールに抱えられたまま、ボクは城の中を歩いていた。こいつは昔からそうだ。早とちりが酷いのだ。


「彼らはゴミじゃありません」

「分かっております、分かっておりますとも。ですが、今は魔王様もお待ちですから謁見の間へ」


 そう言われて廊下を歩く。謁見の間はしょっちゅう父上のところに遊びに行っていたから場所は分かる。兄上に代替わりしてからは足を踏み入れてないけど。


 目の前に重く荘厳な扉が現れる。扉の前で待機してるはずの騎士が居ない。いつもはそいつらに開けて貰うんだけど。とか思ってたらゲオゴールが開いてくれた。


「陛下、陛下は居られるか? リリティア様をお連れ致しましたぞ!」


 謁見の間にはボクとゲオゴールの他には壇上にいる兄上とその側近のルー・サイフィスか居た。そして周りにはルーの配下の護衛兵団が居る。とても不気味な奴らだ。


「リリティア、戻ってきたのか」

「兄上! お母様は」

「ふん、あんな女など知るか」

「兄上!?」

「控えなさい、リリティア。いくらあなたが王妹とはいえ、ベール様に逆らうのは許しませんぞ」


 横からルーが口を挟む。兄上は王位に着いてからこんな風に変わってしまった。昔は仲良くしてくれたのに、可愛がってくれたのに、お母様を慕っていたのに。


 兄上のお母様、御母堂様は兄上を産み落とすと共にその命を果てさせたので、兄上は母の温もりというものを知らない。兄上がそれを与えてもらったのはお母様なのに。


「それよりリリティア、もう戻ってくるなと言ったはずだが?」

「そんな、お母様を置いていくなんて出来ません!」

「やれやれ、あんな人間の何が良かったんだか」

「お母様はお母様でしょう! 兄上はなんで、お母様の事を忘れているんですか!」


 ボクの言葉に兄上は頭を抑えた。それは違和感。そういえば王位に着く前から頭の痛みを訴えることがあった。もしかして兄上の態度は病のせいなのだろうか?


「兄上、思い出してください! お母様の事を、優しさに満ちた日々の事を!」

「うっ……ムゥ……」

「そこまでですよ、リリティア様」


 そう言って遮ったのはルーのやつ。やつは自分の黒メガネをクイクイしながら言う。


「リリティア様が陛下の命に逆らい、街に戻ってきましたが処断が必要では?」

「ルー、貴様」

「おおっと? 私は陛下に法律を守っていただくように言っているだけですよ?」


 魔王陛下への反逆罪は即座に処刑出来る。これは兄上が魔王に就任した時に同時に施行された決まりだ。あの兄上がこんな専制政治を敷くなんて思ってもみなかったんだよね。


「ルー! お前が、お前が兄上に何をしたんだ!」

「さぁてね。さあ、ゲオゴールよ、リリティア様は長旅でおつかれだ。粗相のないように部屋に閉じ込めておけ」

「御意」


 ゲオゴールもルーの言葉に従っている。なんだろう、この嫌な感じは。ボクはゲオゴールに抱えられ、自分の部屋に閉じ込められた。


 ボクが使っていた頃のまんまで、メイドたちが頑張ってくてたんだろうなって思う。でも、ボクはお母様を。


「リリティア様、お久しゅうございます。オニキスです」

「オニキス! お前も息災だったか?」

「はい、リリティア様亡き後、お母様のリリン様の世話をさせていただいておりました」


 ええっ、っと大きな声が出そうになった。まさか、手がかりがこんなところに。それでお母様はどうなったのだろうか?


 ボクが聞くとオニキスは悲しげに目を伏せた。ま、まさか、お母様は既に?


「ああ、いえ、生きてはおられます。ですが、北方の氷獄の再封印の為に生贄として出発したところで」


 そんな! 私の顔は青ざめた。私が家出する直前に兄上から申しつかった役目だった。もちろんボクはそれが嫌で逃げ出したのだけど、お母様が代わりになるだなんて。


「こうしちゃいられない。直ぐに追いかけなきゃ!」

「ダメですよ、リリティア様。この部屋から出すなとルー様のお達しです」

  「ルー!」


 どうやらメイド達にも手が回ってるよう。そりゃあそうだ。あのルーが宰相として兄上の傍に侍るようになってから色々おかしな事が続いていた。それが全て仕組まれたとしたら。


「力づくでも通ります」

「おいたはいけませんよ、リリティア様」


 オニキスはニヤリと笑うと懐からナイフを取り出して、顔の前に構えた。あれ、もしかして、こいつオニキスじゃない?


「あなた、オニキスじゃないのね。オニキスはどこ?」

「へぇ、バレたんだあ。私としたことがしくじったなあ。ルー様に怒られちゃう」


 そう言ってオニキスだったものはぐにゃりと形を変える。姿は美人の女性だが、肌が鱗に覆われている。うわっ、気持ち悪い。


「我が名はガプラ。こうなったら仕方ない。あの女と同じ様に頭の中をいじくってしまいましょう!」


 どうやらまたひとつ聞かないといけないことが増えた。のはいいんだけど、ボクじゃなんとも出来ないよ。ダレカタスケテー。

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