第186話:ブリジットの本気。引きちぎられる窮奇。
窮奇戦で一話使っちゃった。
窮奇というやつがブリジットと相対した。窮奇は「ひと呑みだべ!」とかいきまいてるけどブリジットはイライラしてるみたい。どうやらリリティアに対する疑惑があるのにややこしい事になったからだと思う。
「遊んであげるわ、三下」
右脚を前に出して指でクイクイと相手を挑発する。そういうのは足がスラリと長いブリジットには良く似合うと思う。
「ぶっ殺してやるだよ!」
そう言いながら突っ込んでくる窮奇。ブリジットはため息を吐くと窮奇の横っ面を殴り飛ばした。
「へぶぅ!?」
あまりの剛腕に窮奇の身体は横にスライドする様に吹っ飛んだ。
「なんちゅう威力だべか」
「次は星まで飛ばすわよ」
「そりゃあ勘弁だべ。くわばらくわばら」
そう言いながら距離をとる窮奇。どうやら接近戦はヤバいと気付いたらしい。窮奇の周りに風が集まってくる。
「疾風飛燕流舞!」
吼える様に窮奇が叫ぶと窮奇の周りに集まった風が一斉に刃となってブリジットに襲い掛かる。無数の風の刃をブリジットはかわそうとしない。
ズバズバとブリジットの身体に傷がついていく。うわぁ、ブリジットが血を流したのっていつぐらいぶりに見たのやら。
「どうだ! かわせねえが。これがオラの必殺技だべ!」
切り刻まれたブリジットを見てはしゃいでる窮奇。もしかしてあの程度で勝てるとでも思ってるんだろうか。
「あーあ、まあ妾の身体に傷を付けれた事は褒めてあげるわ。でも、この程度の傷では死ぬどころではなくてよ」
「心配しなくても良い感じに切り刻んでから食ってやるだ」
そう言って窮奇はペロリと舌なめずりする。
「おめぇはどんな味がすんだか楽しみだべ」
「妾の様な高貴な肉体は食べ慣れないでしょう? お腹壊すでしょうね、きっと」
「今まで何食っても腹壊したこたぁねぇだよ!」
再び風の刃。襲い来るそれをまたも避けようとしないブリジット。さっきと違う事と言えば身体の周りに何か赤い飛沫が飛んでること。あの赤い液体はブリジットの血かな?
「もう良い。見飽きたわ。他に芸はないのかしら?」
風の刃はブリジットに届く前に叩き落とされた。何をやったのかは多分だけど、あの周りの血を使ってやったのだろう。
「じわじわ切り刻んでやろうかと思ったがやめだべ。先ずは一突きでぶっ殺してやるだよ!」
そう言うと窮奇は周りの風を集めてドリル状の何かを作った。
「螺旋破岩撃!」
渦巻く風のドリルがブリジットを襲う。ブリジットはその風を徐に掴んだ。素早く、じゃないんだ。とてもゆっくりした動きだったよ。
「はぁ、こんなもので殺せると思われるなど、妾も随分と舐められたものよ」
ブリジットが憂いを帯びた表情を見せる。騙されてはいけない。あれは思ったより弱くてつまらなかった的な顔だ。
「仕方あるまい。そろそろよかろう」
ブリジットが風のドリルを握り潰した。そしてゆっくりと窮奇に向かって歩いていく。窮奇は驚きながらも風の刃でブリジットを攻撃していた。
ブリジットはその全てをその身に受けた。時折、お気に入りの服なのだけどとか呟いていたが、その服は自分の血で作ったやつだよね?
「つ、か、ま、え、た」
窮奇の側まで行ってブリジットはニヤリと笑いながら言った。掴んでるのは二つの羽根の根元。それを引き剥がす様にブチッとちぎった。
「ぐおおおおおおおお!?」
窮奇が単なる虎みたいな感じになったところで地面を転がるそいつを踏み抜く。ぐしゃりと音がして臓物が弾けた。
「おぶぶ、おぶっ」
「あら、まだ動けるのね。これはびっくりだわ。どれくらい細切れにすれば動けるかしら?」
楽しそうにクスクス笑うブリジット。守りたい、その笑顔。ぼくらに向けられないように。
しばらくはぶちりぶちりと音がして、その度になんか悲鳴のような断末魔のような声を上げていたがいつしかその声も聞こえなくなってしまった。
「あら、いつの間にやら動かなくなってしまったわ。毟るのに夢中になり過ぎたかしら」
「ブリジット、その、真っ赤だからどこかで水浴びでも」
「あら、グレンが妾を洗ってくれるの?」
「洗いません!」
真っ赤になってそっぽを向くグレン。そういうとこだと思うよ、うぶな振りしてブリジットの破れた服から見える柔肌……いや、硬い肌? まあどっちでもいいか。をチラチラ覗いてたの、ぼくには分かってるからね。
あ、返り血は全部シルバー爺が洗い流してくれましたとさ。しかも無理やり。
窮奇を倒してしばらく進むと街道に出た。この街道が恐らく城下町に続く道なのだろう。リリティアも城下町が近くなると不安そうにグレンにしがみついてるし。
そんな感じで城下町まで後少しというところまで来たので野営は飛ばして急いで街に入る事にした。いや、入れるかどうかは別としてだけど。




