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第183話:モルグールの現状

もう少しこの街で騒ぎを起こして行きます(笑)

 酷い目にあった。ぼくは嫌だって言ったのにグレンが捕まえてぼくをゴシゴシ洗うんだ。そりゃあまあ長らくお風呂入ってなかったから汚れてるかもしれないけど、水浴びはしてたんだよ? でも毛の間に汚れがってゴシゴシされた。換毛したら汚れも取れるって!


 いやまあ確かに上がったあとはさっぱりしたよ? でもね、ぼくが洗われてふわふわもこもこしてるとね、抱き上げにくる人が増えるんだよ。特にマリーとブリジット。葛葉くずのはは巫山戯てまざるんだけど、エリンがやれやれってけしかけるし。いや本当に散々。


 グレンに抱きかかえられて食堂へ。女将さんのミコノスさんがぼくを見てあっ、とばかりに気まずそうな顔をした。なんでかなって思ったら


「あ、ああ、その、今日のメインディッシュは子兎の塩焼きなんだよ」


 あ、なるほど。ぼくがいるから子兎料理はまずいと思ったのか。大丈夫です。お構いなく。ぼくは普通に食べますから!


「大丈夫です。うちのラビは普通の子兎では無いので」

「そうかい? まあアタイらも牛の肉食べるしねえ」


 どうやらミコノスさんは納得したらしい。別にぼく自身に美味しそうみたいな視線を向けてこなければ食べるのには構わないよ。


 というか子兎肉を食べてるぼくを不思議そうな顔で見てるミコノスさん。いや、なんも不思議はないよね? というかミコノスさんも肉食べるって言ってたし。


 そう、これから先は戦いが激化するだろうから肉を食べてエネルギーを保存しとかなきゃいけないんですよ! まあ

 この街に入ったら本当に激化するのか疑問に思えて来たけど。


「それじゃあある程度腹もふくれたみたいだからこの街について話してあげようかね」


 と言ってミコノスさんは話し始めた。この街はミナサノールを攻めるための前線基地として使われていた。長い間、この街に常駐してる魔王軍の幹部もいたそうだ。


 だが、いつまでもミナサノールを奪取できないそいつに魔王様が罰を与えて四天王から追放したそうな。で、代わりに四天王になったのが、オヅヌ。


 オヅヌはこの街に来ないで直接ミナサノールを陥落させたんだと。それでこの街が宙ぶらりんになったんだって。


 そもそもこの街に住む人たちは魔王城の城下町では暮らしづらい、人間と友好結ぶのも悪くない派閥の人と、魔王城で何らかの失態をして都落ちした派閥の人。いわゆる落ちこぼれであるそうな。


 それを聞いて門番の人やミコノスさんがフレンドリーである理由がわかった気がする。なんで人間と友好関係をって話かと言うと、人間のもたらす料理などの文化や発明品が便利だからなんだと。まあそうだよね。こんな街まで築いてるんだもん。


 この街も元は人間の協力で建てられたらしいし。大通りとか案内板とかはその名残らしい。馬車が走ってないのは馬車が壊れて修理できなくて無くなったからだそう。


「まあアタイも料理は人間の女に教えてもらったからねえ。あの子はいい子だった」


 出会ったのは今から百二十年前なんだって。ミコノスさん、割と長生きなんですね。ミノタウロスやホルタウロスは五百歳まで生きるらしいからまだまだ若造だって言ってた。十分だと思います。という事は分類的には若女将なの?


「それで、あんたらはどうすんだい?」

「このまま魔王城の城下町に向かおうと思います」

「そうかい。だったらまあ注意するんだね。人間排斥派閥の奴らがいるから」


 ああ、さっき言ってたもう一方の方か。都落ちした落ちこぼれだから平気かなと思ってたんだけどそうでもないみたいだ。


 西の大通りの方に親人間派がわりとかたまってるんだけど、東の奴らを進入禁止にする訳にもいかないからそこらの裏道に潜んでたりするんだって。


 まあともかくぼくらはこの街、というかこの辺りで補給をなんとかしないといけないからね。ミコノスさんに紹介してもらったお店を大通りで回る事にする。だいたいの店がフレンドリーに接してくれてぼくにクズ野菜をくれたりした。とてもいい人だしとても美味しかった。


「見せもんじゃねえぞ!」


 そんな怒鳴り声が聞こえたのは大通りから少し入ったところの薬屋に行く道筋である。というか目的地の薬屋みたいなんだけど。


 何人かの男たちが真ん中にいる少女と言って差し支えない年齢の子を足蹴にしている。その顔は苦痛に歪んでいる。


『グレン』

「ああ、行こうか」

「いや、行こうかじゃないですよ。別に助けなくても良いでしょうに」

「マリー、君がそんなこと言うとは思わなかったな」

「いや、だってあの子、悪魔ですよ?」


 何気にぶっ込んできたな。でもグレンには助けない理由にはならないと思う。見た目は普通の人間だし。周りを囲んでいるのは体格のいい男ども。キツネ顔のいやらしい笑いを浮かべた男が指示者だろう。ぼくらはそいつらに近付いた。

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