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第181話:魔都モルグールへ

キツネの油揚げは元は畑を荒らすネズミを捕らえてくれたのがキツネだったのでネズミを揚げたものを油揚げとして供えていたそうな。今の油揚げになったのは仏教伝来で殺生は良くないとなってからだとか。

 昨日はグレンと話をした。定位置に座ったのは久々だったけど、あそこが一番いい場所でいい眺めだ。なんて言ってたら鷲君が拗ねてしまった。いや、いい眺めってのは見晴らしって意味じゃなくてね?


 ぼくらは魔都モルグールに向けて出発する事にした。メンバーはうちのパーティだけだ。アスタコイデスさんたちはまだ修行しないといけないと思ったらしい。道道修行すればいいと思うけどな。


 ミナサノールから先は道があまり整備されてない。いわゆる自然に出来たけもの道みたいなものだ。当然ぼくらの進む道もそんな感じなんだけど。通り道にある石とか木の枝とかそういうのを、シルバー爺が全部洗い流して道を綺麗にしてしまった。普通なら進むのに乾くのを待たないといけないのだけど、フェザーが道を乾かしてくれた。二人は道路工事士なの?


 ミナサノールを出てもそう簡単に魔都に着く訳もなく、ぼくらは森の中で夜営をする事になる。ぼくの食事はその辺に生えてるからいいんだけど、肉食獣が多いからなあ、うちは。まずブリジット……あ痛て!


「だぁーれぇーがぁ、にく、しょく、けい、ですって!?」

『肉食系じゃなくて肉食獣だよ! 痛い痛い!』

「同じどころかもっと悪いじゃない! 訂正しろ! 妾のイメージに関わるわ!」

『やだよ、だってブリジット、血を飲んでるじゃないか。肉食獣じゃん』

「吸血衝動と食事を一緒にするな!」


 どうやらブリジット曰く、それはそれ、これはこれ案件らしい。デリケートな問題だから除外。


 マリーは肉食獣というより甘いものしか食べない。頭の中がマシュマロで出来てるのかもしれない。あ、でもお酒は飲む。


「ラビきゅん?」

『ホントの事でしょ?』

「あのー、お酒を飲んでることはご内密に」

『いや、もう遅いでしょ。戒律で飲んじゃダメって設定だっけ?』

「そうなのよ、別にそういう風に人間に言ったつもりないのに」


 まあ、その辺は人間の判断なんだろうね。酔っ払うほどに飲んじゃダメってのが後半の飲んじゃダメしか伝わってなかったり。


 葛葉くずのははまごうかたなき肉食獣である。というかキツネは肉食獣だよね。何故か油揚げが好きだっていう風に誤解されてるらしいが肉も酒も大好きでよく食べる。


「食べる阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら食べにゃ損損、言うてな?」

『なんか違わない?』

「ええんや。食べんと腹がふくれんやろ? ほら、篝火かがりびも食い意地はっとったやん?」


 そういえばそういう人もいたなあ。今頃はどの辺だろうか。マリエさん共々元気にしているといいのだけど。


 フェザーさんは肉は食べるけどアルコール、酒だけあればいいらしい。なんでかって? よく燃えるかららしい。てことは木材でもいいの? 謎だ。


 エリンはお肉は一切食べない。エルフだからから? 栄養は木の実とか土から貰うとか言ってた。もしかして土に埋めたら芽が生えて来たりするのかね?


「ラビが埋まりたいなら付き合うよ?」

『……いえ、遠慮しときます』


 シルバー爺、ヴリトラ、ブラン、ノワールはみんな肉食だ。というより肉しか食べない。いや、ブランはたまに木の実とかも食べるか。


 で、グレン。お酒は飲めないけど、肉は食う。と思ったらお酒飲めるようになってる! なんで!? 詳しく聞いたらなんか勇者認定されて宴会の場に呼ばれてたんだとか。いや、魔王軍四天王との戦いもあるのにそんな事までしてたの? あ、ご当地の領主が御礼で開いてくれたのね。で、酔っ払うと娘を押し付けられるから頑張って耐えた、と。うんうん、後が怖いもんね。


 あ、ぼくは別に人間のお嫁さんが一人ぐらい居てもいいと思うよ。だってほら、うちのメンバーたちじゃ気苦労も多いだろうし、第一子ども作れるか分からないじゃん?


 えっ? ぼくのお嫁さん? うーん、なってくれる子いるかなあ? というかまずは同類を探さないと。ホーンラビットじゃダメかもしれないし。それにぼく、性欲とかあまりないんだよね。なんでだろ? ホーンラビットは年中発情期って言われてるのにぼくには来なかったんだよね。


 そんな感じで夜も更けて、眠りに就く。見張りはブリジットとエリンが買って出てくれた。どっちも眠くならないんだって。エリンは日頃寝てるような起きてるような感じだから分かるけど、ブリジットは大丈夫なのかな? 起こすまで寝溜めしてたのかな?


 夜の間も魔物は何匹か寄ってきた様だが、ブリジットとエリンで何とか出来る程度だったんだって。いや、というか森の中なんだからエリンに勝てるやついるの? ヴリトラとシルバー爺がまとめてかかっても厳しくない?


 そうして一週間も歩いていい加減、ご飯に使う肉が多すぎてぼくまで食べる羽目になった頃、向こうの方に森が拓けて城壁らしいものが見えた。恐らくあれが魔都モルグール。魔王軍の前線基地だろう。

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