第178話:フィニッシュ・ホールド
やはりラストはフロントネックチョーク
ぼくたちのいる噴水広場にみんなが集まってくる。先ずはヴリトラ。暴風の扱いには慣れてるって、それって夫婦喧嘩の時の……まあいいや。ティアマトさんには言わないでおいてあげよう。
次に来たのがフェザー。そしてイフリートのおじちゃん。まだ焼きムラがあるけど、だいたい焼けてた。で、残ったのはシルバー爺が全部押し流し。日頃は後片付けが面倒だから使わないって言ってたのに。まあ害虫駆除だからいいのか?
次に駆け込んで来たのは葛葉。かなりテンションが上がってたから相当頭にきてる。おっぱいぷるーんしてるのもお構い無しだ。
そしてマリーとブリジットが同時に登場。って事はあの鬼たちは倒されたんだね。やっぱり鬼としての年季が違うよねーってなんか寒気してきた! いや、違うよ? 決してマリーとかブリジットが鬼って言ってるわけじゃなくてね?
そしてぼくらが陣とかいう技に囚われていた時、後ろからエリンが攻撃してくれた。なんだろう、ヒーローは遅れてくるってやつかな? 一緒にノワールやブランも居るみたい。
どうやらみんな無事な様だ。さすがぼくの仲間たち。いや、元仲間かな? ぼくは追い出されたもんね。
そうこうしてると漂っていた不気味さが薄れて来た。向こうから晶龍君が走りながらピースしてる。パイリンさんと手を繋いでるというか手を繋がされてるというか。パイリンさんの逆の方の手にはリンファさんの手と繋がれている。みんな揃って無事だ。
そしてよろよろと赤い鎧のアスタコイデスさんが仲間と肩を組んでやってくる。ハスタートさんとミラビリスさんだったな。みんな生きてるみたい。
オヅヌは完全に計算違いだろう。いや、本人は自分一人でも十分と思っているのかもしれない。一人はやっぱり寂しいと思うな。
「くっ、饕餮よ、出でい!」
出て来たのは牛の体に曲がった角、虎の様な牙、爪と顔は人の物だ。そんな怪物である。
「ほほほ、饕餮はなんでも食べるでおじゃる。貴様らも全て食べられるでおじゃるよ!」
ぼくが前に出る。相手が饕餮だろうが西鉄だろうが関係無い。なぜならぼくはアルミラージだ。今なら分かるよ。ぼくはこいつよりも格が上の存在だ。
「おい、饕餮とやら、ぼくが何者かわかるか?」
「ぐるるるるる」
「わからんならそれでもいい、だが、ぼくたちに牙を剥くと言うなら、ぼくが相手になってやるからな!」
ぼくは饕餮を睨みつけた。ぼくの睨みにどれほどの価値が有るのかは分からないけど、饕餮は明らかにビビってる。口から炎を何発も生み出してぼくにぶつけてくる。そんな炎が今更効くものかよ。ってアチチチチ! クソ、熱かったぞ? あ、あのオヅヌの結界で強化されたのかな?
「グオオオオオオオ」
今度はちゃんとやる。ぼくは饕餮の手足を赤いオーラで縛った。いわゆる恐怖心を饕餮一人に集中した形だ。逃がさないからな!
饕餮がその大きな口を開けてぼくに噛み付こうとする。なんでも食べるというその口はまるでブラックホールだ。ぼくは上顎の辺りにツノをしっかりと突き立てた。
ツノの先端が空気に触れる。おそらくは貫通したんだろう。ズルりという感触がして、饕餮が地に倒れ伏した。
「と、饕餮までもが!」
「オヅヌ! お前の悪事もこれまでだ! このぼくがお前を倒してやる!」
「ほほほ、できると思うてか! 斬ることも、突くことも、叩くこともまろには通じぬぞ!」
グレンが剣を握ってダッシュする。オヅヌは符を次々と飛ばして来るが、それは全てみんなが叩き落としていた。
グレンがオヅヌに肉薄する。剣を上から袈裟斬りに振り下ろす。もちろんオヅヌには傷一つつかない。
「無駄でおじゃるよ!」
符から爪のようなものが出てグレンを襲う。それはブランが叩き落とした。いや、さすがだよね。スピードで言えばぼくより速いもの。
「これなら!」
「無駄だと言うたぞ!」
今度は突きに切り替え、突こうとするが、何かに阻まれる。オヅヌの攻撃を今度はノワールが弾く。負けてられないにゃーとか言ってんだろう、多分。やる気出せば強いのになあ。
「これでどうだァ!」
「だから無駄だと」
刀を捨ててグレンは拳を握り締める。オヅヌは避けもしない。その拳はオヅヌに当たることなく、頭のそばを通り抜ける。と、その腕が軌道を変えてグレンがオヅヌの首を捉えた。
「グッ、貴様!?」
「やっと捕まえたぜ、オヅヌ!」
グレンはオヅヌの首に腕を巻き付ける。じたばたするが、外せない様子。グレンが腕に力を込める。鍛錬を欠かさずに鍛え上げられた腕はオヅヌの首を完全に絞めている。
「こ、こんな、ば、ばかな」
息をするのも出来ないだろう。ぐったりとなったオヅヌにグレンは更に首を強く締める。バキンという音がして、オヅヌの首が変な方向に曲がっていた。




