表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/200

第17話:サウザンドウォー

どっちかと言うと千日手?

 とりあえず、倒れたままの二人を何とか介抱しないといけない。サラマンダーは熱そうなので、晶龍君からにしよう。起きて、晶龍君、起きて!


「うぐぐぐ、ま、ま、負けるかぁ!」


 吠えながら立ち上がる晶龍君。うん、まあ元気そうでよかった。というか怪我らしい怪我はしてないんだよね。


「ダメージなんて全くねえよ。ピンピンしてらあ」

「いや、肩で息をしながらそんな事言われても説得力ないんじゃないかな?」

「こ、こんなのへっちゃらだ!」


 その声が届いたのかサラマンダーも起き上がる。同じくダメージは無さそうだ。そりゃそうだ。あの晶龍君のパンチならぼくだって大丈夫……かどうかは分からない。ぼくは柔らかいからね。


「く、くそう、効かねえぞ、オルァ!」


 普通に負け惜しみ? いえ、多分真実です。あの二人が倒れていたのは疲労だもんね。ダメージないけど自分の攻撃のスタミナ消費で倒れただけ。いわゆる、くっ、ガッツが足りないっ状態。


 再びフラフラと寄って攻撃しようとする。でも殆どスピードとかパワーとかなくて、ぺちぺちしてるだけなんだよ。これ、いつまで続くのかなあ?


「おりゃあ〜」

「なにくそ〜」


 お互いにクロスカウンターみたいになってそのまま前のめりに倒れ込んだ。倒れる時は前のめりなんだって。死ぬ時は例え下水ドブの中でも前のめりに死にたい。らしいけど、ぼくは死にたくないし、下水ドブの中にも入りたくはないよ。第一、スライムに溶かされちゃうからね。あいつら話通じないんだもん。


 ぼくは晶龍君を背負って頑張って動き出した。いや、重かった。重かったけど見捨てていけないもん。ぼくの身体は普通のホーンラビットよりも少し大きいからそれが良かったのだろう。サラマンダー? うん、放置したままだよ、熱そうだし。


「う、ううっ、こ、ここは?」

「あ、晶龍君、気がついた?」

「あいつは?」

「ええと、サラマンダー? まだ寝てるんじゃない?」

「ちっ、行かねえと」


 晶龍君がフラフラの身体で歩き出そうとする。ここは洞窟の中だから光が見えてる方に歩き出してた。なんで洞窟に居るのかというと、川の他に水がある場所を探したからだよ。


「いやいや、なんで晶龍君はそんなにバトルしようとするの?」

「ドラゴンの一族が舐められっぱなしで引っ込んでるわけにゃいかねえんだよ!」

「そっか。じゃあ、ここからは別々だね」


 これは仕方ない。旅の目的が違うのだ。おそらく晶龍君は武者修行のつもりなんだろう。だから勝てない相手とか居たら勝つまで頑張るんじゃないかな? そうして強くなっていくんだろう。


 ぼくの目的は故郷に帰ること。ひとまずはそれからだ。グレンと別れた今、ぼくに何が残ってるのかは分からないけど。


「お、おい、ま、待ってくれよ」

「えっ? だってあのサラマンダーと雌雄を決するんでしょ? ぼくは見届けられないけど頑張って。ここまで一緒で楽しかったよ」

「って、川遡っただけじゃねえか! そんなに一緒には居なかったろ? それに、それに、ああ、もう、分かったよ。再戦は諦める!」


 晶龍君がかなりイライラしながらぼくに言ってきた。なんで? いや、晶龍君の目的があるんだから別にそれは仕方ないと思うんだ。そりゃあついてきてくれた方が心強いけど。


「無理、しなくていいよ。相当悔しかったんでしょ?」

「む、無理じゃねえ。あのサラマンダーは別の場所で修行してからもう一度挑戦してやる!」

「そっか。まあ晶龍君がついてきてくれるのはありがたいけどね」

「だろ? じゃあ改めてよろしくな。行こうぜ」


 そんな事を話して洞窟を出て歩き始めようとした時だった。茂みがガサガサと動いてさっきのサラマンダーよりも大きなサラマンダーが現れた。えっ、もしかしてこのサラマンダーが親個体?


「うちの息子をボロボロにしたのはお前らか?」


 デカい鼻から蒸気の様な熱い鼻息を出して、サラマンダーはぼくらを睨みつける。よく見るとさっきのサラマンダーもいた。


「そうだよ、こいつら二人がかりでオレを」

「はあ? タイマンだったろうがよ!」

「うるせえ、タイマンでオレが負けるかよ!」

「やめんか。どうやらうちの息子が迷惑をかけたみたいで申し訳ない」


 デカいサラマンダーの人は頭を下げた。えっ、この人ならぼくらを一瞬で消し炭に出来るよね?


「そちらのホーンラビットのラビ様でしたかな? イフリート様より通ったらくれぐれも頼むと申し使っております」


 えっ、イフリートのおじちゃんが? どうやらデカサラマンダーの知り合いらしい。おじちゃんすごいや。


「私が息子に言ってなかったのが全て原因です。お許しください。ほら、お前も謝れ」

「ええ? なんでオレが」

「イフリート様に消し炭にされるぞ?」

「ひいいいい、も、申し訳ありませんでした!」


 なんだかよく分からないけど一件落着ってことで良いかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ