第167話:オヅヌ大戦2
次回からそれぞれの戦いにピックアップしていく予定です。ラビとグレンは最後の予定。あー、牛鬼とか強そうだなあ(棒読み)
「よう、てめぇら。今日は逃げなくていいのか?」
スクナがニヤリと笑う。
「鬼風情が偉そうに。妾が相手してやるから有難く思いなさい」
「はあ? 女子供をいじめる趣味はねえんだがよ。まあ小突けば泣くだろうからお父さんにでも慰めてもらいな!」
そう言ってスクナは金棒を思いっきり振り下ろした。ブリジットは軽々とそれを止める。
「あらこの程度? そよ風でも吹いたのかしら?」
「貴様ぁ!」
「かかっていらっしゃい、愚物!」
ブリジットがスクナと戦闘に入った。まあ力では負けてないみたいだから放っておいて大丈夫だろう。
「やれやれ。仕方ないですね、スクナは。残りは私が片付けましょうか」
そう言うとイダテンが素早く動いた。かなり速かったんで見つけるまで時間が掛かったけど、後ろに回ってグレンを狙っていた。でもぼくは敢えてそれわ放置する。だって。
「狙いが見え見えよ」
「貴様、私の動きが見えるのか?」
「天界ではあなたよりも速い天使を相手にしていたんだもの。動きぐらい見えるわよ」
「ちっ、ならばこれならどうだ!」
「相手してあげるわ!」
マリーがイダテンと戦闘に入った。速くて見てるのがやっとだけど、それぞれ速く動いて互いの後ろに回ろうとして正面からぶつかってる感じだ。それが一番消耗が少ないのかもね。
「ぬう、スクナとイダテンまでも……」
「オヅヌ、覚悟しいや。あんたを一寸刻み五分刻みにしとうてたまらんかったんや」
いやいや、葛葉、怖いってば。気持ちはわからんでもないけど。ぼくにとってのグレンみたいな狐って言われちゃあねえ。
「まあよい。そこの狐は喰ろうてやろう。他は大したことがなさそうであるしな」
「大したことはない、とは大きく出たものだな」
「大したことはないのは間違いないであろ? ほうれ、かわせるならかわしてみるがよい!」
そう言うとばさりと何かをばらまいた。粉のようなものが宙に舞い、そして地面に落ちた。何事もなく。
「むっ? 何故貴様らは僵屍鬼にならんのだ!」
どうやらぼくらを同士討ちさせる為の技というか薬だったみたいだ。これはデンティフェルさんのお手柄だね!
「かくなる上は、こい、まろが下僕よ!」
出て来たのは痩身の女性。符を振ると棺桶がせり上がり、そこから出てきたのだ。なんでもありかよ。
「貴様! 玉葉姉様に何をした!」
「お主が会いたがっていたので呼び出したでおじゃる。魂は喰ろうたが、肉体は再生しておいたからのう」
「殺す! 貴様だけは絶対に殺す!」
「良いのかや? ほれ、攻撃がいくぞえ?」
玉葉と呼ばれたその僵屍鬼は生きているかのように動き、葛葉に襲いかかった。葛葉は戦いにくそうにその攻撃を避ける。
「オヅヌ! 観念しろ。貴様はぼくが倒す!」
グレンが改めてオヅヌに言う。こういうところ勇者っぽいよね。もちろんぼくもいる。ぼくとグレンのタッグだ
「ほう、確か他の四天王を倒したという男でおじゃるか。確かにいい顔をしておる。これはいい僵屍鬼になるでおじゃる」
「そんなものになってたまるか!」
「そう言って僵屍鬼になった奴らは数しれんぞ?」
オヅヌが窓の外に走って行き、そこから飛び出ると、あまたの僵屍鬼が行く手を塞いできた。
「待て!」
ぼくらは道を塞がれて進めなくなりそうだった。
「赤熱円舞!」
アスタコイデスさんが炎で道を切り開いてくれた。ぼくとグレンは駆け出す。アスタコイデスさんによって作られた道を。残りのミラビリスさんとハスタートさんがアスタコイデスさんのバックについてぼくらに追い縋ろうとする僵屍鬼を薙ぎ払ってくれた。
ミナサノールの中心にある噴水のところまできた。そしてオヅヌが高らかに笑う。
「とうとうまろに切り札を切らせるとは。さあ、いでませい、牛鬼よ!」
噴水の水がドバドバと逆巻き、そこから頭が牛で身体が巨大な蜘蛛というおぞましい化け物が現れた。
「どうであろ? これがまろの切り札牛鬼でおじゃる。怖気付いても遅いでおじゃるよ!」
オヅヌはひらりと牛鬼の背中に飛び乗った。そして周りに呪符を浮かべる。
「さあ、殺し合いを始めるでおじゃる。一方的な殺戮になっても文句は言わさないでおじゃるよ!」
オヅヌの癇に障るような笑い声が広場に響いた。
おそらくは街中では晶龍君がパイリンさんと走り回って厭魅の形代を見つけ出してくれる。そうすれば状況も変わってくると思う。
みんなは打ち合わせのように配置についてるから大丈夫だ。この牛鬼ってのには驚いたけど、ぼくがいるから大丈夫だ!
……多分。さあ、グレン。ぼくたちの強さを見せつけてやろう! ってグレン戦えたっけ?




