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第163話:威力偵察(アスタコイデス視点)

巫蠱と厭魅は細かい違いがありますが、仙丹を作るのが巫蠱、という事にしております。

 デンティと合流して、久々に四人揃った。……のは良いのだが、デンティが私から離れてくれない。


「あの、デンティ? そんなにくっつかれると歩きにくいんだが」

「ええー? でも危ないところなんだからアスタのそばにくっついてないと危ないよね?」

「いや、私は守りは不得手だから出来たらミラブに」

「えー、やだー」

「御免蒙る」


 いい提案だと思ったのだが両人ともに却下されてしまった。何故だろう。まあ戦闘になれば離れてくれるだろうから構わんか。


「ほらほら、そこのお笑い御一行、そろそろミナサノールだよ」


 ハスが目的地に近くなった事を教えてくれる。異様な雰囲気を嗅ぎとったのかデンティが私から離れ……ようとして離れないまま、左手だけ私に触れて右手で何かを掬い取る。


「これは……アスタ、兄さん、痴女、ちょっと離れて」

「いや、痴女はあんまりじゃない?」

「いや、ごめん、ハス。思ってた事がつい。でも状況的にはちょっとまずい」


 デンティはハスの事をそんな風に思ってたのか。まあ確かに痴女っぽくはあるが。


「これは……巫蠱、いや違う。厭魅の術式だね。仙道系の呪法が使われてるんだよ」

「解除は出来るのか?」

「出来るか出来ないか、というなら出来る。この厭魅の術式はキーとなる呪物がどこかにあるから、それを破壊すれば良いだけの話。まあどこにあるのかは分からないんだけど」

「他の解除方法は?」

「うーん、一時的になら緩和することは出来るけど、呪物からは常に呪詛が出ちゃってるから長くは続かないよ?」


 対症療法だと一時しのぎにしかならんか。ううん、それならば対症療法をしている間にその根本を叩くしかあるまい。


「デンティ、その一時的なのでも構わんから作れるか?」

「アスタの頼みなら喜んで! まあギルドに材料があるかは疑問だけど……あっ、そうだ。アスタってあのホーンラビットさんと仲良いの?」

「うむ、相棒のようなものだ」


 嘘は言ってない。というか私は共に戦った時から相棒だと思っている。向こうが相棒と思ってくれているかは分からないが、鷲にも乗せてくれた事だし、きっと大丈夫だ。


「彼のツノの削りカスが欲しいんだよね。交渉してくれない? なんならツノごとくれるなら万々歳なんだけど」

「ううむ、ツノごとは難しいだろうが、削りカスくらいなら構わんかもしれんな。頼んではみよう」


 などと言っていると辺りに不穏な気配が生まれる。


「またてめぇらか。懲りない奴らだ」

「数を増やしたところで我らには勝てぬぞ?」


 赤鬼と青鬼がいつの間にやらそこに出現していた。周りには小鬼ゴブリン共が群れを成している。


「喰らえ、うおおおおおお」

「ぬぅん!」


 赤鬼の振りかぶった攻撃をミラブが受ける。まともに受ければ大怪我は間違いないのだが、力を巧みに受け流して、盾で流す。


「ちっ、やるじゃねえか。オレサマが砕けねえとはな」

「貴様の相手はこの私だ!」


 私は赤鬼の振り下ろした攻撃の隙に、こちらの攻撃を叩き込もうとする。赤鬼は咄嗟に左腕で私の攻撃を防御し、私を睨みつけた。


「もらった、疾風突ゲイル・スラスト


 ハスが無詠唱での攻撃を完成させる。攻撃は赤鬼に一直線に向かったが、青鬼がそれを迎撃する。


「ふう、忘れてもらっては困りますね」

「……あんたも居たわね」

「ええ、そして、こいつらもね! さあ、この大軍から逃げられますか?」


 青鬼の号令で小鬼ゴブリンたちが私たちに向かってくる。私たち三人はゴブリンなど物の数でもないが、問題はデンティだ。下手すると転けて死ぬ。


「いやぁん、アスタ、こわぁい」

「デンティ! 真面目にしないと死ぬ前にコロスから!」

「ちぇっ、これだから痴女は。仕方ない。加速薬!」


 デンティが粉をみんなに振りかけると全員のスピードが上がる。デンティの加速薬だ。周りの時間が止まったかのように感じる凄まじい薬だ。その分、反動も大きかったりするんだけど。


「あ、反動は抑えてるから思いっきりやっていいよ。その分威力も弱めだけど」


 どうやら改良版らしい。前の時は全員が筋肉痛で三日ほど寝込んだからね。あ、いや、私は大丈夫だったんだけど。


「私は加速とか関係な……あ、魔力の収縮速度まで上がってる!?」


 どうやら詠唱スピードまで上がるようだ。凄まじい薬を作ったものだ。


「アスタ、これなら」

「よし、全力で離脱するよ!」

「えっ、アスタ?」

「副作用については出ないと分からないし、いつ副作用が出るか分からないからな」

「アスタは大丈夫だよ、前の時も出なかったし」

「ほか二人は保証がない。撤退するべきだ」


 私の言い分にハスもミラブも理解してくれたみたいだ。私は小脇にデンティを抱えて走る。


「あっ、てめぇら、逃げんのか?」

「ついて来れるなら追ってこいよ!」

「くっ、やってやろうじゃねえか」

「スクナ、追えば一人だけやられるかもしれませんよ?」

「イダテン、てめぇ、オレがやられるとでも?」

「罠かもしれませんからね。正攻法ならあなたが勝つでしょうが」

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