第160話:sideグレン その5-3
フェザーはラビが化け物だと認識してるので胸を借りるつもりでやってます。
「グレン何やって……あああああああ、ラビきゅぅん!?」
ヤバい、マリーにバレた。なんて事だ。ラビが危ない。
「落ち着け、マリー。この中では一番直近にラビに会ってるのはマリーじゃないか」
「それはエリンもじゃないの。なんで止めるのよ!」
「優先すべきもの達が居ると言っているんだ」
エリンの言葉にスタスタと歩み寄るノワールとブラン。
「ノワール、ブラン」
「全く。帰ってくるなら言っときにゃさいよ。せっかく大盛り上がりで迎えてやろうと思ったにゃに」
「ノワール、泣きたければ泣いてもいいんだぞ。やあ、ラビ、久しぶりだな。少し大きくなったか?」
二匹が前足をぽんぽんとラビの頭に載せる。あれは撫でているのか?
「おお、本当にラビがおるではないか」
「シルバー爺!」
「ほっほっほっ。部下から元気にしておるとは聞いておったが丸々してきたの」
「あー、まあね」
そうして話しているところにブリジットが近付いてひょいとラビを拾い上げた。
「ラビ、妾には挨拶はないのかしら?」
「ブリジット、いやそんな事はないよ。ただいま!」
「全く。お供はあの時の赤い戦士ね。晶龍は?」
「あー、今は伴侶と蜜月中だから」
「へぇ、まあいいわ。借りて行くから」
そう言ってブリジットはラビを抱えてスタスタと家の中に入って行った。ここに来てないのはあとはフェザーと葛葉だ。でもフェザーはラビにそこまで親しさはないだろうし。
「入るわよ」
「……何の用や?」
「いつまでうじうじしてんのよ」
「あんたには関係あらへん」
「この子の前でもそんな事言うつもり?」
部屋のドアの前で二人がやり取りをしている。葛葉はあれから部屋から出てこない。ぼくとしても無理強いは出来ないから放ってるんだけど。
『葛葉、ただいま』
バタン、とドアが開いて驚愕の表情を浮かべた葛葉が現れた。見た目からして憔悴している様だった。葛葉はブリジットに抱えられているラビを見つけると奪い取った。
「ラビ、ラビやんなぁ。ああ、ああ、よう帰りはったなぁ。ほんまに、ほんまに」
そうしてぎゅうっと柔らかな胸部に押し付けて抱き締める。
「ちょっと、あんたね、ラビは妾の……はぁ、まあいいわ」
ボロボロ泣いている葛葉を見てブリジットも何も言えなかったんだろう。ぼくも葛葉が出てきてくれて嬉しい。そこにフェザーまでやってきた。
「あん? あのホーンラビットが帰ってきたのか? まあ悪くねぇんじゃね。戦力足りなかったろ?」
「フェザー、ぼくは、ぼくはラビを戦闘に巻き込みたくは」
「違ぇだろ、ご主人様よ。そいつァよ、自分の意思でここに来たんだ。ここが鉄火場だって分かったうえでなァ。だからよ、参加するかどうか決められるのはソイツだけだぜ。第一、あんた、そのラビってホーンラビットをテイムしてねえだろ?」
フェザーに言われてハッとした。確かに今のぼくにとやかく言う権利は無い。あるとしたら、今の主人であろうあのアスタコイデスとかいう赤の戦士だ。
「アスタコイデスさんと話してくる」
「待てよ、ご主人様。まだ話は終わっちゃあいねえぜ」
「なんだと?」
そう言うとフェザーはラビに向かった。
「ラビだったな。オレはお前と入れ替わりで入ったフェザーだ。覚えてっか?」
『厳密にはぼくと入れ替わりになったのはイフリートのおじちゃんだったと思うんだけど』
「口の減らねえ奴だな。経緯はどうあれ、フレイさんはその前からパーティに居ただろうがよ。追放されたのはお前、新しく入ったのはオレ。そういうもんだろ?」
『まあそうだね。フェザー、あなたの事は覚えてるよ。露出の高いおっぱい大きい痴女の鳥だよね?』
「言うじゃねぇか。そういうの嫌いじゃねえぜ。まあ話ってのはアレだ。おめぇとオレで腕試しって奴だ。やるだろ?」
フェザーがとんでもないことを言い出した。フェザーはフェニックス。灰の中から何度も蘇る炎の魔獣だ。空も飛べるし、ラビとは戦闘にすらならないだろう。
『いいよ。やらないと収まりそうもないだろうし』
「フェザー! ラビに何しはりますの!」
「黙ってな、ウジウジ泣いてる泣き虫はヨ。それにそいつがどうやってジョーカー倒したのか興味ねぇか?」
それは確かにぼくにも興味がある。てっきり一緒に居たという侍とかの仕業だと思っていたから。でも、そいつらは観戦者だという。ならばラビは……
今いる住居の裏手にある広場、そこでラビとフェザーが対峙している。葛葉、ブリジット、そしてシルバー爺が見届け人だ。ノワールとブランが誰も近付かない様に見張りをしている。
「よぉし、じゃあ遠慮なくいくぜ!」
フェザーがまずは炎弾を放つ。フェニックスミサイルと自分で名付けていたが、ミサイルとはなんなのだろうか? 炎は滑るようにラビに襲弾し、大爆発を起こした。




