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第156話:旅は道連れ、世は情け、浮き名の横櫛

アスタコイデスと旅に出ました。このまま逃避行?

「アスタコイデス! いくら赤の戦士でも、ラビきゅんは渡さないわ!」


 そう言ってぼくを抱く手に力が篭もる。だからちょっと落ち着いて欲しい。


「まあまあ、ギルドマスター。なぜラビ君がここに? ショウ君は一緒では無いのかい?」

「ショウ君って誰? ラビきゅんのパートナーはグレンでしょう?」

「いや、私が会った時にはショウ君という商人の息子風の男の子と一緒だったんだが」

「まさか、グレンがラビきゅんを商人に売った!? そ、それなら私に言ってくれらば何時でも買い取ったのに!」


 なんか話が凄まじく迷走しそうになってきた。かと言ってストッパーはいなさそうだし。


 ぼくは止めるべく「キューッ」って一声鳴いた。まあ意味としては「ぼくのために争わないで!」って意味なんだけど多分誰も理解してないと思う。


「そうだ、こんなところでたむろしてる暇とかないのでは?」

「そ、そうでした。赤の戦士アスタコイデス。あなたにはギルドから特別召集が掛かっています。至急ティリミナスに向かう様に、と」

「白も緑もいるだろう」

「二人は連絡もらって間もなく着くそうですよ」


 それを聞いて苦虫を噛み潰したような顔をしたアスタコイデスさん。どうやら苦手な人らしい。


「……わかった。向かおう。白にはともかく、緑に色々言われるのは不本意だからな」

「結構です。直ぐに早馬の手配をしましょう」

「転移陣は?」

「使えません。ティリミナスには通ってないので」


 転移陣というのは人や物を一瞬で運ぶことが出来る魔法陣だ。ただ、設置した場所にしか使えず、使うと莫大な金がかかるらしい。ティリミナスじゃなくて、ミナサノールにはあったらしいが、今のミナサノールには飛ばせない。なんでも占領されているらしい。


「ふむ、仕方ない。それなら私は走って行くとしよう」


 ………………はい?


「こう見えて身体強化には自信がある、身体強化を使いながら走ればそこまで遠くはないだろう」


 人間が身体強化で一時的に身体能力を上げることが出来るのは知ってる。でもそれは短距離走みたいな感じで限られた時間だと聞く。なんで長距離移動にそんな手段を用いようとするのか。もしかしてバカなの?


「あの、アスタコイデス、それはさすがにもたないのでは?」

「急がねばならんなら休みながらでもそうやって急ぐ方が効率がいいだろう。無論、短時間しか使えないことは私もわかっているさ」


 なるほど。覚悟の上での発言だったらしい。バカなの?とか思ってごめんなさい。でも究極的には脳筋的な考えだよね。


「ともかく馬は用意したからそれで」

「馬だと余程の馬でなければ私の重さにバテてしまうと思うぞ?」


 アスタコイデスさんはとても体つきがいい。最高の肉体を持っている。いや、えっちな意味ではなくて。身長は二メートルはないが高い部類に入るだろう。赤い鎧もよく似合っている。なんであの鎧で動けるのだろうかみたいなプレートメイルだ。それでいて、速い。晶龍君とやり合うのは見たが、あの時キマイラか来なかったら晶龍君は負けていただろう。


「仕方ありません。アスタコイデスさんに任せますので一刻も早く出発をしていただけませんか?」

「うーん、ちょっと気分は乗らないんだけどなあ」

「重ねてご迷惑かとは思いますが、このラビきゅんをグレンの所に届けていただきたく」

「え? ラビ君と旅ができるのかい? やる! やるよ! 出発しよう、今すぐしよう。準備は出来てるかい? 私は出来てる。えっまだ? じゃあ四十秒で準備してくるよ!」


 なんか急にやる気を出してアスタコイデスさんはドアから飛び出した。暴風の牙のみんなもポカンとしている。まあその後の話し合いで暴風の牙たちは引き続きこの辺りのオークの残党を片付けるみたいだ。


 アスタコイデスさんが戻ってきた。ぼくを抱き抱えるとウキウキしながら街の外に出る。


「二人きりだねえ、ラビ君。このまま二人でどこかへ逃避行とかどうだろう? うふ、うふふ」

『そいつァ、勘弁してくれよ』


 思わず、といった感じでぼくの中のぼくが念話を繋いだ。


「だ、誰だい? 今の乱暴な口調は、もしかして、ラビ君? き、君は、不良になってしまったのか? あんなに、あんなにいい子だったのに」

『ふう、繋がったみてぇだな。それじゃあ後は頑張れ、ラビ』

『あ、ちょっと、ぼくに押し付ける気?』

『苦手なんだヨ、こんなやつ』

『ぼくだってそこまで得意じゃないってば!』


 だが、ぼくの中のぼくはそれ以上反応してくれなかった。こいつ、裏切りやがったな。ぼくの中だから逃げられると思うなよ。後で覚えてろ!


「あああああ、ラビくぅーん!」

『あのアスタコイデスさん、落ち着いてください。今のはぼくの中のぼくというかもう一人のぼくみたいな感じで、ぼくではあるんですけどぼくではないというか。ええと、難しいなあ』

「やあ、ラビ君だね。改めてこんにちはだ。私はアスタコイデスって言うのは知っているかな?」

『はい、晶龍君との事も覚えています』

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