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第155話:再会、赤の戦士

アスタコイデスも来ました! ここからティリミナスに向かいます。

「改めて。ギルドマスターのステラルージュです。ステラとお呼びください」


 柔らかそうなギルドマスターの椅子に座って彼女は言う。でも、ぼくのことは放してくれない。いやまあそこまでグリグリされなければ痛くないからまあいいんだけどさ。


「あ、ああ、暴風の牙リーダーのタムロムだ。一応報告させてもらうが」

「ええ、お願いします」

「洞窟行ったらオークが血塗れでそいつがいた。以上だ」


 間違ってないけど端的過ぎるよ! 説明不足にも程がある!


「私は詳しい話を聞きたいところなのだけど、これがパーティとしての報告でいいのかしら?」


 凄く辺りが凍りつきそうな微笑を浮かべてステラさんは言う。これはまずいと思ったのか、ローリエが慌てて説明を引き継いだ。


「あ、あの、斥候役の私から色々と補足させてください。ええと、先ずは洞窟の周りにいたオークはあまり強くなく、私たちが都度処分していました」


 あー、そうだよね。あの洞窟に居たのが全部じゃなかったか。まあぼくにはあまり関係ないけど。


「それで、洞窟に差し掛かった時に洞窟の奥から血の臭いがしまして。もしかしたら囚われてる捕虜がいるかもしれないと慎重に気配を抑えて進んでいきました」

「あれ? 血の臭いに気付いたのってゲンツじゃなかったか?」

「あんたは黙ってて!」


 空気読めないじゃないかって程の傍若無人ぶりを見せるタムロム。なんでリーダーなんだろう?


「私は斥候ですから先に危険がないかを確かめながら進みました。先に行くに連れて血の臭いは強くなっていきます。もしかしたら、同士討ちをしているのかもしれない。そんな淡い期待もありました」


 まあ途中のオークとか食べたりしてたからなあ。


「洞窟の中にはいって、一番広い部屋に出て、見た光景は辺り一面の血の海でした。恐らく何か恐ろしいものがここで暴れたのではないかと」


 へへっ、恐ろしいものだって。ぼくもなかなかやるだろ?


『調子に乗るな』

『たまにはいいじゃないか』

『あんなのまぐれだ、まぐれ』


 手厳しいぼくの中のぼくにダメ出しを食らって少ししょぼんとした。


「神官のディアネに洞窟内を照らしてもらって調べていたんですが、床一面にオークの死体が散らばっていて」


 や、申し訳ない。あの時は後始末とか考えてなかったんだよね。


「センスイービルにもはんのうがなかったから安全だと確信しつつも、隠蔽が出来るかもしれませんから、慎重に慎重は重ねていました」


 まあ実際ぼくは隠蔽されてたんだけど。いや、返り血浴びてドロドロだっただけなんだけどさ。


「そんな中で血塗れになって佇むこの子を見つけまして。恐らく戦闘に巻き込まれて呆然としてたんだろうね。或いは、オークたちの餌になる一歩手前だったのかもしれない」


 それを聞くとステラさんはガタン、と立ち上がって憤慨した。


「なんですってぇ! 許せない、ラビきゅんをさらおうとしたクソ野郎はぶっ殺さなきゃ!」

「お、落ち着いてください! あの、恐らくオークたちだったんじゃないかと。他に誰もいなさそうでしたし」

「そう、残念ね、ところで、この先どうするつもり?」


 ステラさんが暴風の牙に問う。まあオークは倒したけど他の魔物がいるかもしれないよね。各地で活性化してるって噂も聞いたし。


「ええ、私たちは地道にこの周辺でのパトロールを」

「そうじゃない。そうじゃないわ。ラビきゅんよ、ラビきゅん」

「え? この子ですか?」

「そうよ! 今主人のグレン君が居ないみたいだから好都合……じゃなくて、届けて上げた方がいいのではないかしら?」


 なんかステラさんから管理下に置きたい、精一杯愛でたいとか思ってるかのようなオーラが伝わってくる。ぼくの赤き恐慌のオーラよりもよっぽど禍々しいと思うんだ。


「すまない、こちらに暴風の牙の皆が居ると聞いたのだが」


 ガチャリとドアを開けて入ってきたのは赤い鎧を着た女性だった。あれ? どこかで見た事あるような?


「アスタコイデスさん!」

「ルフィアナ、無事だったみたいね。良かった」


 アスタコイデスと呼ばれた女性は嬉しそうに縋り付くルフィアナさんの頭を撫でていた。


「赤の戦士、アスタコイデス! あなた、ティリミナスに行かなくても?」

「修行で山に入っていたら連絡が来なくてね。おや、そこにいるホーンラビットはもしかしてショウ君、いや、晶龍君のお供の子かい?」


 あ、思い出した! 砂漠の方の街で出会った、晶龍君をどこかの商会の息子と間違えてたお姉さんだ! 確か抱くのはマリーよりも上手かったんだよね。


「確かラビ君だったね。私の事は覚えてるかな? 覚えていてくれたら嬉しいのだけど」


 ぼくは覚えてるとばかりに首をブンブンと縦に振るのであった。積もる話は山ほどあるんだけど、きゅーきゅーとしか聞こえないんだろうなあ。

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