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第147話:レッスンワン!

オーガは噛ませ犬&エサ

『この森を治める主として君臨してください(され)』


 えええええ!? いや、そんな事言われても。その、ぼくにも予定というものが。ええ、そうなんですよ。やっと行くと決めたんだもん。


『その行く場所ってのはどこなんで?』

『ええと、多分魔王軍との最前線かな?』

『ならおそらくはミナサノールでしょうなあ』

『鷲さん、知ってるんですか?』

『どうぞ、さんだなんて恐れ多い。鷲野郎とでも呼び捨てにしてください。ええ、時々あの辺にも飛んで行ってますからね』


 そうか。翼があったら飛んで行けるんだ。ぼくはなんでホーンラビットなんだろうか。今ぼくの願いごとか叶うならば翼が欲しい。この背中に鳥のように白くなくてもいいから。


『なんだったらワシがお連れしますぜ』

『本当かい、鷲くん?』

『その後この森に戻って来て主をやってくださるならいくらでも』

『いや、あの、主は鷲くんか雄牛さんで良いのでは?』


 そう言ったら雄牛さんが口を出してきた。


『ワシがやっても鷲の小僧がやってもどちらにも角が立ちますべえ。ラビ様ならみんな納得するだよ』


 そんなものかね? いやでもぼくの実力は中にいるもう一人のぼくがやった事だからなあ。


『やかましい。はいかイエスで答えてさっさとグレンのところに行くぞ』

『了承しか選択肢無いよ?!』

『いいか、向こうは最前線だ。下手すりゃ明日をもしれねえ。ここに戻ってきてボスやるだなんて出来ねえかもしれねえんだ。だからそういうのは全部後回しにしろ。グレンのとこに行きたくねえのか?』


 もう一人のぼくなんだから答えは決まってるって分かってるくせに。


『鷲くん、よろしくお願いします』

『そんな勿体ねえ。行けって一言命令してくれりゃ行きますよ』


 鷲くんは自分の翼を自慢げに広げた。


『そういえばお腹空いたな』


 草を食みながらそんなことをポツリと呟く。いや、正確には実際にお腹が空いているという訳ではないと思う。ただ、空腹感を感じるのだ。量的には沢山草を食べてるからね。


『わ、私を食べますか?』


 羊さんがぷるぷるしながら涙をためている。確かに羊さんは美味しそうな感じがします。でも食べる訳にはいきません。ぼくはそんな訳ないじゃないですか、とは言ったが、美味しそうだなって感じたのは消えないみたいで少し遠巻きに見られています。


 ぼくの獲物はもっとこう、森の生態系に関係の無いやつがいいなあ。などと思ってたら『ああいう感じですか?』って鷹が言ってきた。


 見るとやや大きめのオークの兵隊が三体ほど山狩りに来ていた。そいつらはぼくら、特にぼくと羊さんと、雄牛さんを見つけると嬉々としてこっちに近付いて来た。


「ヒャッホー! 肉だ肉だ」

「本当だな。あのデカいのだけでも土産にできるってもんだ」

「おい、オレはあの羊の肉をいただくぜ。柔らかくて美味そうだ」

「じゃああのツノウサギはこっちでやらせてもらうせ」


 思い思いに分配の事を考えてるみたいだ。今なら攻撃し放題なんだけど、鷹さんは……居ない。逃げ出したかな。


 その代わりにいつの間に空に舞っていたのか、鷲くんが風を切る様に急降下でオーク達を襲う。その爪で一頭を傷つけ挑発する。頭に血が登ったヒツジスキー(仮名)が鷲くんを追っていった。


『ならば、ワシもタダではやられねえべ!』


 そう言って雄牛はウシニクミヤゲ(仮名)に向き直った。


『ワシを喰らいたければ倒していくがいい!』


 相手のウシニクミヤゲは嬉しそうに武器を持った。あと一人のオーガは結果的にぼくの前に立った。図らずも一対一の構図が三つ出来上がった。


 ぼくの前に立つのは個体名不明、通称ツノウサギカル(仮名)である。いや、ぼくをよっぽど捕獲して食べたいのか、引く様子は見られない。


 ぼくはそいつをしっかりと見つめた。ぼくにもぼくの中の彼と同じように操れるに決まってる。ぼくは集中して、体の中の声に、声に、声、に?


『まあ、自分で感覚掴めよ。頑張れ』

『ちょっとお! 敵を目の前にしてそれはあまりにも無責任じゃないの?』

『ああ、うっせぇな。こんな雑魚にやられるわけねえんだから心配しねえでゆっくりやれや』


 何を言ってるの? ぼくがあんな雑魚にやられないって、オーガは雑魚じゃないと思うよ。


「舐めやがって!」


 ツノウサギカルはぼくの方に手に持った棍棒を振り回して暴れ回る。あんなに振り回した危なくて近付けないよ!


「隙あり!」


 ぼくの戸惑いを見抜いたのか、ツノウサギカルはぼくの身体目掛けて渾身の力で棍棒を振り下ろして来て、ぼくは回避が間に合わず、それを食らった。


 あれ? 何にも痛くないよ? どうなってんの? よく見るとぼくの毛の一本一本を赤いオーラが覆っていた。


『これは?』

『オーラバリアだ。防御の基本だぜ』

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