第140話:sideグレン その4-1
終わらなかった! 続く!
ぼくらは氷雪の王、サスカッチを倒し、また、ジョーカーも倒れているので、魔王を倒す為の布石である四天王は全て倒す事が出来たのだと確信した。
四天王が五人いるとかいうのはきっとないと思いたい。四天王よりも強い七将軍とか十傑衆とか九大天王とかそういうのは出て来ないといいな。
サスカッチを倒す時にどこかに出掛けていたエリンとマリーが帰って来ていた。
「やあ、おかえり」
「グレン! 私たちが居ない間にサスカッチを倒しに行ったって本当ですか?」
「あ、ああ、たまたま遭遇したからね。やむを得ず。プレイとフェザーが居てくれたから何とかなったよ」
ちらっと見るとフェザーが胸を張っている。たわわに揺れてるから目の毒なんだけど。主にエリンとマリーに。ぼく? ぼくは女の人を胸で判断するのは良くない事ですよって教えられたからね、昔。
「まあどうってことねえよ。オレ一人でも十分だったぜ」
「何を言っている。貴様の炎が消えぬように足していたのは我ではないか」
「フレイのおっさんが居なくても何とかなったさ」
「その様な口を叩くものでは無いぞ、小娘」
「なんだと?」
二人の手柄自慢が口論になりかけたところでぼくは二人を止めた。四天王がもう居なくて後は魔王だけだから気が緩んでいるのだろう。
「そっちは何かあったかい? その、ラビ、の事とか」
二人が揃って行く場所なんてラビのところぐらいしかない。大方、エリンがマリーを連れて行くか、マリーが勝手について行ったかしたのだろう。
「魔王の側近になっていたベリアルを倒したわ」
はい? 何故ここで魔王の側近なんて話が出てくるんだ?
「ごめん、何がどうなったか分からないから説明して欲しいんだけど?」
「ええ、わかったわ。ベリアルというのは私がまだ天にあった時に、私よりも先に熾天使であった奴で、神に反逆して地に落とされたと言われる堕天使よ」
「そんな奴が魔王に手を貸していたと?」
「ええ、四天王が弱いのにどうして、と思ったらそんな事だったみたい」
正直、今まで戦ってきた四天王はそこまで強くなかった。いや、ジズは強かったのかもしれないが説得に応じてくれたからね。
「ベリアルと共に地に落ちた、堕天使、元天使長のルシフェルも恐らく魔王についているでしょうね」
マリーの口からとんでもない発言が飛び出した。という事は更に強い奴が居るのだろうか? そいつが最後の四天王になってたりする?
「あるいは魔王の正体がルシフェルなのかも」
確かに、未だに魔王の姿形は謎に包まれている。能力さえも謎なのだ。そいつが元天使長とかいう奴でも納得はできる。
「ともかく、そんな奴は放っておけない。サスカッチを倒したばかりで疲れていると思うけど、みんな、力を貸してくれ!」
ぼくの号令にみんなは頷く。テイマーのぼくの言うことだから聞いてるという訳でもない。嫌な事は嫌と言うのだ。例えばブリジットみたいに。
そうしてぼくらは北を目指す。進む先は魔王の勢力圏内であるから既に人間の街などはない。だから勢力圏外ギリギリのところにある、境界の街、ミナサノールで補給をするのだ。
ミナサノールは高い塔が聳え立つ都市だ。魔王の勢力圏を見張っている物見の役目もある。少し前に来た時は街の中は緊張に満ちては居たが、それなりに活気があった。
今はどうだろう? 妙に静かなのだ。街の喧騒が聞こえない。全体的にどんよりとしている。なんだろう、嫌な予感がする。
ぼくらは門から街に入る事にした。街の入口には門番がいるはずなのに誰もいないで直ぐに街に入れる様になっている。もうこの時点でおかしい。
「主、私がちょっと中を見てきますにゃー」
「ノワールか。頼めるか?」
「任せてくださいにゃー」
いつもの偵察役のノワールが斥候の名乗りを上げてくれた。するすると街の中に入り込む。しばらくしてノワールは戻ってきた。
「街の中に人は居ますけど、みんな生気がないにゃー」
「え? みんなアンデッドって事? そんな気はしないわよ?」
ノワールの言葉にブリジットが反応する。まあぼくも同じだ。そういう死臭ははしていない。
「何にしても街の中を歩いてみよう」
ぼくの提案にみんなが頷いた。街の中は閑散としていた。外を出歩いている人がほとんど居ないのだ。この規模の都市にしては珍しい。ましてやここは対魔王領の最前線基地とも言える場所なのだ。
ぼくは適当に街の中の人に話を聞こうと、冒険者ギルドに向かった。街の中で冒険者ギルドというのはかなり分かりやすい場所にある。これは異邦人が訪ねて来る場合が多いからだ。
扉を開き、中に入る。普通はカウンターに誰かいるのだろうが、ここには誰も居ない。まるで放棄されたかのような……放棄? もしかして、この街は既に?
そんな事を思っていたらギルドの扉が爆発した。




