第14話:ゴブリン掃討!
13話のつもりで書いたんですが、急遽一話書きましたので14話に。
「居たぞ、あそこだ! ゴブリンどもだ!」
野太い男の声が聞こえた。あれはグレンじゃないなあ。グレンの声はもっと高くて……あ、声変わりしたっけ。声変わりしてからは低くて落ち着いた声になったなあ。まあ、ちょうど声が変わってる時期の方がぼくは好きだけど。
「ルフィアナ、魔法をもう一発だ!」
「タムロム、人遣いあらいわよ! 追加でファイアアロー!」
炎の矢がひゅんひゅんと飛んでくる。ホブゴブリンには刺さってないけど周りのゴブリンには刺さっていく。
「なっ、冒険者どもだと!」
ホブゴブリンが驚いていた。これは計算違いだったのかもしれない。
「聞いてねえぞ。それも一人や二人じゃねえ。きっちり戦力整えてやがる!」
ホブゴブリンは悔しそうに言います。振り上げていた大剣もそのままに。
「うおおおおおおおお!」
一人の屈強そうな男が走って来てホブゴブリンに斬りかかります。こいつのデカいです。もしかして、ホブニンゲンなのでしようか? 聞いた事ないけど。
「がああああ! 邪魔するんじゃねえ!」
「ぎゃあぎゃあうるせぇんだよ!」
意思の疎通は出来てないはずですが、戦闘中に相手が言ってる事ってまあ決まってますよね。こういうのは何となくで通じるってグレンも言ってました。
ホブゴブリンがホブニンゲンとガンガンやってる間に人間の女魔法使いはゴブリンに炎の矢を撃っていきます。ゴブリンたちは炎の矢を掻い潜って魔法使いに迫ろうとしますが、大きな盾を持った男の人が邪魔をしてます。知ってます。あれはタンクとかいう役目の人です。
思えばぼくらのパーティにはタンクが居ませんでした。強いて言うならヴリトラでしょうか? でも戦闘は殆どグレンとブラン、ノワール、マリー、エリン、ブリジット、葛葉で間に合ってたからなあ。攻撃を引きつける、という役目なら途中までぼくがやってたけど。すぐマリーが抱っこして連れて行くんだ。だからあばら骨が痛いんだってば!
十匹近くいたゴブリンは瞬く間に駆逐されていきました。よく見ると弓を撃ってる人とかメイスで殴ってる人とかいました。なるほど。そんなことを考えていると牛さんがこっそり近付いて来ました。
「今のうちに逃げなさい」
「逃げる? なんで? ゴブリンは退治してくれたんでしょ?」
「あいつらにとっちゃあゴブリンもホーンラビットのあんたも等しく魔物なんだよ。私はミルクがあるから大丈夫だけど、あんたは狩られたらお肉になって食べられるだけだからね」
そうだ。ぼくはグレンにテイムされてない状態だ。人間たちにバレたら確かにそうなるだろう。ミネルヴァさんもそう言ってた。
「お行き。街があっちだから向こうから回れば見つからないはずだよ」
「うん、ありがとう、牛さん」
「助けてくれようとしてありがとね。気をつけて行きなさい」
「はい!」
ぼくは振り向くことなく一目散に走り出した。あの冒険者の人たちがいれば牛さんは大丈夫だろう。頑張って走って走ってやがて炎の矢の明かりも見えなくなった。ぼくはほっと一息吐いた。
ゴブリンは纏まると厄介だ。でも一対一なら倒せる。それならしばらくゴブリンを狩って強くなるのも良いかもしれない。戦えば経験値?が貯まって強くなるってグレンが言ってた。戦ってたらある日いきなり強くなるんだろうか?
思えば、グレンは毎日剣を振っていた。ぼくらに戦わせればいいのに、それじゃあ強くなれないって頑張ってた。経験値っていうのはきっとそういう努力の量と、実際に戦闘での敵の行動を見て学んでるというものなんじゃないかなって思う。ぼくもゴブリン相手なら次はもっと上手くやれる気がするもん。
まあそれはそれとして牛さんは大丈夫だったんだろうか? 殺したりするような事はないと思うけど、ぼくにはどうすることも出来ないしなあ。色々とぼくは力が足りない。一人で生きていきたくないよ、グレン……
草原を走っていたら川が流れていた。川幅は広くてそのままジャンプで跳び越すのは不可能だ。きっと落ちて溺れちゃう。ぼくは泳げないからね。
ミネルヴァさんの言った通りに川の上流を目指す事にする。下流に行けば街道に当たって橋も架かってるかもしれないけど、ミネルヴァさんの言う通り人間が多いと思うし、グレンと一緒じゃないから危ない。上流がどっちかはあっちに山が見えるからそっちに走れば大丈夫だと思う。ぼくは川沿いに山に向かって走り出した。
山の裾野の方は緩やかな坂になりかけてる感じなんで、特に疲れることも無く登る事が出来る。途中にある草を食べながら水分は水がそこにあるので川の水を飲んでいます。疲れた身体に水が染み込む感じがして冷たくて気持ちいいです。夢中になって飲んでると、なんか水面がゆらゆら揺れ始めた。水の中になんかいるのかな?




