第135話:マリアヌスゲーミング(マリー視点)
人数増やし過ぎって意見もありますがこの辺はゲスト参加です。
「くっ!」
「ほらほら、どうしました? 調子が悪そうですよ?」
「うるさい! なぜ貴様がこちらにいる!」
「名乗りましたよ? 私は魔王様の側近だと」
「魔王と手を組んだ、だと?」
「さあ、どうでしょうね」
斬り結びながらベリアルとの会話を続ける。剣を使うのは久しぶりだけど、まだ鈍ってはいないみたいだ。ベリアルはそれをステッキで受け流している。ミカエルの剣があればあれくらいは断ち切れるんだけど、貸してくれないよねえ。ちょっと借りただけで烈火のごとく怒ったもの。
しかし困った。ベリアルは天界を裏切ったとはいえ天にある時は私と同じ熾天使だったもの。向こうの方が先輩だったんだけど。タイマンだと四大天使でも厳しいんじゃないだろうか。いや、私も次代の四大だとか七大だとかは言われてたけど。
それ以前にあいつら引退したりとかしないから次代も何も無いんだよね。四大の中で一番好きなのジブリール様だけだもん。あの方だけ優しかったからなあ。
「マリアヌス、マリアヌス、聞こえますか? 今、あなたの心に直接話しかけています」
そうそう、こんな風にいつも話し掛けて……ってジブリール様?!
「私たちは同格のお友達なのですから呼び捨てでいいですわよ。ジブとでもお呼びくださいな」
「無茶言わんでください、私が熾天使になるはるか昔からジブリール様は熾天使の座にあらせられたのに」
「まあ、寂しい。それではまるで私が相当なおばあちゃんみたいじゃない」
何かわからないけど、目の前にいるベリアルよりも遥かに恐ろしいものが出現しようとしている。これはまずい。
「あ、あの、今、ベリアルと取り込み中でして」
「ええ、存じ上げております。心配いりませんよ。アズライールとイスラフェールをそちらに向かわせましたから」
「げっ、あの双子が来るんですか?」
「貴女は回復特化だから戦闘能力は低いでしょう?」
やけに楽しげに言うものだ。確かに私は回復を司る天使だ。癒しの力なら恐らく全天の誰にも負けない。強いて言うならジブリール様が私の次に強いかな? ジブリール様はどっちかって言うと安産とか死者蘇生とかだけど。
アズライールとイスラフェールの双子。天使の中の処刑人。熾天使よりも一段低い智天使でありながら熾天使を凌駕する強さを持つという。まあ実際はうるさいだけの双子なんだけど。
「何をブツブツと……ん?」
「どぉりゃあ!」
ベリアルが振りかぶって攻撃をしてくる時に横から何かが突っ込んできた。黒い天使。ということはイスラフェールか。
「イスラフェール、見、参!」
「イス、突っ込みすぎ。ちゃんとボクと合わせて」
「もううっせえなあ、アズ兄は。いいだろ、マリ姐さんが危なかったんだから」
「これくらいでマリ姐さんがやられる訳ないし、やられても再生するに決まってるだろ」
この双子は。久しぶりに会ったというのに挨拶のひとつもなく。いや、戦闘中だから挨拶とか要らないですけど。
「貴様ら、何者だ?」
あー、ベリアルはこの二人が出てくる前に天界から堕ちてるから知らないのか。
「死の天使、アズライール」
「音の天使、イスラフェール」
「「二人揃って処刑天使コンビ、推参!」」
名乗りの上げ方とか巫山戯てるとしか思えん。でも、この異次元にまで介入してきてるんだよなあ。多分送り込んだのはジブリール様なんだろうけど。
「ほほう? 三対一か。悪くないハンデだ」
「マリ姐さんは足手まといだから数には入れないぜ!」
「ええ、大人しく見ていてください」
いや、この期に及んで私は観戦者か? まあベリアル相手にするにはちょっと役不足ではあるけど。
「マリアヌス、聞こえますか、マリアヌス」
「今度はなんですか、ジブリール様」
「役不足は役の方が不足しているのだから意味としては逆よ。この場合は役者不足か力不足だわ」
「天使のモノローグまでツッコミ入れないでください!」
疲れる。とっても疲れる。いや、ジブリール様に悪気は無いのだ。多分、きっと。あの人が悪意をむき出しにするのは兄君に敵対するか過度に好意を寄せた時だけだ。私はどっちでもないので好かれている。
「ぐはぁ!」
アズライールとイスラフェールの二人が交叉しながらベリアルを切り刻んでいく。ベリアルは思う様にかわせない。やっと効いてきたか。私がベリアルに勝つために撒いておいた布石。相手の運動能力や魔力を下げる縛魂結界。だから私は逃げ回ってるだけで何とかなったんだけど。これは決着が早そうね。
「これで」
「トドメ!」
何度目かの交叉で二人の剣がベリアルの心臓を貫いた。いや、心臓貫いたくらいで死ぬとは思わないけど、何せベリアルだし。
「く、くそ! 覚えていろよ!」
逃げられると思った? じわじわと魔力も縛ってるんだよ?
「な、何? 転移が発動しないだと!?」
再度のトドメとばかりに二人の剣が頭と身体を貫き、ベリアルは光となった。




