第13話:街では(第三者視点)
1回人間サイドの話を入れた方がいいかなと。
この世界のドヴェルグはドワーフ+巨人ですが、グラブルのドラフが近いですかね。まあドヴェルグは女性もデカいんですけど。あ、ツノは生えてません。
門番が門を閉めようとすると、草原の方から女の子がゴロゴロと何かを転がしながらやってきます。
「ミラじゃないか。今日は遅かったんだな」
門番が女の子に話し掛けます。この子はミラ。お母さんと二人で暮らしてる子です。母親は今足を悪くして働けなくなってたはずだけど。
「薬草摘みに行って牛さんにミルク分けてもらったの!」
その牛というのはこの近くの草原にいるあの雌牛だろう。どこから迷い込んできたのか知らないが、特に害にはならないから放っている。そのうち魔物に食べられてしまうかもしれんが。
「それでね、ゴブリンに襲われちゃって」
「なんだと!?」
門番は驚きました。ゴブリンの出現なんてここ数年なかったんです。それも森の中じゃなくて草原にまで出て来るなんて。
「それでね、牛さんとうさぎさんが助けてくれて……」
「ありがとう。ちょっと待っててくれ。冒険者ギルドに伝えてくる!」
門番さんは女の子を残して走り去ってしまった。少しして数人の人を連れて女の子の方に戻ってきた。
「君がゴブリンを見つけたのかい?」
「ひっ!?」
大きな男性が話し掛けます。女の子はびっくりしてしまいました。
「ゲンツ、あんたがデカいから女の子怖がっちまったじゃねえか」
「デカいのは仕方ねえだろ。じゃあお前がやってみろよ」
「任せとけ、さあ、お嬢ちゃん?」
「あ、あの、その、お金は、お母さんが、その」
女の子は一層怯えてしまいました。それもそのはず、この男、タムロムは顔が怖いのです。傷なんか入ってますからね。
「顔が凶悪な男どもは引っ込んでなさい。ごめんなさいね、お嬢さん、ええと、ミラちゃん、だったかしら?」
「え? 私を知ってるの?」
「ええ、あなたのお母さん、ティラさんにはお世話になったからね」
お母さんの名前が出たからかミラはほっとします。そして声を掛けてくれた女性を見ました。おっぱい大きいです。お母さんほどじゃないけど。優しそうなお姉さんです。私もこんな風になれるかな、なんてミラは思いました。
「私たちは暴風の牙って冒険者なの。私はルフィアナ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします!」
「いい子ね。それでゴブリンのことを教えて欲しいんだけど」
ミラはゴブリンに襲われた時のことを話しました。牛さんとホーンラビットが助けてくれた事も。
「草原まで出てくる、か。これはスタンピードが近いかもしれないわね。急がなくちゃ。時間との勝負ね。直ぐに出るわよ」
「そうだな。よし、門番さんよ、外に出るぜ。緊急事態だ」
タムロムもやる気です。それに弓使いの長身女性と、神官服を着た女性も頷いています。総勢五人のパーティ、それが暴風の牙です。五人はミラに案内されて牛のいる方に向かいます。
「待って」
途中で弓使いの長身女性、ローリエが耳を澄ませます。この女性は斥候役も兼ねているのです。耳が尖っているのでエルフと呼ばれる種族なのが分かります。
「なんか騒がしいわ。ゴブリンがたくさん居るわね」
「ちっ、遅かったか」
「いえ、まだ大丈夫だと思うわ。急ぎましょう」
現場に着くとまさにホブゴブリンが牛に刃を突き立てるところでした。
「居たぞ、あそこだ! ゴブリンどもだ!」
タムロムが叫びます。ローリエは私のセリフ取られたみたいな微妙な顔をしましたが、それどころではないと弓を番えます。
「ファイアアロー!」
既にルフィアナが魔法を放っていたので、炎の矢が飛んでいきました。夜の戦闘なので明かり代わりにもなるから炎の魔法は便利です。
「ルフィアナ、魔法をもう一発だ!」
「タムロム、人遣いあらいわよ! 追加でファイアアロー!」
タムロムが指示を出しますが、それより前にルフィアナはやる事を分かっていました。もう一発のファイアアロー。さっきのはゴブリンたちを視認するため、今回のは確実に当てるためです。
「うおおおおおおおお!」
それに続いてゲンツがデカい斧を持って飛び込みます。彼はドヴェルグと呼ばれる種族。山に住み、鍛治と酒を愛する大男の種族です。ホブゴブリンと並んでも見劣りしない体格です。
ゲンツがホブゴブリンを抑えている間に周りのゴブリンを屠っていきます。タムロムは盾で攻撃を受け止め、ルフィアナとローリエが遠距離から攻撃を当てていきます。それでもすり抜けてきたゴブリンを残りの神官服の女性、ディアネがメイスで叩き潰します。何気に怪力なのですが、言われると本人が傷つきます。
粗方片付いたところで、ホブゴブリンを集団でボコっておしまい。冒険者たちは森の中を探索するか話し合っていました。
「牛さん!」
ミラが無事だった牛に飛びつきます。牛は愛おしそうにその頭をしっぽで撫でました。
「うん、森の調査はローリエに任せて、私たちは一旦この子と牛を街に連れ帰ろうか」
「え? あたし一人でやるの? しょうがないなあ」
ルフィアナの言葉にローリエはボヤきながらも森へと入っていきます。ミラは牛を連れて街に凱旋するのでした。




