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第129話:黄組統括山田阿佐衛門角武(山田隊長目線)

人斬り朝右衛門モチーフ

 山田阿佐衛門角武やまだあさえもんかどたけ。幕府より、「処刑人」を任されてきた山田家の当主。先代である父は江戸こうとにおり、処刑人として勤めてきたが、病に倒れ、大阪たいはんに派遣されていた角武が当主となる。それに伴い、江戸こうとに帰する様に命令が出るが、未だ従わず。


 従わない理由は、今、大阪たいはんを離れればジョーカーが攻めてくるかもしれないから。聞けば、ジョーカーは江戸こうとを襲ったと聞く。確かに、ジョーカーを倒したと御免状を持ってきた奴らは居るが、本当かどうかは疑わしい。ならばその身で確かめるしかない。


 山田の胸中の思いはそんなところだ。周りを見れば、三刃がそれぞれの者と対峙している。自分は朱里あかりをいつものようにねじ伏せて、姫様を確保するまでだ。和歌宮様は江戸こうとにとっては危険人物であり、重要人物である。京家と対立するのはまずい。


 ならばこっちの手元に抑えておこう。統括管理官からは見つけ次第捕らえて連れて来いと命じられているが、あまり進んで従う気はしない。恐らく上意では無いのだろう。御免状を持ったテイマーが相手に居るのがその証拠だ。


 自分は病の父の面倒を幕府にみてもらってる恩もある。統括管理官の行動には賛同できなくとも、進んで管理官に反逆する訳にもいかない。ならば、こちらが和歌宮様を抑えて江戸こうとに赴き、管理官の罷免を求める。これが一番であろう。


 目の前の和歌宮様たちは気が逸りすぎる。力で何とかしても仕方あるまいに。少しお灸をすえねばならんか。朱里を斬るつもりは無い。長い付き合いだからな。


「いくぜ、山田の旦那ァ!」


 朱里がぱっつんぱっつんの身体を膨らませ、こちらに殴りかかってくる。やれやれ、出会った頃はこんな風に育つとは思ってなかったんだが。蒼尉あおいが居ればストッパーになるかとは思っていたんだが。


 右に左にと拳を叩き付けてくる。刀で捌くまでもない。その気になれば何時でも切り落とせるレベルだ。強くなったとはいえこんなものだろう。正直、向こうで気をつけなければいかんのはあの美女二人だ。あれは最早人間にどうにかなるものでは無い。本性を抑えているからこそ三刃でも相手になっているが。


 あの蛇は一対一ならば斬れるが集団戦となると厄介だ。正雪しょうせつならば蛇単体なら互角だろう。後ろのキツネがどう動くか分からんが、朱里と戦いながらでも牽制くらいは出来る。


 私も早く確保しなければな、などと思っていたら「捕まえたぜ!」などという声が。確かあいつは三刃を呼びに行かせた……名前はなんだったか。そうだ、伊藤だったかな。


 伊藤の手には赤いホーンラビットが捕らわれていた。いや、確かに居たが、ホーンラビットくらいはスルーしても良かったと思うぞ? 何の毒にも薬にもならない。人質のつもりだろうか? そんなものが効果があるとでも?


「ラビきゅん!」

「ラビ!」


 なんと、美女二人が反応しただと? これは妙手、なのかもしれない。あの二人が何とかなれば後は三刃と私一人で何とか制圧出来よう。


「きゅきゅきゅきゅー」


 悲痛に鳴くホーンラビット。いや、すまない。虐待する気はないから安心してくれたまえ。だが、人質として有効ならば使うまでた。


 などと呑気な事を思っていたのはそこまでだった。刹那、心の奥底から恐怖が這い出して来た。かつて味わったことの無い恐怖。ジョーカー相手でもこの様な事はなかった。


 辛うじて耐えながら辺りを見ると、三刃はことごとく膝を着き、朱里やマリエとかいうテイマー、そしてその蛇やキツネ、イヌ、太黒屋に姫様までが膝を着いていた。美女二人は、と言うと何が起こったのか激しく戸惑っているみたいだ。


「ヒザマズケ」


 そんな圧力を貰った気がする。私の膝も気付けば地面に着いていた。なんなのだ、このプレッシャーは。なんなのだ、このホーンラビットは!


 そんな事を考えながら私は意識を手放した。三刃は既に倒れていた。


 次に目覚めた時、私たちはイエローエリアの黄組番所に居た。恐らく全員運ばれて来たのだろう。先程のはなんだったのか。思い出すとまだ震えが止まらない。


「気が付いた様ね」


 目の前には二人の美女が。修道女とエルフ、どちらもこの大阪たいはんでは珍しい部類だ。


「なぜ、私たちを?」

「あなたの目に明確な敵意がなかったから」


 それを言ってしまえば三刃は敵意があったと思うが、大丈夫なのだろうか?


「私たちはラビ君の味方だからね。あなたはラビ君の敵ではない。そうでしょう?」


 ラビ君とはあのホーンラビットの事だな。それならば明確に「その通り」だ。むしろ眼中にすらなかった。あの瞬間までは。


「あの、彼は、いったい、どのような存在なのでしょう。斬れないと感じたのは久々でして」


 私は素直に疑問をぶつけた。

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