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第118話:レッドエリアの孤児院

蒼尉あおいは男の子です。朱里ちゃんと同い年くらいです。名字はありません。貴族とかじゃないんで。

 前回までのあらすじ。おっぱいの大きなお姉さん、あ、多分、葛葉くずのはよりも大きい、が「動くな」って言ってぼくにすっごい鉄拳ぱーんちを放ってきた。いや、避けられたけど多分当たっても死なないと思ったし、それに動くなって言ってたからね。問答無用な人なら動くなとは言わなかっただろうし。えっ? 動くなってぼくじゃなくてマリエさんに言ったこと? ま、まあ、結果オーライだったし。


 で、スラムの子の面倒見てるアニキとやらが部位欠損になったらしい。うん、まあグレンといた頃はマリーが平然と治してたけど、本来なら物凄い難しいらしい。篝火かがりびさんに聞いたら金貨が十枚、二十枚じゃあ足りないんだって。


 で、スリをしようとしてた子はそのお金を稼ぐべく日々頑張ってるんだって。いや、頑張る方向間違ってない? というかスリで日銭稼いでも生涯かけたところでお金は貯まらないと思う。


「あんたらにゃ関係ねえ事だ。この通り、謝るぜ」

「わかりました! 私たちがお手伝いします!」


 頭を下げた朱里あかりさんにマリエさんがふんすという顔を見せた。なんだろう、このやる気は。


「私も孤児院の出身ですから、そういう大人が居ない時にどうやって稼いでいたかは多少なりともノウハウはあります。だから、お手伝いしたいんです」

「いや、これはレッドエリアの問題だ。部外者のあんたらにどうこうしてもらうモンじゃない」


 ピシャリと言い切る朱里さん。さん、にー、いち、ピシャッ! だけどマリエさんは続ける。


「朱里さん、先程私たちに詫びを入れに来た、と言いましたね? 詫びの具体的な内容は?」

「あ、ああ、そっちの言い分をある程度飲む。レッドエリアの責任者に出来ることはそんくらいだ。あまり金がかかりそうなのは相談させてくれ」

「でしたら詫びとして私たちに関わらせてください」


 マリエさんはニコニコしている。篝火さんは頭を抱えている。クロさんは……諦めたように首を振った。虹香さんはワクワクしている。


「いや、しかしねえ」

「レッドエリアのトップともあろう人が約束を反故にすると?」

「ああ、もう、わかったわかった。じゃああたいについてきてくれ。孤児院に戻るからな」


 そう言ってホテルから出る。従業員は笑顔で見送ってくれた。


「しかしあんたらも変わってんな。普通こんなことはしねえぞ?」

「私は、この子たちに出会えてなかったら孤児院からどこかに売り飛ばされていたかもしれないので」

「なるほどなあ。でも、うちの孤児院は誰も売り飛ばさねえからな」


 グリーンエリア、イエローエリアを通り、レッドエリアに戻る、途中で山田さんに会った。


「おや、マリエ様、と朱里ですか。珍しい組み合わせですね」

「あ、山田さん。また会いましたね」

「げっ、山田の旦那」

「悪い事はしてませんよね、朱里?」

「も、もちろんでさあ」


 どうやらこの二人にも何かあるみたいだね。マリエさんは変わらずニコニコしてる。状況掴めてないのかもしれない。ぼくも含めて警戒態勢を取ってる。


「それでマリエ様はなぜこちらに?」

「はい、朱里さんをお手伝いするんです」

「朱里?」

「何もしてねえよお」

「そうですか。お気をつけください。イエローエリアの出口まではお送りします」


 そうしてイエローエリアとレッドエリアの境目の門まで来た。少し血の臭いがする。何かが殺されたみたいな臭いだ。


「戻られたら私を呼んでください。ちゃんとご寝所までお送りしますので」

「色々ありがとうございます」


 見送りで手を振ってくれる山田さんを尻目にレッドエリアへと入る。空気が変わる。喧騒が荒々しい。そこかしこで喧嘩が起こってたりする。朱里さんを見かけると手を止めるのは面白い。直立不動になって、ぼくたちは仲良しです!って宣言するみたいに。


 そうやって朱里さんの先導で歩いて行くとデカい洋館、それも崩れ掛けの洋館があった。


「ここだよ。元はお貴族様の別荘だそうだが。まあ今は有効活用させてもらってるよ」


 そう言って扉を開けると奥からわぁーっと子どもたちが飛び出してきた。


「おかえり、朱里姉ちゃん!」

「おかえりなさい、朱里さん」

「おかえり、朱里!」


 口々に朱里さんの名前を呼ぶ。相当慕われてるんだろうな。そして朱里さんは一人一人の頭を撫でるとぼくたちを連れて廊下を進んだ。


 廊下の奥、そこの一室のドアをノックして「入るぞ」と返事を待たず開ける。中にはマリエさんの財布をスった少年とそれと同じくらいの年頃の男女が二、三人。そしてベッドに横たわる一人の青年。


「やあ朱里、おかえり」

蒼尉あおい、ただいま。調子はどうだ?」

「心配しなくてもどうもなっちゃいないよ。この子たちも心配するからね」


 そう言って周りにいる子たちの頭を撫でる。なるほど、この人がアニキってやつか。

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