第113話:大阪(たいはん)の光と影
上様の御威光すごーい
大阪。商人の街であり、流通の中心地。様々なところから色とりどりの食材が送られてくるところから天下の台所とまで言われる。もちろん料理人も多い。
「ふわぁ、大きい街だねえ」
感慨深そうにマリエさんが言う。入門に大した手続きもなく、すんなり通された。なんでかなって思ってたら、門の周辺はレッドエリア。いわゆる貧困層の街らしい。で、その中に更に門があって、そこからはイエローエリア、グリーンエリア、ホワイトエリアとグレードアップしていくらしい。
という事でイエローエリアの門に向かいます。途中でマリエさんが自分よりも歳下の男の子どもにぶつかられて尻もちをついた。危ないなあとか思ってたら篝火さんがその子をつまみ上げてた。
「スったもん出してくりゃれ」
「な、なんだよ。ショーコでもあるのか?」
「仕方ありんせんなあ。マリエ、ちょっとこの小僧バラして来るよって。なぁに五分もかかりんせん」
そう言ってキランと目を光らせた。
「ひっ!」
子どもは財布を落として駆けていく。
「気ぃつけなんし」
「ありがとう、篝火。気をつけるね」
マリエさんはさっきの男の子が気になっているのかチラチラと見ている。だけどそんな奴らはここにはいっぱい居るのだ。
「止まれ! ここから先は許可証が必要だ!」
「許可証ですか?」
「そうだ。持ってないと言うならまあ、購入してもらう事も出来るなあ。どうする?」
マリエさんが門番のニヤニヤした顔を見ながら懐から許可証を取り出す。門番はそれを奪うと……見る間に顔色が変わった。
「し、しししししし、失礼いたしました! 上様のお墨付きとはいざ知らず。とんでもねえことを」
「あ、あの、通してくれればそれで」
「もちろんでございます! ささっ、どうぞこちらへ」
門番さんが門の中の詰所に連れて行くとチンピラみたいな奴らがいた。もしかして門番の仲間?
「おっ、隊長。なんすか? そっちの女はいい女ですが、それはちょっと未熟じゃないですかね? どこに売飛ばすんですかい?」
「ばっ、馬鹿野郎! こちらのお方は上様の関係者だ!」
「ひえっ!?」
どうやらここの奴らは時々旅人を売り飛ばしたりしてるんだろう。効率悪いよねえって思ったけど、門番の合間にやってるからいいのか。
「おひょー、クズの臭いがしますねぇ。マリエ様、食らっても良いですかぁ?」
虹香さんが楽しそうに話す。蛇が話したというのも十分びっくりするよね。
「虹香。私たちは部外者です。この方たちに凶行をする事はやめましょう」
「はー、お優しいこって。食っちまえば楽なのに」
虹香さんが小さいからまだ何とか耐えられてるみたい。でも虹香さん、伸縮自在なんだよね、ある程度までは。
「では、私たちは失礼します。もうやめた方がいいですよ?」
にっこり笑うとマリエさんは門を抜けた。で、イエローエリアはまだ庶民の街といったところだ。ぼくらはそのままグリーンエリア、ホワイトエリアへと向かう。だってホテルの場所がホワイトエリアなんだもん。
グリーンエリアの門番さんはそれなりにきちんとしていた。持ち物検査もこの辺りから厳しくなってくるそうだ。ぼくらは厳しくされてないんだけどね。上様すごい。
ホワイトエリアの門番さんはもう門番というのもはばかられるようなスーツ姿の男性。接し方が紳士なんだよね。マリエさんとかポーっとしながら許可証取り出してたもん。
「確かに。それでは該当のホテルまでご案内します」
優雅に一礼するといつの間に用意されていたのか馬車があった。しかも揺れないの、この馬車!
そうして案内されたホテルは白い壁面の高級そうなホテルだった。なんでも、この国でいちばん豪華なホテルらしい。普通は泊まるのに紹介が必要らしい。
ホテルマンの人が恭しくマリエさんを迎えている。さてと、それじゃあぼくはどっか納屋にでも。
「それでは皆様、こちらにどうぞ」
マリエさんが虹香さんを抱えて、クロさんと篝火さんがそれについて行く。あれ? これはぼくも部屋に通される流れ? うーん、部屋の調度品は齧らないように注意しよう。
「ここの部屋には露天風呂が付いておりますのでごゆっくりされてください。お食事は入浴後に申し付けて下されば直ぐに用意致します」
露天風呂! あのお湯がたっぶりなお風呂だよね。いやまあそこまで水は好きではないけどお風呂は別だね。
「じゃあみんなでお風呂に入りましょう」
みんなでお風呂入るのは久しぶりだなあ。まあだいたいグレンと二人だったから男湯だけど。ここはそういうのないみたい。篝火さんが素晴らしいプロポーションを見せつけて、マリエさんがそれを見ながら何か胸の辺りをむにむにしてる。うん、マリーもやってたな。




