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第111話:虹蜺の虹が雄で蜺が雌

虹夏にしなかったのはせめてもの抵抗。

「マリエとやら、お主には新しい魔物をテイムしてもらおう」


 敖欽ごうきんさんがそんな事を言い出した。なんか敖欽さんのバリトンボイスで言われると今から試練が始まる!みたいなかんじがしますね。


「新しく、テイム、ですか?」


 おっかなびっくりしてるマリエさん。そりゃあそうだろう。テイムってのは心を通じさせて行うものだ。ぼくとグレンだってそうだったんだ。いやまあ、ぼくは死にかけてたらしいんだけど。


「左様。正直に言えばそこな篝火かがりびとやらでは力不足だと言うておる」

「そんな! 篝火は、篝火は強いです。強くなります!」

「あるいはそうかもしれん。化け狐の化生で強い輩なぞまだ知らんがな」


 ええと、ぼくは知ってるからなんとも言いづらいんだよなあ。敖欽さんは多分ヴリトラと同レベルだろうけど、葛葉くずのははティアマトさんと同レベルって言ってたもんなあ。


「一体、誰をテイムしろって言うんですか?」

「そうだな。こい、げい


 敖欽さんが呼ぶと、にょろんと身体の表面が虹色に輝く蛇が現れた。蛇ねえ。時々野原で見かけたりはするけど、向こうもこっちを狙ってこないし、こっちも攻撃しないからね。


 森の中にはもっとデカい蛇も居るらしいし、そいつらはこっちを丸呑みにするらしいけど。ぼくらにはツノがあるからね。


「あの、広利王様? 私、こう見えて色々忙しいんですけど?」

「ユルルングルの娘の中でいちばん暇なのはお主であろうが。兄も姉も降雨の仕事をしておるというのに」

「ええ〜、じゃあお仕事ですかぁ? めんどー」


 もうとことんまでやる気なさそうなやつだなあ。本当にこいつを?


「こやつの父親はユルルングルと言うてな、昔大暴れして姉妹を呑み込んだりしたので、娘や息子たちにその償いをしてもらっておるのだ」


 親の尻拭いを子どもにさせてるの? それって児童虐待じゃないかな? 子どもの人権を守れ!なんて事は言わない。龍族には龍族のやり方があるだろうしね。


「それなのにこやつと来たら食っちゃ寝食っちゃ寝して、仕事をせん。潜在能力的には申し分がないから更生して連れて行けるならば戦力になるだろう」

「ええと、つまり、この子をテイムして欲しいと?」

「左様。サボり魔だから働かせるには一苦労するがな」

「えー、働くのいやぁー」


 なるほど、なかなかの怠惰だ。多分脳は震えないけど。


「……分かりました。話をさせて貰います」


 そう言うとマリエさんはぐったりしてるげいの前に座った。先ずは目線合わせからだ。でもねえ、相手は地面にべっとりしてるから顔を地面に近付けないといけないよ。


 マリエさんはちょっとごめんねって言ったと思うと、平べったい岩の上にげいを載っけた。なるほど、高さを合わせたのね。


「あー、あんただぁれ?」

「私はマリエ。テイマーです」

「ふぅん、あんたがね。まあ話は広利王様から聞いちゃいるんだけどさぁ」

「うん、それは置いておいて、どうしてお仕事しないの?」

「だってめんどーじゃん? 仕事は兄さんや姉さんで足りてるんだし、私一人がやらなくてもねぇ」


 やれやれ、って手があったらやってると思う。


「怖いの?」

「はぁ?」

「出来ないことが、じゃなくて、兄や姉よりも強くなってしまうのが」

「…………」

「私にはわかるよ。あなたの中にあるのはとても強い魔力だって」

「あたしは……」


 どうやらげいの中にあるのはかなり大きい魔力みたいだ。それをげいも分かってるんだろう。


「私たちと一緒に来れば兄や姉と比べられなくても済む、いえ、強くなってしまった事に理由付けが出来る」

「!!」

「私たちと一緒に行かない? 兄姉に遠慮して力をセーブする必要無くなるよ?」

「わかった。じゃあお試しで、な」

「ありがとう。ええと、虹香にじかちゃん!」


 マリエさんが名前を呼んだらピカーっと光ってテイムが完了した。名付けまで一気にしちゃったのか。これは普通に合格点だろうなあ。


「ああっ、私の名前、虹香になってる!」

「え? いい名前でしょ?」

「虹ってオスの名前なんだよぉ」


 なんと! つまり、女の子に男の子みたいな名前付けちゃったってやつ? いや別に構わないと思うんだけど。虹香って言うならそっちは人間的には女の子の名前だろうし。蜺香げいかとかよりはよっぽど良いと思うんだ。


「まあ決まっちゃったものは仕方ない。よろしくね、マリエ」

「わっちは篝火じゃ。よろしゅうな」

『クロという。好きに呼べ』


 クロさんの念話初めて聞いたよ!? ってあんなに渋いの?


「あ、えーと、ラビです。正確にはテイムされてないんだけどよろしくお願いします」

「テイムされてない? いやまあそういうのもありなのかは分からないけどまあよろしくね」


 斯くして虹香さんが仲間に加わったのであった。

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