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第106話:ハイコートポロロッカ(適当)

晶龍君は陰陽五行についてはあまりよく勉強してないので、「お母様」がやるのを見よう見まねしてただけです。その時も火気を水気で散らす修行でした。

「貴様、龍種か!」


 巨漢の歓喜の声が辺りに響く。どうやら晶龍君が龍種だってバレたみたい。というかあんなブレス吐いたらそりゃバレるでしょ。


「ラビちゃん、怖いの? 大丈夫、リンファが守ってあげる!」


 いや、その、リンファさん? ぼくは出来たら下ろして欲しいのですが。確かにどこぞの熾天使マリーみたいにあまり硬くは無いのでまだマシですけど。


「リンファ、ラビさんをそのまま持ってなさい」

「はい、お姉ちゃん!」


 パイリンさんはぼくを解放してくれる気は無さそうだ。困ったなあ。


「ええい、まずは貴様から死になさい!」


 悪顔の奴が魔法をパイリンさんに向かって放つ。炎の魔法だ。まあポピュラーだもんね。


「させない! 水剋火! 水気を以て火気を制す。水壁!」

「なっ!?」


 いやいや。こっちが水を操ってたのは見てたでしょうに。目ん玉についてないの?


「くそっ、術師を殺せ! 兵たちよ、突撃だ!」

「ちくしょう、あいつ俺たちを盾にするつもりだぞ?」

「構うかよ。報酬丸損よりかはなあ。死んだらそいつは運が悪かったんだよ!」


 言いながら兵士たちが突っ込んでくる。これはもしかして兵士って名前のチンピラなのでは? ほら、この辺りにはローニン者とかいう奴らがいるって話だし。


 その昔、上様の敵に回ってた奴らがまだ残ってるみたいな。どう考えても単なる盗賊だよね。


「お前ら、突っ込めぇ!」


 リーダー格らしき男の号令に雪崩をうってこちらに突っ込んでくる。どうするんだろう。一人一人やってては絶対に間に合わない。


「金気を用いて水気を生じ命ずる。水よ来たれ。うねりとなりて呑み込め。大海嘯」


 突っ込んでくる兵士たちの武器の表面に水滴が灯り、それがどんどんと増えていって足元を覆う。人は水に足を取られると進むことが出来ないんだ。ぼく? ぼくはほら、身体全体が沈んじゃうからね。水が来る前に逃げるよ。


 足首が浸かるだけでもう動きが鈍くなるんだ。そのままの勢いでこっちに向かって来れる訳がない。まあ少しはホネのありそうな奴がいるみたいだけど、そういう奴らは用心深いので突っ込んでこない。


 みるみる水が溜まっていき、やがてその水がうねり始める。風は無い。というか影響を与える程は無いと言うべきか。


 パイリンさんが腕を前に倒すと、水が一斉にそっちに流れ始めた。背の低い人だと腰辺り、高い人でも膝の上辺りの水が進行方向と逆に流れてきたらどうなるか。まず、転けてそのまま流されるだろう。


「ううっ、な、なんなんだ、これは。こんなの、聞いてねえぞ!」


 そこらじゅうから呻き声が聞こえる。下手に死ねない威力で流されたみたい。まあ死んでるのも何人かいるのかもしれないけど。


「ふう、ラビさん、リンファ、大丈夫だった?」

「うん、お姉ちゃんすごーい! 私もやる!」


 リンファさんはやる気満々で身振り手振りしてる。


「ええと、きんき?を餅いって、すいき、すいか?を上手! みずよきたれ! あれぇ?」


 もちろん何も起こらない。餅とかスイカとか言われるとお腹空いて来るよね。草でも食べとこうかな。


「ねえ、お姉ちゃん、どうやったの?」

「リンファにはまだ早いからそのうち教えてあげるね」

「わーい、ありがとうお姉ちゃん!」


 姉妹のほのぼのしたやり取りを他所に、晶龍君は巨漢とまだやり合ってる。晶龍君、素手なんだよね。まあ龍鱗あるから少々は大丈夫なんだろうけど。


「喰らえぃ!」

「へっ、そんなのが当たるかよ!」


 獲物がデカすぎて晶龍君に当たらない、というのを理解したのだろう。手に持っていた戟を投げ捨てた。そして取り出したのは手で持つタイプの何か。なんだろう、あれ。刃のようなものが左右に付いてる。


「当たらぬなら当たる武器を使うまで!」


 巨漢が動いた。とても巨漢とは思えないスピードだ。いきなりこんな動きをされていたら戸惑って攻撃を食らっていたかもしれない。それまでの戟を振り回していた姿とあまりにも違うコンパクトな動き。


 でも、晶龍君はそれも織り込み済みだったみたい。繰り出される攻撃をパリィしながら捌いていく。しかし、相手も隙は小さいのか弾かれてもお構い無し、と攻めてくる。


「ふははははは、楽しい、楽しいぞ、龍種よ!」

「オレとしちゃあ早く倒していちゃつきたいところだけどな」


 倒してもいちゃつかなくていいと思うんだけど。多分、晶龍君が遠慮してもパイリンさんがグイグイ来そうだもんね。今も目がハートマークだし。


「うおおおおおおおおおおおお!」

「どりゃああああああああああ!」


 抉り込むように晶龍君の顔面に攻撃が叩き込まれる。ニヤリと笑う巨漢。ても、その笑顔が次の瞬間凍りついた。


「オレが龍種じゃなかったらいいとこいってたよ、お前」


 晶龍君はお返しにとばかりにニヤリと笑うと腹に目掛けて掌底を叩き込んだ。

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