第1話:ぼくとグレンの始まり
新連載です!
どこまで行けるか分かりませんが頑張ります。
初めて会った日の事は鮮明に覚えている。
産まれたばかりの頃はあまり覚えていない。産まれてからしばらくは母の乳を食んでいたんだろう。それから野に出て獲物を狩った。兄弟たちも競うように狩ったし、狩ってる中で逆に狩られた兄弟たちもいた。弱肉強食というやつだ。
その中でもぼくは特別らしく、他の兄弟よりも素早く動けた。だからなのか、あの時、人間が大量に襲ってきた時もぼくだけ逃げ切る事が出来たのだ。
ぼくは必死で逃げた。逃げて逃げて、人間の居なくなる所まで、逃げて、逃げて、逃げて。辿り着いたのは小さな湖。喉がカラカラになって見つけた湖に懸命になって食いつく。喉を水が潤していく。そんな感覚に夢中になっていたら、デカい熊の様な奴に吹っ飛ばされた。油断した。水に夢中になっていなければそんなトロい攻撃なんか喰らわなかったのに。
身体の節々が痛み、血が流れる。これはもう、ダメなんだろうか。油断しちゃったな……
それでも諦めきれず熊を睨みつける。すると次の瞬間、熊の体が崩れ落ちた。ぼくは何もしていない。もしかしてぼくの身体に何か特別な力でもあったのだろうか。
「やれやれ、大物が獲れた……ん?」
人間だった。そうか、あの熊を倒したのは人間なんだな。なるほど。じゃあぼくは熊に食べられるんじゃなくて人間に食べらるのかな。
「ホーンラビットか。なるほどこいつは晩飯のオカズが一品増えそうだ」
人間はナイフを取り出してぼくに突き立てようとした。血が足りない。抵抗出来ない。このまま、死んじゃう、のかな。
「お父さん、そのホーンラビット、ぼく飼いたいな」
「グレン、お前が飼うのかい?」
「そうだよ、天啓でぼくの職業が獣使いになったでしょ?」
「そうだったな。ならホーンラビットはお前にやろう。怪我をしてるからな。治療してやりなさい」
えっと、何が起こってるのか分からないけど、生命だけは助かったのかな?
「ぼくの名前はグレン。ええと、君の名前は……そうだ、ラビにしよう。ホーンラビットだからラビ!」
グレンがぼくの名前をラビと名付けると、ぼくはすんなりとそれを受け入れられた。なんか死なないみたいだし。
「よろしくね、ラビ。あ、傷痛むよね。治療してもらおう」
傷が痛む、と言われたが、このグレイという少年に名付けられた時、傷が無くなった気がした。気のせいかもしれないけど。でも、痛みが無くなってるからきっと気のせいじゃない。
『ありがとうグレン』
「わわっ、しゃべった!? もしかして今のはラビの声?」
『あれ? 聞こえるの? ぼくはラビ。グレンにつけてもらった名前だよ』
「そっか! じゃあラビ、これからよろしくね。ぼく達はずっと一緒だ!」
『うん、ずっと、ずっと一緒に居たい』
ぼくもグレンも小さかった頃のあの日の思い出。今でも鮮明に思い出せる。
そんな思い出に浸りながらぼくらは旅をしている。グレンはテイマーとしての実力を高めていた。使役する魔物はどんどん強くなっていく。初めのうちはぼくが戦闘していたのに、段々とそれが他の魔物たちに代わっていった。
ぼくの次に加入したウルフは実はフェンリルという魔物の子どもだったらしい。あっという間に大きくなって、ぼくの代わりに戦ってくれた。それでもぼくはサポートしながら戦いの場に出ていた。
次に街中で拾った猫がベヒーモスの幼体だった。小さい頃は可愛かったのにあっという間にぼくを追い越していった。
フェンリルもベヒーモスも二人ともとても強くてぼくの出番はまあ的を増やして撹乱するって程度。それでも一応の役には立っていた。それも仲間が増えるにつれて出番は少なくなっていった。
グレンもその辺で一人じゃなくてパーティメンバーを引き入れたんだけど、その二人とも人間じゃなかった。まあ一人は明らかにエルフって感じだからそもそも人間じゃないんだけど。
一人は敬虔なシスターという感じの胸が控えめなお姉さん。ギュッてされると肋骨がゴリゴリ痛かった。口に出して言うとしめられるけど。このお姉さんがセラフだった。正体バレした時は「私を縛って!」って叫んでたからみんなでドン引いた。
更にエルフの女性はドライアドだった。こっちも胸部装甲は控えめだけど、セラフみたいにぎゅうぎゅう抱きしめてこないで撫でるだけだったから助かった。でも肋骨はきっと硬いと思う。
グレンはよっぽど薄い胸が好きなのかと思ったけど、次に拾った妖狐はムチムチプリンに化けてたからきっと違うんだろう。怪我した魔物は放っておけないってのはグレンのいいところだと思う。
まあその次に加わった古城のヴァンパイアも貧乳だったから依然として疑いは残ったんだけど。おっぱい小さくても妖艶さは出せるのよって力説してたっけ。体型ある程度操れるんだから盛ればよかったのに。