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100年前の恋バナ  作者: コーノ・コーイチ
一生食べたい菜の花のみそ汁
18/22

四話 あかいお顔のだれかさん



 その後、食事は配膳台でちらし寿司を並べました。


 そして皆で席につきます。今日は席が決まっているようで、私はヨシエさんに言われる通りの席に座りました。

 席の並びは男女一列で向かい合う形でした。


 男子の列は長男のマサさん、次男のリョウジさん、三男のトシさん。

 女子の列は長女のヨシエさん、次女のミエちゃん、私ことアッコ。その横に高見家の又従姉妹のセッちゃん、三女のヨシ子ちゃん、四女のアキちゃん、五女のサチちゃん。

 そして良一様は上座。ヨシエさんとマサさんの間で皆を見渡せるように座ります。


 え?なにこの席順?


 いつもは円を作って座ったり、なんとなく列になっている程度だったりですのに、今日はしっかりと整列しています。


 あっ、ひな祭りだからかな?

 と、納得するも、私の正面がトシさんで、ついつい意識してしまいます。


 その、私のお化粧はどうでしょうか?変じゃないでしょうか?

 聞きたいですが、食事前にする話ではないです。


 トシさんは……こちらを気にしているでしょうか?

 顔を上げたくても、なんでか上げることができませんでした。


 良一様が静かに「いただきます」と言い、それを合図にみんなで食事をはじめます。


 みんな、モクモクと食べています。


 高見家において食事中は楽しくお話をする家庭でして、食卓では今日の仕事の成果とか、学校でなにを学んだかを報告も兼ねてお話をします。


 が、今日はいつになく静かです。水を打ったような静けさとはこの事です。

 おしゃべりなセッちゃんですら、モクモクと食べています。


 その中で口火を切ったのは長男のマサさんです。マサさんはこの後にお仕事なのか、亜麻のクリーム色をしたスーツの上着をヒザの横に置き、お箸をすすめていました。

 マサさんがポンと箸を置き、口を開きます。


「なんだ、今日はみんなきらびやかやね。お雛さんを見てご飯を食べているみたいや」


 それを聞き、良一様が嬉しそうにうなずきます。


「ほんとうに、娘たちと元気に春を迎えられてなによりだ。みんな顔色もよくとても可愛らしい」


「ほんま、ほんま」とリョウジさんが続けます。

「なかでも、アッコさんはほんまベッピンさんや。めかしこまんでもベッピンやけど、少し整えただけでどこぞのお嬢様みたいや、な?トシ?」


 話を振られ、トシさんは「せやな」と小さく返します。


 そんな彼の姿をこっそり確認するため、お椀のお汁をすする仕草をしながら上目で見つめます。

 すると、向こうもこちらを同じように見ていたので、慌てて視線を下に落としました。


 一瞬のことですが、私はトシさんの変化に気付きました。

 彼の髪型はいつも短めで自然になびかせていましたが、今日は左右にキッチリと分けた散切り頭でした。


 服装はいつもの和装ですが、色落ちしていない紺色で、シワもなく、おろしたてだということが一目で分かりました。


 そこに気付いたことで、私の顔はまたも沸騰しそうなくらいに赤くなります。


 この後、食事のあと、神社で、ランデブーで、トシさんに何か大事な話をされる!


 そう確信したから、意識しちゃうから、顔が熱くなったのです。


 だって、キッチリと髪や服をキメて、それでお誘いをしたってことは……そういうことでしょ?


 色々と考えてしまって頭が回らない私に気づかってか、ヨシエさんが話を続けます。


「ほんで、お昼のあとにみんなで神社に行こうと思ってるんだけど、私は小さい子たちを見とくから、トシはしっかりエスコートするんよ」

「わかっとる、ごっそさん」


 ぶっきらぼうにトシさんが言って、お箸を置くと部屋を出ていきます。


 ヨシエさんは「あらあら」と、頬に手をそえました。


「今のはヤブヘビやで」

 ミエちゃんに言われ、ヨシエさんは苦笑いをします。


「だって、つい~、ね?アッコちゃん」


 私に聞かれても、出せる言葉はありません。

 代わりにセッちゃんが言います。


「おかわり!」

「あらへん」


 ミエちゃんがきっぱりと言いました。



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