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100年前の恋バナ  作者: コーノ・コーイチ
一生食べたい菜の花のみそ汁
13/22

三話 冬の間の過ごし方


 冬になると百姓はお仕事が無くなる…ということはありません。


 男手は炭を焼いたり、畑や野道を焼く野焼きをしたりしています。

 女手は縄をあんだり、草鞋をあんだりです。あとは衣類の修繕とかですね。

 それと、天気の良い日に山菜を採りに行きました。


 特別に忙しい、ということはないですが、暇と言うこともないです。家事だってありますから。

 お仕事の中でも特別だなって思ったのは『わらじ作り』でしょうか?

 いえ、わらじを作るのはうちが住む山でも作りましたよ?子供でも学校の修身の授業で習いますから。

 ではなにが特別なのか?それは作る量ですね。


 たくさんのわらじは高見家が畑や土地を貸している人々に配る用なのだそうです。前に私がたくさん作った保存食同様ですね。


 地主はこういうこともするんだな、と勉強になります。


 わらじは大事に使っても1ヶ月もつかどうかですので、あって困らないものです。なので、製糸工場の職業婦人並みにせっせと編み器で作っていました。


 それで手が空いたら私は高見家の敷地内にあるウネの世話をしていました。

 ウネは勝手口から出てすぐなので、様子がよく見えます。広さは一畝いっせの3分の1くらいでしょうか?だいたい10坪ほどで、敷地内に中々の広さです。


 そのウネで私は小さな雑草を抜いたり、石灰や肥料をまいて土力を高めたり、形を整えたりしています。


 すでに菜の花の種はトシさんと一緒に植えました。なので後は芽が出るのを待つだけですね。


 時折ですが、私の知らぬうちにウネがキレイに整地されていることがあります。トシさんかな?と思い聞きに行くと、どうにも違うようでした。

 ミエちゃんでもなかったので他の誰かでしょうか?小さい子たちとも考えづらいですし、ヨシエさん?


 そういえば、ヨシエさんで思い出しましたが、どうにもヨシエさん、来春にお嫁へ行かれるそうです。

 わらじを編みながらミエちゃんに結婚の話を聞かされてビックリしました。


「そんな話が進んでいたんだねぇ」

「そうなんよ。ほれ、正月にセッちゃんとこ家族で挨拶に来とったやろ?」


「凧あげした日だよね?あ~」

「そ、あん時に色々と話があったんよ」


「なるほど~、喪中で正月の元旦に来るなんておかしいな~って思ってたの。ふつうは松の内(1月7日以内)のどこかで挨拶するから」

「急な話やないんやけども、色々あったしな。あと地主なりに初詣の出店の管理とか忙しいでな。2日からでもおとん、仕事に行ってたやろ」


「それで、元旦なんだ。で、そのときの凧あげは子供の人払い?」

「やろな。しっかし、16で姉が嫁に行くなんてな」


「あ、ヨシエさん16なんだ!?」

「老けて見えるやろ?」


「鬼の居ぬ間になんてことを……落ち着いているからもう少し上かとは思ったけども……でも早くない?」


 大正時代では、結婚年齢がだいたい18才から22才くらいでした。

 数年後に出た有名な童謡の曲に『15でねえやが嫁に行き』なんて歌詞がありますが、大正時代でも15という年齢は早い方でありました。


 高見家はしきたりとかで結婚が早いのでしょうか?

 そう思ってミエちゃんに聞いたのですが、逆に聞き返されます。


「アッコさんはいつ結婚したいん?」

「へ?私?ん~、20すぎくらいかなぁ?」


「トシ兄と?」

「ぶふぅッ!?」


 突然でた名前に思わず吹き出してしまいます。


「な、なんでっ?」

「いや、抱き合っとったやん、人前で」

「あれは事故です!」


 私は顔を真っ赤にしながらピシャリと言います。


「えぇ~?それはムリあるやろ?なんやコソコソ畑に種をまきよってからに」


 訝しむミエちゃんでしたが、本当にこれといって進展はありませんでした。

 まあ、喪中でしたし?いえ、すでに忌中ではないですが、冬ですし、そういう話にはならないというか、仕えている身でそんな話なんてできないというか、


「とにかく、なにもないの!」


 と、私は話を終わらせます。

 ミエちゃんはなにやらブツブツと、「トシ兄もあれで奥手やからなぁ~、ウチがなんとかして……」なにやら小声で言っていますが、私は無視をしてわらじを編みました。


 それからは本当に何事もなく一月が過ぎました。


 しかし二月の終わり頃、春先になり気候がおだやかになりつつある頃に事件が起きたのです。


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