損な役割は男の仕事
思いついたままに書き上げた小説です。ただ、書き直したいとも思います。いつになるかは、分かりませんけど・・・・・・・・・・
自分で時々だが思う時がある。
『自分は損な性格』だってな。
明らかに仕事料を上回る仕事をしたり、仕事とは関係ない事にも首を突っ込んで、結局は損をする。
そんな自分に嫌気がさして次こそは、と思うんだが、どうなっているのか損な役回りをする事になっちまう。
この事は、仕事じゃなくてもある。
恋愛だ。
あんまり俺は女を作らない、好きにならないを主義としていて見持ちは堅い。
だが、そんな俺でも女を好きになる時はある。
どんな女かは、その時によって違う。
黒髪の女もいれば金髪、ブラウンの女もいるし、年上もいれば年下もいる。
スレンダーな体格もあれば、熟れた体格もあった。
付き合う所までは行く。
そこまでは、良いんだ。そこまでは・・・・・・・・・な。
そこから昔の男とか裏切りとかが割って入って来て、俺は損な役割を押し付けられる。
まったく神様っていう方が居るなら文句を言いたいぜ。
『善良なる市民である俺に、何でこんな損な役割を与えるんだ』と、な。
神父なら『神への忠誠を試されているのです』とか言うだろうが、俺から言わせれば迷惑極まりない。
まっ、そんなこんなで俺は何時も損な役割しか与えられないのだ。
だが、こうも思う。
損な役割は孤独な男の仕事なのだと。
そう思う。
いや・・・思わないとやっていけないと言い直そう。
下らない答えを心の中で出した俺は、グラスに注がれた琥珀色の液体を弄んだ。
今頃、あいつらは仲良く空のハネムーンへと洒落込んでいるのだろうか?
琥珀色の液体を見ながら、俺は二人の後姿を思い浮かべた。
猫背の男と寄り添うようにして歩く女。
ブラウンの髪はカールしていたが、艶があり綺麗だった。
二人に背を向けて俺は呟いた。
『Happily … Maria. (幸せに…マリア)』
人混みで聞き取れない程の小さな声で俺は呟いて空港を出たのだ。
俺は、琥珀色の液体を飲んだ。
代金を払い俺は店を出た。
外に出ると夕日が終わり夜になっていた。
「・・・一人でドライヴにでも洒落込むか」
愛車に乗り込んだ俺はエンジンを始動させて走らせた。
何処に行く?
・・・・さぁな。
ただ、決着を着けるとだけ、言っておこう。
俺が走らせる愛車は軽快に走り風を切る。
オープンカーのため風が直接、来る。
しかし、それで良い。
それで良いんだ。
オープンカーは、海に着いた。
夜の海を泳ごうとする者は、誰も居なかった。
俺は車から降りて砂浜に足を着いた。
ザザー
波の音だけがする。
俺は懐から真新しい紙に包まれ綺麗なリボンで結ばれた長方形の物を取り出した。
リボンを解き、紙を切り捨て、箱を開ける。
中には、真珠の指輪が入っていた。
俺が、あいつに渡そうとした物だ。
「・・・金の無駄だったな」
あいつに渡す前に、あいつは消えた。
俺は少し指輪を眺めたが、ギュッと握り締めて腕を振り上げて、暗闇の海に投げた。
宙高く舞う指輪。
その指輪を銃で狙いを定めて撃ち抜いた…
乾いた音が海に木霊する。
真珠のネックレスは音を立てて粉々になった。
幾つもの真珠が海へと消える。
今までの想いをリセットするかのように―
キレイに輝く粒が海の中へと消えていく…
俺は背を向けて呟いた。
Good-bye, my eternal person and … Maria.
(さようなら、そして俺の永遠の人…マリア)