幸せ
特別お酒が好きではない
ただこの空間はとびっきり大切な空間だった。
「かつは、ずっと孤独よ、かつは自分が自分じゃなくなる事を恐れてるから、かつは誰か一人の物にはなれない。もし誰かと一緒になれても、それはかつが本当に望んでる物ではないわ。」
少し日が落ちるのも早くなって、少し肌寒い夕暮れに今日も目が覚める
「昨日も、沢山飲んだのね。」
そんな嫁の嫌味を聞かされながら、
気怠く起き上がる。
「すまない。」
「良いよ別に、特別予定もないし。」
あからさまに、不機嫌なのを隠し切れていないが、
いつもの事だ。
「そうだ、今日は何かご馳走するよ、これで許してくれ
かなの好きなイタリアンにする?」
「本当!?じゃーお洒落していかないと!」
「かつも早く着替えて!ありがとう!」
あからさまに、機嫌が良くなることも、
いつもの事だ。
「よかったよ、かなの機嫌がよくなって、
今日は白ワインでも飲もう。」
「嬉しいー!じゃーシャルドネにしよう!」
「うん、そうしよう。」
なんの変わり映えのない、いつもの会話
(これが俗にいう、幸せか、、、)
一緒に食事をして、一緒にお酒を飲み、二人で時間を共有する。
他愛もなく平凡で
ただそれだけで全てがどうでも良くなるような感覚。
「かな?幸せ??」
「うん!かつも幸せ??」
「あぁそうだな。」
かなと一緒にいれば、ずっとこんな感情で居られる気がした。
でも、それはもっと自分が苦しくなる事だとも、知っていた。