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おかわり! ~お屋敷を追放されたかわいそうな私と料理長は異世界を食べ歩きます!~  作者: 安井優
6品目 デシと花咲き誇る時

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283/305

283.いざ試食! 課題も見えて

 四人分のピザがリビングのテーブルに並ぶ。

 その光景はまさに圧巻!

 色とりどりのクリームに、アイスやフルーツ、頑張って作ったかわいい飾りつけがちりばめられたピザは、見た目にもおいしい一皿だ。


「すごいね……」

 いつもはクールなレーベンスさんもこれには驚きを隠せなかったのか、目を丸くしてじっとピザを凝視している。


「さっきまではピザがスイーツになるなんてと思っていたけど……これは本当においしそうだよ!」

 レックさんも気に入ってくださったみたい。お料理のイメージが強いピザも、飾りつけを工夫すれば本当にお菓子のように見える。


「贅沢なタルトみたいです!」

「お嬢さまのおっしゃる通りですね。見た目も美しく仕上がっていますし、これはコンテストでも受けるのではないでしょうか」


 ネクターさんも出来栄えにはホッと胸をなでおろしていた。

 想像以上の出来だったのだろう。見た目だけで言えば、本当に今までに見たどんなお菓子よりも豪華だし!


「まあ、料理は見た目だけじゃないし」

 レーベンスさんは食べたくて仕方がないのか、早速ピザに手を伸ばしている。

「そうそう、兄さんの言う通り。やっぱり味が大事だよね」

 さすがは双子だ。レックさんもレーベンスさんと同じくピザをつまみ上げて食べる体勢を整えていた。


「ネクターさん! 私たちも食べましょう!」

「お嬢さま、まだ生地が熱いので、火傷(やけど)にはお気をつけくださいね」

「もちろんです! って熱! 本当に熱いです!」


 レーベンスさんたちがひょうひょうとピザを手で持っていたから、大したことはないだろうと思っていたけれど。

 飾りつけをしていたとはいえ、焼きたてに近いピザだ。ふかふかの耳からまだまだその熱が伝わってくる。


 一度ひっこめた手を、今度はゆっくりと近づける。

 どれから食べようか迷ってしまうけれど、その時間でさえ楽しいから不思議だ。


「やっぱり、まずはシュテープからですね!」

 私は、自らのお屋敷が飾り付けられたシュテープのピザを持ち上げる。

 お家型のチョコレート以外にもたくさんのフルーツが飾られていて、華やかな一枚だ。


「では、僕は紅楼国(クロウコク)を」

 砂漠をイメージしたチーズクリーム。氷で作った岩山チョコレート。紅楼国(クロウコク)の要素をたっぷりと詰め込んだピザも、やっぱり見た目が楽しい。


 レーベンスさんたちは、シュガーローズがこれでもかと飾られたデシの一枚。

 みんなで好きなものを選んで食べられるところも、我ながら良いアイデアだったかも!

 これなら会場で知らない人とシェアをしても、自然と話が盛り上がりそうだし。


 全員でピザを軽く持ち上げて、乾杯の挨拶代わりにする。

 そこからはみんな早かった。

 あっという間に口へピザを放り込んで――


「んん~!」

「んっ!」

「うわぁっ!」

「うん」


「「これは、おいしい!」」


 思わず揃った声には、みんなで笑い声をあげてしまう。

 まったく別々のピザを食べたはずなのに、みんなの感想がまさか一緒だなんて。


「フルーツがいっぱいですごく食べやすいです! 甘すぎなくて爽やかで! でも、お家のチョコレートもあるから満足感があるし!」

「チーズクリームが良いですね。チョコレートの甘さとチーズのコクがすごくよく合います」

「デシのピザもすっごく甘くておいしいよ! 僕はやっぱりデシの人間だから、これくらい甘い方が好きだな」

「うん。僕もこれは気に入った」


 みんな口々に感想を言い合って、ピザを食べ進める。

 他の人の感想を聞いたら、やっぱりそれも食べたくなってしまうのだから不思議だ。

 我慢できない、と他の味も食べ比べたくなって手を伸ばしてしまう。


 黙々と食べ進めていると

「お嬢さま、あの……そろそろ真面目に反省会を……」

 とネクターさんが小さく挙手をした。


「そうだね。僕もその方が良いと思う」

 賛同したのはレーベンスさんだ。やはり、同じ料理人ということもあってか、コンテストに向けたアドバイスがあるのかもしれない。


「確かに、このピザはすごくおいしいのですが……。完璧ではありませんよね」

 ネクターさんもしみじみとうなずいて、ポケットからメモを取り出す。

「お嬢さまの意見はもちろんですが、お二人のご意見もぜひお聞かせください。デシの国の方々の好みもありますし」


 そっか。私にとってはおいしいピザでも、デシの国の人たちとはやはり味覚が違う。

 特においしいスイーツを日常的に食べ慣れている本国の人からすれば、このピザにだって思うところはあるだろう。


 意外にも最初に手を挙げたのはレックさんだった。

「僕は素人だけど、この中では一番スイーツを食べてる自信があるから言わせてもらうね。まずは、生地。僕はもっとサクサクしている方がスイーツっぽくて好きだな。後はサイズももう少し小さいほうが食べやすいし、おなかもいっぱいにならなくてすむと思う」


 彼の言葉に、ネクターさんはうなずきながらメモを取っていく。

 生地は好みがあるだろうけれど、大きさはレックさんの言う通りだ。私もちょうど三枚を食べ終えて、すでに満足している。


「僕も生地はもっと軽い方が好き。デシの人たちは甘いものが好きだからね。生地を薄くして、クリームがたっぷりのっている方が喜ばれるよ」

 レーベンスさんもレックさんと同意見らしい。


「そうですね、僕も生地はもっと改良が必要だと思っておりました。ローズオイルを加えましたが、飾りつけやクリームに味も香りも負けてしまって活かせていないですし……。やはり、飾りつけも重要ですね。制限時間の課題もありますし……」


 ネクターさんも自分の意見をしっかりとメモしていく。

 私にはおいしいピザだったけれど、言われてみればまだまだ改善できそうなところはたくさんある。


 私も一生懸命に食べた時の違和感を思い出して、アイデアを出す。

 ピザを食べながらの反省会は想像以上に白熱して、次から次へと新しい課題やチャレンジしたいことが見つかった。


 早速ホテルに帰ったら、ネクターさんと作戦会議だ。

 レーベンスさんたちから「明日以降もキッチンを貸してあげるよ」なんて申し出もあって、大きく前進できた、と私の心に希望の光が灯る。


「明日からも頑張りましょう!」

 ぎゅっと両手を握りしめると、ネクターさんも力強くうなずいた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初のスイーツピザができたッ! 色んな味が楽しめる、欲張りピザですよね、ホント。二人の反応も色良く、これは行けるか……ッ!? (⊃・ワ・)⊃ と思いきや、まだまだ改良の余地あり。生地は確…
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