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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第2章 多種族国家シェリル

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閑話 ハーラルト 同胞の処遇

俺は使いをシェリル国に送った。


何も問題が無ければ教えてもらえるはずだ。

子供を助ける吸血鬼が悪だとはどうしても思えない。

実際に会った時に感じたものだから間違っていないと思っている。


里長としての勘でしかないが、グスタフは相当な問題を起こしたと考えている。

記憶を消された状態で話してあの様だ。


性根は腐っていた可能性が高い。


今日には帰って来るはずだ。

獣人と敵対していなければだがな。


噂をすればだな…。

走る足音が聞こえて来た。


「里長、ただいま戻りました…」

「おお、お疲れ様。無事で何よりだ。子供たちはどうだった?大人の獣人はいたか?」


この質問で問題の答えが出ると思う。


「学校という場所へ案内して頂きましたが、子供たちは一生懸命に勉強をしていました。なんでも、子供は無料で色々な事が学べるそうです。子供の親の獣人は普通に暮らしていました」

「そうか、やはり子供たちは元気に過ごしているんだな。それで、肝心の話は聞けたのか?」


子供たちは元気に過ごしていて親の獣人も暮らしている。

やはり、飛ばされたのは問題を起こした獣人だけだな。


「はい。国の機密になる事以外は教えてもらいました。あの国はシャーロット様が1人で守り続けていて、人が守って欲しいと考えて組織されたのが討伐隊でした。そして、討伐隊が訓練中に壊滅した後、新たな隊長に立候補したのがグスタフで、グスタフがやる気のある獣人たちに声を掛けて作った組織が国防隊でした。彼らはシャーロット様の秘儀を知りたかっただけで、国を守る気も無く強くなって威張りたかった。弱者を甚振りたかっただけのようです。その為、秘儀を使えなくするように呪いをかける事になったのですが、国防隊の連中が余りにも見苦しい言い訳をした結果、今に至ります。グスタフが助命嘆願をしたそうですが、自分の記憶まで消されるとは思っていなかったようです」

「そういう事か。国を守るのは命懸けだ。どうせ、そんなつもりもない。秘儀を知って優越感に浸っていただけか。その中の1人がグスタフで、区長でもあり隊長だった訳だ。国を守る気も無い奴が区長で隊長は笑わせるよ。頑なに1人で攻めようとしない訳だ。やはり命懸けは怖いのだろう。他者を利用する事しか考えていないな。その酷さが限界を超えたのだろう。生きて里に戻れたのが奇跡だな」


「はい。街長はその場で殺されると思ったそうですが、シャーロット様の娘のヴィーネ様、古代種(エンシェント)ドラゴンが種族対立になるとまずいという事で、記憶消去で区長の椅子に座り続けさせました。しかし、他の区長も腐っていた為、街全体の邪魔な人間や獣人を飛ばして欲しいとヴィーネ様にお願いしたところ元冒険者は冒険者組合へ、国防隊の隊員はこちらに飛ばされたようです。今は区長制度を廃止してヴィーネ様が国長となっております」

「娘がいたのか!しかも古代種(エンシェント)ドラゴンは短命種からしたら神のような存在だ。その神が国長とは凄いな。種族対立は面倒だが、それでも飛ばされるような区長だったって事だ。国を守る気のない、国防隊の隊長だった区長を飛ばしたのは当然の判断だな。元冒険者も冒険者組合に飛ばされているんだ。至って公平な判断だ」


とんでもない国だな。

あの吸血鬼ですら化け物のような力を持っていると思っていたが、娘が古代種(エンシェント)ドラゴンとは。


もともと敵対は無理だと考えていたが、もはや不可能だな。

確実に皆殺しになる。


そんな国が記憶消去で里に送って来たのは、やはり恩情だろう。

区長として仕事をしてきたからなのか明確な理由は分からないが、記憶を消して秘儀を忘れさせれば獣人の里で暮らせると考えてくれたのだろう。


しかし、記憶が消されても性根はそのままで結局クズだったって事か。

やはり、救えないクズの集まりか。


集めたのが最もクズだからな。


獣人の里なら間違いなく処刑だ。

国を守る組織の隊長が敵前逃亡したようなもんだ。


自分より弱者を甚振る為だけに作った組織か。

本当に獣人の恥だよ。


隊長になった優越感、秘儀を知った優越感、弱者を見下す優越感。

それらが、気持ち良くて仕方が無かったのだろう。


これは駄目だな。

思った通りの結果だ。


いや、想像以上に酷い結果だな。


最終確認だけはしてやるか。

顔馴染みとしての最後の恩情だ。


足蹴にしてくれるなよ!


「グスタフを連れてこい」

「かしこまりました」


部下が、少しやつれたグスタフを連れてやって来た。


「おい、情報を集めてやったぞ。お前の言った通りだったよ。復讐する必要があるな」

「だから言っただろう。仲間を集めてくれ。必ず復讐をしてやるよ」


最初に出た言葉が仲間を集めろか…。


「そこでだ。お前には一番槍をお願いしたい。味方の士気を高める為だ。いいだろ?」

「俺は記憶を消された奴らの上司だったんだろ?作戦を考える立場じゃないのか?」


逃げるのか?

お前は本当にそれでいいのか?


国防隊の隊長だったんだぞ。

命懸けだったんだよな?


「作戦を考えるのは里長の俺の役目だ。お前も作戦を考えたいなら里に残れ。復讐は他の奴らに任せろ」

「本当は現場で作戦指示を出したいのだがな…。仕方が無いか。俺は里に残って作戦を一緒に考える」


言い訳まで用意して、あっさり戦場から逃げるのか。

さっきの話し通りじゃないか。


自ら復讐を口にして仲間を集めて敵前逃亡だ。

最低の行為じゃないか。


「お前の復讐心はその程度だったのか?自分で成し遂げたいんじゃないのか?」

「いや、同胞が復讐してくれるなら俺は満足だ。俺たちが考えた作戦が成功したって事だからな」


もう限界だな。

最後の質問だ…。


「やはり、お前の復讐心は弱い!里に残るか一番槍かどちらかだ。作戦は俺が考える」

「うーむ…。俺が一番槍では味方の士気が下がるだろう?ずっと軟禁されてきたんだ。俺は静かに里に残る事にするさ」


俺の恩情も足蹴にされたな。

言い訳ばかりだ。


復讐したがっていたのはお前たちだけなんだぞ?

自分の言葉の意味を理解していないのか…。


「分かった…、里に残るんだな。そのように対処しよう。連れて行ってくれ」

「かしこまりました」


本当に口だけだったな。

仲間の事を同胞と言いつつ駒としか思っていない。


自分が助かる事しか考えていない。

その為には誰が犠牲になっても関係ない。


お前たちは必ず獣人の里に害をなす存在になる。

自分の利益の為に他者には死をも厭わない。

確実に処分するのが里の為だ。


シェリル国が情けで助けた命だ。

里も情けをかけてやろう。


静かに眠るように死んでくれ。

そして、里の墓に埋めてやる。


それが、里ができる最大限の情けだよ。

他者を利用する事しか考えていませんでした。

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