閑話 ジェラルディーン 気になる動向
もう、あの子たちの行動が気になって仕方がないわ。
決してドワーフの国の建国が進んでないからじゃないわよ。
母親として、あの子たちを放っておけないの。
本当よ?
ドワーフが私を見たら逃げるから火を吹いちゃうのも仕方ないわよね?
結構頑丈な盾をもっているから安心しちゃうわよ。
守りは強いのよね。
まあ、余談は置いておいて、あの子たち海底に向かったわね。
ポセイドンに会いに行ったのかしら。
本当に多種族を国に誘うわね。
私としては遊びに行った時に面白くなるからいいけどさ、ちょっと心配じゃない。
世界を周っていると色々と良くない噂を耳にするからさ。
ちゃんとあの子たちが去ってから行くのがお母様よ。
いいえ。
お姉様としての、や・さ・し・さ・よ!
誰かあの子たちに言っておいて欲しいわね。
長老は当てにならないし。
他には…、いないわね。
お祭りの日に長老と飲んでいる場合じゃなかったわ。
たくさん友達を作らないと面白くないわね。
私の美貌なら男なんてチョロいのよ。
でも、あの子たちの話を聞くなら女の方がいいわよね。
おっと…。
話がまたそれたわね。
あの子たちが去るまで蒸気風呂で気分転換しておきましょう。
嫌な物を目にする可能性もあるからね。
さて、行きますか。
転移。
あら、綺麗なままじゃない!
以前よりも綺麗になってない?
噂の真相はどうなのかしら。
とりあえずお城に向かいましょう。
誰も泳いでいないけど争った形跡もない。
かなり強固な結界が張ってあるのに私が通れるようにしてある。
きっとシャルね。
ほんと細かい気遣いが可愛いわ。
「ポセイドン、いるじゃない。なに1人で寂しそうにしてるのよ?」
「こ、これは、ジェラルディーン様。何かあったでしょうか?」
何かあったのは、あなた達でしょうが。
誰もいないのも変だし。
嫌な噂を耳にしたし。
「嫌な噂を耳にしたのと、娘たちが遊びに来たでしょ?様子を見に来たのよ」
「お2人とも娘ですか。本当に不思議ですな。妻と娘たちを救って頂いて、この通り国も綺麗に直して頂きました。魚人に捕まって儂以外は皆売られてしまったのですが何とか生きて帰って来れました。即座に回復して頂きましたので怪我も今はありません」
そういう事をするのはシャルらしいわね。
攫われていた妻や娘に怪我がない訳が無い。
それを見せたくないから即座に回復したのでしょうね。
「じゃあ、何で皆いないの?アムピトリーテーにも会いたかったのに何しているの?」
「妻はシェリル国で魚やサンゴを売っています。娘たちは勉強をしております。二度と魚人に捕まる事が無いように魔法の勉強等をさせてもらえるとの事でしたので」
シャルが体を壊して習得した技術を教えている学校ね。
本当にどれだけ自己犠牲するのよ、あの子は。
他者の為に自分を追い詰め過ぎよ。
アムピトリーテーは恩を感じてお店をお手伝いしている訳ね。
何でこいつは1人でここにいるのよ!
「あなた、何でここに1人でいるの?一緒に行けば良かったじゃない。シャルたちにお願いすれば大きいお店も作ってくれたと思うわよ?」
「いや…。妻に城を守って魚を捕まえたりサンゴを取りに行って来いと言われまして…。お土産でお酒を飲ませてもらったのですが、余りにも美味しかったものですから…」
こいつも土地神りんご酒の虜になった訳ね。
まあ、分かるけどさ。
本当に美味しいからね。
「でも、噂は本当だった訳ね。何であんたが負ける訳?1人でも魚人相手なら勝てるでしょうが!」
「同じ仲間だと思って油断しておりました。まさか、全員が裏切るとは思っておりませんでした。当然何人かは討ち取りましたが妻や娘を守る事はできませんでした。妻を人質にされてしまいましてな。手が出せなくなってしまったんですよ」
妻の命を守りたいから娘全員と妻が捕まったの…。
助かったからいいものの甘過ぎるわ。
「人質に取られても即座に殺すくらいできないの?あなた、そんなに弱かった?海の王でしょ?」
「それを言われると面目ないです。ご令嬢の力には遠く及びませんよ。本当に桁違いですな。真祖と古代種ドラゴンでも異常なほど強いと思いましたよ。何名かの古代種ドラゴンにも会った事がありますが、強さが違いますね。全員でかかっても相手にならないでしょうな」
「当然よ。私の娘たちですからね。私より強いわよ。良かったわね。この結界なら魚人程度では無理だわ。壊せるのは私くらいじゃないかしら。地上では人魚が消えて騒ぎになっているはず。邪魔なら殺してあげましょうか?」
「いえ、それには及びません。もし、また捕まえに来たなら結界の外で私が皆殺しにします。海の王としても決して許せる事ではありませんからな」
覚悟はしているという事ね。
ポセイドンが魚人に負ける事はない。
魚人に強力な見方はいるのかしら…。
まあ、問題はないわね。
「どうやって国に移動しているの?ああ、時空魔法で繋いでお店を結界で覆って海水が漏れないようにすれば問題ないわね。シャルならそのまま繋いで、大惨事になって慌てたかもしれないけどね。ヴィーネがいたらそんな心配は無いわね。私の娘は賢いから」
「ヴィーネ様がこの街も城も直して下さいましたよ。素晴らしいですな。将来は竜王を継がせるのですか?」
竜王ねー。
地上の繁栄を見守る者か…。
「私もまだまだ死なないでしょうし、それまではこのままよ。あの子たちには自由に世界を遊んで欲しいの。面白い国作りもしているからね。母親として余分な肩書はいらないと思ってしまうわね。肩書で平伏す者もいるけど、あの子たちは普通に強いから面倒な相手は自分たちで殺すわ。問題なしよ」
「ははは、そうでしょうな。ドラゴン種の誰が歯向かおうと返り討ちでしょう。ジェラルディーン様は戦った事は無いのですか?」
「ん?聞いちゃうの?私に聞いちゃってもいいの?ポセイドン死んじゃうわよ?」
「はは…。聞く訳がありませんな。娘と本気で戦う母親はいませんからね」
そうよ…、それよ!
母親が娘と本気で戦う訳が無いじゃない。
まったく、毎回尻尾を斬り落としちゃってさ。
いつも自分の尻尾が美味しく見えちゃうじゃない。
「元気ならいいわ。シャルの国に遊びに行けるようにアムピトリーテーにお願いしておきなさいよ。半年に1回お祭りがあるから参加しないと損よ。あなた、大きいから小さくなる魔法をかける必要があるけど、シャルでもヴィーネでもできるでしょうからね」
「おお、それはいい話を聞かせてもらいました。妻にお願いしておきますわい」
ふふふ、飲み仲間見っけた。
固まる長老だけじゃなくてポセイドンとも飲み明かせるわね。
アムピトリーテーもいるし半年後のお祭りがますます楽しみになってきたわ。
「じゃあ、無事も確認できたしお祭りで会いましょう。まったねー。転移」
いけないわ。
このままだとドワーフの国がどうでもよくなっちゃう。
笑われるのだけは阻止しないと。
ドワーフは魔力が見えちゃうから美女になっても意味ないし。
ほんと難しいわね。
まあ、お祭りまでのちょうどいい暇つぶしだわ。
本当に気にしているんです。




