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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第2章 多種族国家シェリル

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閑話 ディアナ リンゴ飴とりんご酒

「さて、祭りも近くなって来た。有言実行だ。ディアナも私の秘書としてリンゴ飴を作ってもらうぞ」


嘘ですよね?

区長会議で1000本とか言ってませんでした?


3人で作るのですか?


「ほ、本気なのですね?」

「当然だ。この街の住民にリンゴ飴が渡らないのは駄目だ。お前も分かるだろ。選別を乗り越えたんだ。りんご酒は無理でもリンゴ飴なら頑張ればいいだけだ。ダミアンにも伝えたが間に合わない。今回は完全な手作業だ。目標は2000本だ。分かるだろ?」


全く分かりませんよ?


りんごが2000個…、確実にありますね。

頭の悪い区長会議でシャーロット様にお願いしてしまっています。


シャーロット様とヴィーネ様が食べられないのは論外です。

子供たちが食べられないのも許されません。

問題は大人たちですね。


街の住民はリンゴ飴を食べながらシャーロット様を思う人が多いのです。

ああ、作るしか無いのですね。


私の考えは甘過ぎたようです。


お菓子屋のおじさん、フーゴはお祭りの前々日から準備を始めています。

私たちが手伝うのは前日と当日です。


流石にこの数です。

リンゴ飴は前日に作り置きします。

そうでなければ不可能ですから。


マリアンネさんが、フーゴに声を掛けます。

「フーゴ、手伝いに来たぞ。今年は屋台を2台出す。妖精用と普通用、何本用意するべきだと考えた?」

「売り切れるのが前提です。妖精用1200本。普通は2000本。計3200本です。この数でも確実に売り切れます。やりますか?」

「リンゴ飴が3200本?頭がおかしくなりそうですよ」


「やるに決まっているだろ。最後の区長会議の後始末だ。次回はお願いしなければいけないかもしれないが、今回は手作業で乗り切る。何を手伝えばいい?」

「りんご400個を、皮を残して、種を取り、縦に4等分に切って下さい。串を縦に皮を二度突き破るように刺して頂ければ準備完了です。私はその間に普通のリンゴ飴を作り続けます」

「400個を包丁で切るのですか…。ああ、私の腕大丈夫かな?」


マリアンネさんとフーゴが笑っています。

「祭りの日に回復してもらえるだろ?問題はないな?」

「ああーー!そうですよね。明日には全快ですよね。今日は腕が千切れても問題ありませんでした」

「その覚悟が必要です。鍛えていなければ、腕は上がらなくなるでしょうからね。お願いします」


フーゴは笑顔でおかしな事を言いました。

「りんごは余分にあります。10個くらいまでなら、食べながら作業してもいいですよ」

「それは助かるな。りんごを食べるだけで、かなり体が動くからな」


頭のおかしな会話を2人がしています。

そして、私たちの地道な戦いが始まったのです。


フーゴは前々日からりんごを洗ったり、材料を揃えたりしているはず。

この人、リンゴ飴に命懸けですね。


選別に残るような男性は、こういう人なのですね。

納得ですよ。


疲れを感じた時に試しにりんごを食べました。

嘘でしょう?


本当に疲れが取れるわ。


以前食べた時は、異常に美味しいりんごとしか思いませんでしたが…。

こんな効果まであるのですか。


恐らく全ての種族が買いに来るでしょう。

フーゴの予測も間違っていません。

確実に売り切れます。


3200本のリンゴ飴が売り切れるって…。

おかし過ぎるわよ!


腕が上がらなくなった頃、準備が整いました。

りんごに飴を絡める作業は、フーゴとマリアンネさんがやってくれました。


私は長椅子の配置を指示したり、屋台の配置を指示したり、お祭りの準備をしました。

そして、お祭り当日です。


シャーロット様の開始の声とともに、回復魔法が降り注ぎます。

「腕の疲れが取れたー!」


ああ、神様!

こんなにも素晴らしい事をして下さっていたのですね。

健康だった私はあまり実感する事が出来ませんでした。


「街長じゃないと本当に楽だわ」

え?

何を言っているのでしょうか?

街長の仕事の方がはるかに楽でしたよ?

リンゴ飴を作り過ぎておかしくなりましたね。


そして店員もします。

多種族の子供たちが笑顔で買っていきます。


あれ程の美味しさです。

さらに、学校で勉強していますからね。


当然だと思います。


妖精用は、妖精や小さい子、初めて食べる子の味見で買われていました。

すぐに隣の列に並び、普通のリンゴ飴を買っている子を何人も見ましたからね。


そして奇跡的に夜まで余りました。


大人が子供よりも笑顔で買っていきます。

街の大人は、子供の時間にリンゴ飴を買う事はしません。

自分たちが買った為に、シャーロット様が食べれない事を恐れています。


その為、夜の部になると街の大人がリンゴ飴を求めるのです。

前回は余らなかったからでしょうか?

物凄く感謝されるのです。


リンゴ飴凄過ぎですよ。


そして、夜の部の中盤になった頃に売り切れたのです。

完売ですよ。


予想通りですが意味が分かりませんね。


「お疲れ様でした。2人とも飲んで下さい。リンゴ飴に儲けはほぼ無いんで、代わりです」

「気にしなくても良かったんだが…。これをくれるのか?来年も手伝いたくなったぞ!」

「りんご酒じゃないですか!お酒が苦手なので控えていた間に、買えなくなって後悔していたのです」


「疲れも吹き飛びますよ。ディアナさんは結婚もしていないですし、楽しまなければいけませんよ」

「気にしなくてもいいですよ。今は目ぼしい男性はいません。少し待ちます」

「それがいいだろうな。今は相手を探す時ではない。普通に飲んで楽しんだ方がいいぞ。私は子供がいるから家に帰らせてもらうが、ディアナは誰か捕まえて飲めばいいさ」


こうして、マリアンネさんやフーゴと別れたのです。

そして、私は苦手なお酒を軽く舌に乗せました。

な、何ですかこれは?


土地神りんごが凝縮されています。

体が若返ったようですよ。


苦手な酒精が体に染み渡っても、拒絶感や吐き気がありません。

これは、美味し過ぎますよ。


ああ、失敗しましたね。

買い溜めしておくべきでした。

ドワーフが来たので、もう無理でしょう。


いや、マリアンネさんが、りんご酒の為ならリンゴ飴を作っていいと言っていました。

つまり、マリアンネさんでも手に入らなくなっているのです。


確実にお願いするでしょうね。


増産決定です!

未来は明るいですね。


ちびちび飲みながら歩いていると、危険な人たちを見つけました。


孤児院の集団です。

巻き込まれたら終わりです。

確実に引きずり込まれます。


今日は1人で飲んでいるのが一番でしょう。

この国は夜に女性の1人歩きが、全く問題ないのですからね。


酒屋に向かい、りんご酒があるか確認しました。

当然のように売り切れていました。


本当に残念です。


ドワーフたちが、そこら中の地面に寝転がっています。

りんご酒を買えなかったからといって、樽酒を1人1樽とかおかしいですよ。


今日1日で全てのお酒が売り切れそうです。


噴水の長椅子に座り、りんご酒をゆっくりと味わいます。

ああ、今夜は月が本当に綺麗ですね。

1人酒も良いですよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「そして、私は苦手なお酒を軽く下に乗せました。」 ⇒「・・・軽く舌に・・・」 では?
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