閑話 アルビーナ ハーピィの特別授業
ハイディが飛ぶ姿を見て決意した。
確実に私たちの知らない秘密がある。
高台の湖から歩いて社まで行き、賽銭箱の前でお願いする。
「シャーロット様、お願いがあります。ハーピィに授業をして頂けませんか?」
シャーロット様が笑顔で社の扉から飛び出してきた。
「どんな授業をして欲しいのかな?」
「魔力についてと、飛行についてです。子供たちが遊んでいる姿を見たのですが、ハイディの飛行能力だけ高過ぎるのです。本人に聞いても、シャーロット様に教えてもらった、としか言いません。他の子供たちも授業内容は秘密だから話せないと言っています。ですから、お願いに来ました」
ハイディはシャーロット様に直接教えてもらっている。
極秘の授業なので、口を開かないのかもしれない。
他の子供たちも話さないのは理由があるのかも。
「私の授業については他言無用だよ。ハーピィの中でなら話す事は良しとするけど、いいかな?」
「構いません。よろしくお願いします」
何か知らない事実があるに違いないよ。
私がそう思っていると、一瞬で湖に移動した。
転移したみたいだね。
「皆はどこにいるのかな?」
ハーピィは夜、眠る時は木の上にいる。
洞窟の中にいた時は本当に寝付きが悪かったよ。
今は世界樹がある為、皆が安心な高い木の上で眠れるようになったのさ。
贅沢になったもんだよ。
高台に防護壁まであるから地上で寝ても安全なのにさ。
「シャーロット様が来たよ!全員、下りてきな」
「「分かりました!」」
飛べない子も親が抱えて下りて来たね。
飛べない子は親が抱えて上まで運んでいるんだよ。
「揃いました。お願いします!」
「まず、皆に言っておくよ。今から行う授業はハーピィでのみ話をしてね。他種族に話してはいけないよ。守れるかな?」
他種族に話をしてはいけないと言う事は何かあるね。
これは、絶対に秘密にするべきだ。
「絶対に守りな!いいね?」
「「はい!」」
シャーロット様は、私たちの返事を聞いて話し始めた。
「まず、大切な事を教えるよ。魔法が使えても使えなくても、体の中にある魔力は無属性なんだ。魔法が使える人は、放つ際に魔法情報を記載した核を、無属性魔力が通る事により魔法になるんだよ。これを前提に授業を進めるよ」
前提が理解不能だよ。
やはり、知識の差が凄い。
子供たちの授業は羨ましいね。
「意味不明ですが、そういうものとして納得します」
「ハーピィが飛べる理由を知っているかな?」
ハーピィが飛べる理由を、シャーロット様が知っているのがおかしいよ。
ハイディを見て分かったと思うのだけど、他種族の特性を簡単に理解出来るものなのかね。
「子供の頃から飛ぶ練習をします。ある程度練習すれば、飛べるようにはなるのですが、ハイディの飛行能力は大人顔負けですので驚きました」
ハイディは飛び過ぎていた。
上手く飛べるだけの子供の飛行能力じゃなかった。
「今の話しで良く分かったよ。まず、ハーピィで魔法を使えない人はいる?」
「使える人はいますが、使えないかは分かりません。どの魔法を練習すればいいのか知る事が難しいからです」
「では、魔石を2つ渡すね。1つは魔力を見る魔石。もう1つは魔力を吸う魔石だよ」
「はい。どのように使えばいいのでしょか?」
魔石って貴重品じゃないのかね?
簡単に出てきたけど…。
「アルビーナは魔法が使えるのかな?」
「はい。風魔法が使えます」
「では、透明な魔石に、魔法を使うのではなく、魔力を出す事だけを意識してみて」
魔力を出すだけなら簡単さ。
「分かりました」
透明な魔石に薄緑の火が点った。
「これで使える魔法を知る事が出来るんだ。アルビーナは風と水が使えるよ」
ええーー?
私は水も使えたの?
全く知らなかった事実を一瞬で知れたよ。
この時点で授業をお願いして良かったよ。
「私は水も使えたのですか?」
「今度は魔力を吸収する魔石を使って、魔力を入れた魔石を透明に戻してから、初期の風魔法を入れるつもりで魔力を出してみて」
なるほど。
魔力を吸収する魔石を使って、透明な魔石を元に戻すんだね。
その後に、風の初期魔法を放てばいいんだね。
「分かりました。では、行きます」
緑色になった。
さっきと色が違うじゃないか。
歓声が上がっているよ。
こんな簡単に使える魔法の属性が分かるんだ。
「これで分かったと思うけど、属性には色があるんだ。火は赤、水は青、風は緑、土は茶、雷は黄、みたいな感じね。魔法の属性はいっぱいあるから他にも色はあるよ。そして、最初は魔法を使う事無く魔力を魔石に流したでしょ。その場合、核は持ってる全ての属性を無属性の魔力に付与しちゃうんだよ。色が薄緑だったから、水魔法と風魔法が使えると思った訳なんだ」
凄い知識の量じゃないか。
学校はとんでもない場所だね。
「さて、ハーピィは何故飛べるかだね。翼があるのは勿論なんだけど、大切なのは魔力なんだ。つまり、翼に魔力を集めて飛んでいるんだよ。そして、魔法が使える人は、使えない人の魔力を操る事ができる。普段、自分の魔力を放っているからね。だから、飛べない子供の魔力を操って翼に集めてあげればいいんだよ」
自分の魔力を操る要領で子供の魔力を操る。
そんな事が出来るんだ。
試した事もないよ。
「誰か飛べない子。こっちにおいでー」
「一番下手な子がお願いしなよ!」
「じゃあ、私かな…」
「魔力を翼に集めるからね」
シャーロット様はそう言って、子供の頭に手を乗せた。
「翼が温かくなったの分かる?」
「はい。じんわり温かくなりました」
「じゃあ、羽ばたいてみよう」
「分かりました。あ、あれ、あれれ…」
いきなり飛べるようになっているよ。
一番下手な子だったのに、並の子供のようだ。
念力で連れ戻してあげたみたいだね。
「最初は変な方向に飛んじゃうから練習が必要だけど、温かくなった感じは覚えているでしょ?」
「はい。覚えています!」
「それを意識する事が大切なんだよ。翼がじんわりと温かくなったのは、魔力を集めたから。これは、魔法を使える人なら誰でも出来るから、皆で練習すればすぐに飛べるようになるよ。ただし、今みたいに最初は変な方向に飛んじゃうから、少しだけ飛ぶように子供は意識する事と、飛べる大人が付き添う事が絶対だよ。一度翼まで延ばした魔力は延びやすくなっているんだ。今度は自分で翼を温めてみよう」
「分かりました。んー・・・・」
「うん、上手く出来てるよ。もう少し、もう少し、出来た!じゃあ、気をつけて飛んでみて」
「はい。あ、ああー。飛べるよー!」
何て事だい!
こんなに簡単に子供を飛ばすの?
古くから伝わる練習方法なんて無意味だね。
「ずっと飛んでると疲れて学校に行けなくなるよー」
「あっ!すぐ下ります」
初めて飛べた子供が素直にすぐ下りた。
それほどの魅力が学校にあるんだ。
「まず、ハイディや子供たちが話さなかった理由。学校で教えている事は街の人にも話す事を禁止にしてるんだよ。勿論、親にもね。魔力の操作が他国に漏れると戦争が激化するんだよ。身体能力を魔力で底上げ出来てしまうからね。だから、教えるのを禁止にしているよ。あとは、魔力の量が違うから、気をつけて扱わないと死んでしまうんだよ。同じ事をすれば同じ結果になるとは限らないんだ。最後に種族特性が分かってしまうと、簡単に敵に捕まったり殺されたりしてしまう。ハーピィを捕まえる方法は、魔力を無くせばいいと広まったら大変な事になるでしょ。そういう理由もあるんだよ」
なるほど。
納得出来る話だよ。
ハーピィを捕まえたい敵に対して、魔法で応戦したら思う壺の可能性があるって事だね。
さらに、身体能力の強化。
翼での攻撃力が高いのも魔力のお陰って事だね。
広まれば、かなり危険な知識だよ。
「私は皆の魔力量が見えているからね。安全かどうか分かるから教えているんだよ。最後にアルビーナにとっておきの世界を見せてあげるよ」
「これ以上の何かがあるのですか?」
シャーロット様は私の頭の上に手を置いた。
頭が温かくなるような感じがする。
頭に魔力を集めているんだね。
「こ、これは。これが魔力が見える世界ですか!」
あまりにも別世界。
世界が魔力で満ちているのが分かる。
それに、皆の体に魔力があるのが分かる。
この状態なら翼に魔力を集めているか見る事もできるね。
あっ!
「疲れちゃうから戻すね。これで、魔力を操作して見たくなったでしょ?ハーピィは足に魔力を集めるのは止めた方がいいよ。足が破裂する可能性があるからね。痛い思いをしたくないでしょ?」
「なるほど。早く走りたいから足に魔力を集めても、限界以上を集めてしまうと破裂する訳ですね」
「それも種族特性だね。だから、教えるのは禁止にしているんだよ。私は結構痛い思いをしているからね。ちゃんと注意したからね。破裂しても治してあげるけど、ほんとに痛いからね!」
シャーロット様の魔力量なら身体強化なんて必要ないはず。
つまり、自分の体を破壊しながら、魔力の操作を試したんだ。
ただ、子供たちに教える為にだよ。
何て事をしてるんだい。
頭に集めたら破裂する可能性だってあったはず。
途轍もない程に危険な事をしている。
とんでもない知識の集大成だよ。
子供たちに教えているのが不思議だよ。
本当に子供が大切なんだね。
「皆の魔力量を見ると、翼に集める事と、頭に集める事に害はないよ。足は魔力の延びが悪いから、無理は絶対に駄目だよ。あとは、2つの魔石を使って魔法の属性を調べてみて。魔力が出せないと思っている人も、魔法を使っている人に魔力を操ってもらえば、出せるかもしれない。一番最初が難しいから、いっぱい練習してね。またねー」
シャーロット様は笑顔で手を振って去って行った。
あれ…?
2つの魔石は貰えるんだね。
魔石を使えば自分たちで魔力の属性が分かる。
魔力を見ながら操作すれば、どのように動いているのか理解出来る。
授業内容の密度が桁違いだ。
授業を聞いた後に思ったよ。
受け継いできた知識の集大成は無意味だね。
何故なら、感覚でしか説明出来ないから。
それを、誰でも理解できて納得できるように説明してくれた。
さらに、実現可能な状態にまでしてくれているよ。
子供たちは、シャーロット様が体を壊して得た知識だと、教えてもらっているかもね。
だから、誰も話さないし、話そうとも思わない。
話せるはずがないよ。
私だって黙る。
今日の授業内容も絶対に話せない。
本当に私たちは恵まれ過ぎているね。
何でもできると思っていたけど、自己犠牲までしていたのかい。
貴重な魔石まで簡単にくれちゃうし。
本当に神様だよ!
「今日の授業は絶対に他言無用だよ。ハーピィの秘儀にするからね!」
「「はい。分かりました!」」
簡単に飛べる。
使える魔法の属性が分かる。
そして、魔力が見れるようになる。
ハーピィとしては、これで十分だよ。
学校の授業はこれ以上の知識があるのかもね。
この先、子供たちが作る国がどうなるか楽しみだよ。
ハイディにも足に魔力を集めるのは危険だと教えています。




