親子の愛情
凄い見晴らしが良くなったね。
今日はいい天気だよ…。
「国長さん?街が隙間だらけだけど給料払えるの?」
「払えるよ。無駄な経費が掛からなくなったし、ここの国は学校と病院と孤児院と研究所、そして、多種族を纏める場所にするつもりなんだ。今は色々な種族を集めている段階だけど、揃ったら中央の北を種族の特産品を売る場所にしようと思っているんだ。ハーピィの羽が売れるって言っていたじゃない?無理やり毟らなくても、生え代わりで抜けた羽でも綺麗なんだよ。それだけでも価値がある。ハイエルフは植物を使った装飾品が得意だから、それを売り物として作ってもらえばいい。ハイオークはお米だけど、もっと集まれば、色々な野菜が売り物に出来るかもしれない。妖精は小麦を作ってもらっているけど、食糧が揃えば税金の集金などの仕事の方が向いていると思う。リザードマンも魚を売りに来ると思うから場所を用意してあげればいい。他にも様々な種族が、様々なものを作っていると思うんだ。産みの親が火を吹いてばかりいるせいで、細かい事は分からないけど、そうやって、多種族が集まる場所にしてあげればいいんじゃない?当然学校も大きくする必要があると思うし教師もたくさん必要になる。そもそも、今のように人間だけが教師をやる必要もなくなる訳だよ。凄い未来設計でしょ?」
何よこの子。
考えてるじゃない。
流石私の娘ね。
「流石よ。流石ヴィーネちゃんだよ。完璧に国長だよ。どうせこの大陸も支配するつもりなんでしょ?攻撃されるのを待っているのかな?母さんは分かっているんだよ」
悪い顔をしているよ。
完全に待っているよ。
「待っているよ。近いうちに確実に来る。だって、世界中で被害に遭っていた種族がここに集まっているんだよ。見かけた人が情報を流したらすぐに広がる。確実に攻めて来るだろうね。その時が最後だよ。皆殺しにはしないよ。奴隷の中でも子供だけは孤児院で保護するつもり。親がいない子供だけね。親の教育は無理でも子供は教育出来る。この国は教育された人間と獣人以外は必要ないよ。同族で殺し合う馬鹿はいらない。他種族を商品だと思っている馬鹿もいらない。これは母さんの考えだよ。心の奥底に隠して我慢していたものを私が口にしただけ」
やっぱりそうだよね。
私の考えている事だと思ったよ。
「それで、次はドワーフに行く?街の手入れをする?国長のお願い聞いちゃうよ?」
「いや、少しのんびりと様子を見るつもりだよ。ハーピィの子供の教育も始まる。ハイエルフの国の子供の教育は長老が薦めると思うけど分からない。もし、ハイエルフの子供の教育が行われる事が決まったら、中央を広げる必要があるし、ハイエルフからも教師を出してもらうつもりだよ。最近頑張り過ぎだよ。休もーよー。どうせ、ドワーフとか言ったのも、あの人でしょ?本当に国を作ったら、その国ごと転移させようよ。それで解決だよ」
完全に悪だよ。
ジェラ姉ちゃんを利用する気だよ。
いや、今まで利用されていた気もする。
利用してもいい気がしてきた。
本当にドワーフの国を作るのかな?
絶対に無理だよ。
火吹きドラゴンだもん。
「ああ、何か嫌な予感がするよ。ドワーフの説得に失敗し続けた火吹きドラゴンが、また勇者を送り込んできそうだよ。もー、面倒なんだよね」
「それがあったね。あの人の八つ当たりは面倒なんだよ。被害者が多過ぎるんだよ。自分が強いの理解している癖に、弱者が悪いとか完全に頭悪いよ。地上の人からしたら、古代種ドラゴンの火の息なんて、神話の世界の攻撃だよ。姉と一緒で頭がおかしいんだよ。封印する?」
産みの親の封印を口にしちゃったよ。
気持は分かるけど待って欲しい。
多分、何か考えがあるんだよ。
多分だけどさ。
「封印は少し待とうよ。姉の封印がどうのこうの言ってたから、相手させる必要があるじゃない?私たちに相手させるつもりの可能性が高いけど、そうしたら2人とも封印だよね」
「そうだね。姉の封印が解けて私たちに相手しろとか言ったら2人とも封印だよ。産みの親が悪いけど殺されちゃってるから仕方がないよね」
そうなんだよね。
卵から孵った子供に瞬殺される。
ジェラ姉ちゃんの親が弱かったとは思えないんだよね。
分からない事は考えても仕方ないか。
いつかドラゴンの国に行った時にでも聞いてみよう。
それにしてもヴィーネは私に似ている。
つまり、お母さん影響を物凄く受けている事になる。
どういう事だろうか?
私が影響を受けているのは分かる。
お母さんに育ててもらったから。
でも、ヴィーネに影響を与えたのは何で?
私の魔力にお母さんの影響がある事になる。
真祖の影響が出ている事はお母さんの血を使っていないはず。
どういう事だろうか?
んー。
分かんない。
「ヴィーネ。何であなたにお母さんの影響がそんなに強く出てるの?それって私の魔力がお母さんの影響をかなり受けているって事だよね?真祖の影響が出ているヴィーネが、お母さんの影響を受けているのが不思議なんだよ。私の性格に似ただけではない気がする」
「やっぱり気になっちゃったか。母さんは知りたい?」
意味深だなー。
知っておいた方がいい気がする。
「知りたいよ。何でかな?」
「母さんは普段お婆ちゃんの血を使うけど真祖になると血を使わない。じゃあ、真祖になった時の力は本当に真祖だけなのかって話なんだよね。母さんは真祖の力に体の中にある血を上乗せする呪文を知っていた。でも、真祖は体の中の血で強化されているんだよ。あの呪文は血を上乗せする呪文じゃないと思う。真祖になって体の中の血を活性化させる呪文。活性化させる事で更に強化するんだよ。ジェラルディーンも勘違いしていると思う。私が母さんの子供として産まれたからそう考える事ができた。母さんは真祖にしても強すぎるんだよ。異常な程に強いと思う。それは、異常な姉の血で強化されているから。でも、吸血鬼は強い相手の血ほど多く飲まないと力を使えない。母さんの幼い頃は喉が渇いて仕方が無かったはず。中途半端に姉の血を入れられたから。でも、今は喉が渇いていないでしょ?それは確実にお婆ちゃんのお陰なんだよ。自分の血を吸った時、お母さんを吸血鬼だと知ったお婆ちゃんは自分の血を使うように言った。だけど、母さんは凶悪な性格をしていたんだと思う。だから、お婆ちゃんは他の血も入っていると考えた。そして、母さんに教え込んだ。自分の血を使ってもう1人の血を薄めなさいって。母さんは20年の記憶がほぼない。つまり、20年はお婆ちゃんの血を飲んで薄め続けた。そして、やっと体になじんだ母さんは、喉の渇きから逃れ、吸血鬼の本能からも逃れ、記憶が繋がるようになった。私の考えだとこんな所だよ。だから、私にもお婆ちゃんの影響が強く出る。私が人に近い考え方ができるのもお婆ちゃんのお陰。私はお婆ちゃんが大好きだし尊敬もしているよ。普通の人間ができない事をしたと思っている。お婆ちゃんが魔獣を狩っていたのは母さんの為だって言ったでしょ。母さんの身を守る為だとは言っていない。つまり、魔獣を食べて自分の血を増やす必要があった。母さんもお婆ちゃんが死ぬほどの血を求めるほど姉に染まってはいなかった。だから上手く行ったんだよ。お婆ちゃんと母さんの関係は奇跡だよ。ジェラルディーンの攻撃を防いだ時、血を活性化させた。つまり、2人の血を活性化させたんだよ。だから、真祖の状態でもお婆ちゃんの血を使えた。凄いよね。感動だよ!」
話しの内容が頭にストンと落ちた感じ。
記憶との整合性も合っている。
間違いなくその可能性が高い。
私が他に血を求めてもお母さんは自分の血だけを飲むように言った。
姉の血を薄めさせる為に必要だと考えていたんだ。
他の血を飲むと、その血は肉体の強化に使われて終わるから。
私はお母さんを20年以上縛り続け血を飲み続け、服を縫ってもらった。
何でこんなに尽くしてくれたの?
吸血鬼を拾っただけだよ!
無暗な殺しはいけないと、何度も叱られた言葉が頭にこびりついている。
姉の血で私はお母さん以外を、皆殺しに何回かしているという事だと思う。
そんな現場を見ても、お母さんは諦めずに血を飲ませ教え続けてくれている。
私はお母さんが大好きで、感謝して尊敬していたけど、足りなかったかな?
お母さんは本当の娘だと思い血を飲ませてくれたのかな?
きっとそうだよね。
私は本当の娘だよね。
私はお母さんの娘だ。
吸血鬼だろうが関係無いよ。
これからもお母さんの娘として生きる。
お母さんがしてくれた事をヴィーネにしてあげようと思ったけど…。
私より知ってるんだよね。
じゃあ、全力で可愛がろう。
それが、私が出来る精一杯の娘の愛し方だよ。
「よく分かったよ。納得出来た。不思議だと疑問に思っていたものが判明した気分だよ。私はお母さんの娘だという事が、本当によく分かったよ。ありがとね」
「そういう事だよ。そして、私は母さんの娘だからね」
ヴィーネは甘えん坊だな。
すぐに私にくっ付く。
でも、私はもっと甘えん坊だった。
「さて、頭いっぱい使ったし寝よう」
「私は母さんにくっ付いてればいいから、寝てもいいよー」
布団を敷いた。
当然だけど一緒に入る。
「じゃあ、おやすみー」
「おやすみー」
お母さんありがとう。
これからもずっと大好きだよ。
偶然が起こした奇跡です。




