危険な授業
お祭りを皆に楽しんでもらうのはやっぱり難しいね、お母さん。
まさか、呪いを使う人がいるのか…。
人が人を簡単に呪う。
やっぱり、授業で魔法の勉強をして研究して対策しないと、私がいないと対応出来ない問題が多いのは、未来を考えると良く無いね。
授業の方法を考えよう。
魔石の魔力を抜けば綺麗な水晶みたいになる。
その魔石に魔力を注げば自分の適性魔法が分かると思うけど、どうだろう。
私が注ぐと黒くなっちゃうから、誰かに試してもらうのが一番だね。
転移魔法して途中、街長を攫って討伐隊の訓練所に行く。
「マリアンネも見ててね。私の特別授業が始まるから」
「突然ですね。是非とも中止してほしいのですけど」
フフフ、危険予知能力が相変わらず高いようだね。
突然攫われても動じないのは流石だよ。
しかし、授業は止まらないよ。
「無理だよ。皆の未来の為の授業です。討伐隊の中で魔法を使える人はいるかな?」
「はい。私が使えます」
「クリスタ責任者に決定!」
「クリスタ使えるんだ。じゃあ、この水晶に魔力注いでみて」
「はい、分かりました。ただ、街長がおかしな事を言っていますよ?」
赤色が強いから火かな。
「マリアンネは見学だから気にしないで。赤色だから火魔法が得意かな?」
「正解です。凄いですねその水晶。初めて見ましたよ」
「本当は水晶では無いんだ。これは、魔石の魔力を全部抜いものなんだよ」
「魔石の魔力を抜くという意味が分かりませんけど…」
「本気で中止して欲しいのですけど」
マリアンネも諦めが悪いなー。
授業は最後まで聞いて判断して欲しいよね。
「気にしないで。ちゃんと魔力を抜く為の魔石も用意したんだよ。では、魔力を抜いて、誰か魔法が使えない人が注ぐつもりでやってみて」
「はい。僕がやってみたいです」
「じゃあ、フリッツお願いね」
「はい。頑張ります!」
「フリッツ責任者に決定!」
マリアンネが責任者を2人も決定したけど、それはありだね。
討伐隊と子供たちの教師の2人がほしかったから、いい判断だね。
流石マリアンネ!
さて、フリッツの魔力の動きを見ていると外に出る気配が無い。
出した事がないからか、出せないからかが分からないね。
手に移動する気配も無い。
全く動かないね。
「魔石を持っててね。ちょっとフリッツの体に触るよ。少し疲れるかもしれないけどいいかな?」
「はい。問題ありませんが責任者にはなりたくないです」
責任者から逃げる事は出来ません。
フリッツはまだ若いから勢いで手を上げちゃったかな?
フリッツの中心にある魔力を魔石に向かって動かす。
やっぱり、魔力を出す事は出来ないかね。
では、魔力を全身に広く伸ばしてあげると…。
「フリッツ。少し動いてみて」
「はい。あれれ?えっと…、意味が分からない程体が動くのですが、これの責任者ですか?泣きたくなってきました」
「フリッツが私より強いように見えましたけど?」
流石マリアンネ!
魔力を使ったフリッツには勝てないと思ったようだね。
本当に鋭いよ。
「フフフ、これが魔法を使えない人の魔力の使い方だよ。疲れちゃうから魔力を元に戻すね」
「あれ?先程が嘘みたいに元に戻りますね。少し疲れました」
「凄いでしょ?魔法が使えなくても問題にならない。それぞれの得意分野で戦える。フリッツは私が魔力を動かした時、体の中に何か感じた?」
「はい。温かい液体が染み渡るような感じがしました」
「クリスタは魔法を使えるから魔力の動きが分かるよね?」
「はい。自分の魔力は分かります」
「じゃあ、クリスタがフリッツの魔力を動かせるかやってみて」
「意味が分からない事ばかりですね。人の体の魔力を動かすのですか…」
「フリッツの体に触れて魔力があるのが分かる?」
「何となくですが分かります。では、動かしてみます」
やっぱり、予想通りだ。
クリスタは魔法を使うから手に動かす事しかできないんだ。
「もういいよ。フリッツは手にじんわり温かさが染みたでしょ?」
「はい。そうです」
「つまり、魔法を使える人は自然に体の魔力を手に集めている訳だね。でも、フリッツは体にある魔力を今感じる事が出来たよね?自分で意識して動かせるかやってみて」
「分かりました。やってみます!」
少しだけど魔力が動いているね。
でも、違いが出るはずだよ。
「その状態で動いてみて」
「はい。あ!普段より少しだけ運動能力が上がっています」
「私は何も知らないよ」
街長が逃げられる訳がないでしょう。
その為に連れて来たのだから。
「これで分かったでしょ?訓練する前に魔法使いと組になって、一度体の魔力を動かしてもらうと自然と自分の魔力を動かせるようになる。訓練を続ければ体の魔力を自在に動かせるようになる。私が動かした時の状態に自分でなれるという事だよ。魔法を使える人も体に染み渡るように動かせば、同じように動けると思うけど、元々体から魔力が抜けやすい体質だから、魔法を使えない人よりは運動能力が落ちると思われる。つまり、長所と短所がそれぞれある訳だね」
「シャーロット様。これってまずいのでは?」
「クリスタ馬鹿だね。気付くのが遅過ぎるよ。責任者だからしっかり聞いておくんだよ」
「500年くらい人を見てきて、人が魔法に頼るのは余り良く無いと考えていたけど、私がいなくなった時に、魔法の研究がされてないと対応出来ない場面が出てくるかもしれないんだ」
これならマリアンネも納得でしょう?
まだ不満そうな顔をしている。
もう、頑固だなー。
「そうだ、フリッツに面白い事をしてあげるよ」
フリッツの頭に魔力を集中して移動させた。
「見える世界が変わったでしょ?」
「はい。皆の体の中にある魔力が見えます。もう嫌です。ほんと勘弁して下さい」
皆、泣き事ばかりだよ。
すぐに戦闘に意識がいってしまうんだよね。
後で、釘を刺しておこう。
「はい。今日の授業はここまでです。質問はありますか?」
「これって極秘中の極秘じゃないのですか?」
「僕が討伐隊の魔法訓練の責任者ですか?」
「街長代わってくれませんか?」
1人おかしな質問をしているけど無視だね。
絶対に逃がさないから。
「街の中だけの秘密ね。2人の責任者は頑張って!」
「討伐隊の皆は大丈夫だと思います」
「えーー!そんな危険な授業を簡単にしないで下さい」
なるほど。
クリスタは危険だと分かる訳だ。
大切な子供たちの教師にうってつけだね。
「クリスタ君の配属先が決定しました。子供たちの先生です。就職おめでとう。魔法の授業をお願いね」
「本気ですか?本気ですよね?ああーー!」
「シャーロット様、素晴らしい。クリスタ、しっかり授業をしなさいよ」
「ちょっと、マリアンネさんも他人事みたいに言わないで下さいよ。道連れですからね」
「私の仕事は教師じゃないから、知らないよ。せっかくだから私の魔力も動かしてよ」
ほーら、マリアンネも興味あるんだよ。
本当に意地っ張りなんだから。
「私が動かしてあげるよ」
何か人の動きじゃないみたい。
残像が見える気がするね。
強い人が魔力を使うと、ここまで動けるのか。
「私ってソロでSランクになれたんだ。まあ、今となっては別にどうでもいいけどね」
「無茶苦茶じゃないですか。私に管理出来るレベルを超えていますよ」
「子供たちに街の住民だけの秘密だと教えるしか無いね。討伐隊も絶対に他言禁止だからね」
「いい授業だったよね?クリスタには透明の魔石と魔力を吸収する魔石を渡すから、授業を頑張ってね」
「私の計画がーー!崩れて行くよーー!」
「どうせ、結婚退職だろ?教師でも出来るから気にするな」
クリスタは結婚退職したいんだ。
子供が欲しいのかも。
子供は宝だから素晴らしいね。
「私からも釘を刺すけど、他言は絶対に禁止。私が探知すれば魔力を動かしている人が分かるし、何をしているかも分かるから、悪い事したら瞬殺だよ。怖いでしょ?」
「嫌だー。私の責任で瞬殺されるー」
「街の住民以外に教えなければいいだけだから簡単じゃないか。外に漏れたら、漏らした奴が滝つぼに落ちるだけだよ。素晴らしい授業だったね」
「これで、近い未来の研究内容に魔法が加わるね。フリッツは討伐隊の皆に教えてあげて。クリスタは子供たちに大切に教えてあげてよ。魔力の扱いは危険だって分かってるみたいだから安心だよ」
「あの一言だけで決定ですか?私の馬鹿ーー!」
「実に素晴らしい決定じゃないか。私の子供が家で魔法を使わない事を祈っているよ」
「完全に脅しじゃないですか。土地神様と街長に脅された就職なんて嫌だー」
「10年、20年後が楽しみだね。生活がさらに豊かになるよ。すぐ戦闘に考えるのは悪い事だよ」
「確かにその通りだね。使い道が戦闘だと思うのは元冒険者の悪い癖だよ。今すぐ治しな!」
「カーリンのあの時の気持ちが分かりました。抗う事が出来ない流れは怖いですね」
「カーリンは幸せそうじゃないか。つまり、お前も幸せって事だ。良かったよ」
「そうだね。カーリンは幸せそうだからクリスタも幸せになってね」
ちゃんと本音も話しておかないと駄目だよね。
本当は私に頼り過ぎる事が危険だと思って欲しいんだ。
「私としても本当は授業したくなかったんだけど、色々と考えさせられる事があってね。私だけが皆を守るのはおかしいでしょ?人は人が守れる様にしていかなくちゃいけないんだよ。だから、授業したの。未来の発展も理由だよ」
「その通りだね。当然の事をするだけさ。住んでいる街を自分たちで守ろうとしないなんて愚かな事じゃないか、そうだろ?フリッツ、クリスタ」
「勿論です!その為に鍛えております」
「はい、その通りです…」
クリスタに元気が無いけど、すぐに良くなるよ。
カーリンも直ぐに元気になったから大丈夫!
「その意気だよ!新しい未来に向かって、皆で頑張りましょう」
シャーロットは自分が死んだ後の事を常に考えています。
お母さんのお墓の横で死にたいという願望があるためです。